2009年5月24日日曜日

Dellの女性向けサイトが炎上、ジェンダーマーケティングの難しさ



 女性向けノートパソコン「Inspiron Mini 10 Netbook」情報サイト「Della」は、5月にオープンしたばかり。「Dell」の女性形を思わせる「Della」というサイト名がすでにあやうい雰囲気をかもしだしていた。

 小型で高性能な「Inspiron Mini 10 Netbook」は、カラフルなボディのバリエーションがあり、さまざまなシーンで活躍しそうなネットブック。女性にアピールしたいDellは、サイト全体を女性向けにチューンナップしていた。しかし、Dellaで公開されたパソコンの活用法「tech tips」の内容がネットユーザーたちの批判の的となった。

 そこで紹介されていた内容は、このパソコンを使えば、ネットで料理のレシピを見つけたり、料理のビデオを見たり、カロリー計算をすることができるといったものだった。このベタベタな女性向けコンテンツに対して、「女性がコンピュータを使ってやることはこれなのか? 」とネットユーザーが声をあげ、同社の女性ユーザーに対するイメージ批判にまで発展した。

 ネットでの批判を受けて、このコーナーは現在、内容が変更され、サイト名も「Della」から「Dell Tech Tips」に変更された。Twitterを使ったマーケティングで一躍名をあげたDellだったが、思わぬところに落とし穴があった。「女性向け商品」とはよく聞く言葉だが、ネットでは一歩間違うとこのような事態にまで発展してしまうのだ。
5月21日11時15分配信

2009年5月8日金曜日

オンラインコミュニティの栄枯盛衰

SNSコミュニティでは,多くのユーザが自身の日記を書くだけではなく,ネットだけの友人を作ったり,コミュニティに参加して,他のユーザとコミュニケーションしたりと,ある種生活の場になっている.また,SNSコミュニティは,生活の一部というだけではなく,日記や他のユーザとのコミュニケーションなどの活動もデータとして残っており,ある種,人生の記録にもなっている.

SNSコミュニティが閉鎖されるということは,このような生活の場,人生の一部が失われるということを意味する.SNSコミュニティ自体が消滅しなかったとしても,運営企業が変わるということは,運営方針が大きく変わるということであり,それは,異なるコミュニティになることに等しい.

現在のSNSコミュニティでは,ユーザができる機能や保存できるデータ量が限られているため,SNSコミュニティの一つが消滅することは社会問題にはならないかもしれない.

しかし,今後,SNSコミュニティに様々な機能が追加され,ユーザの活動履歴が記録できるようになり,SNSコミュニティが社会生活の一部となった場合,そして,そのコミュニティが10年,20年と続いた場合,SNSコミュニティの消滅は,多くのユーザの生活基盤や人生の一部を失うことを意味し,大きな社会問題に発展することが予想される.

現在,SNSコミュニティが永続的に成長していけるかは,運営会社が時代に適したビジネスモデルを提案できるか?ということに掛かっている.SNSコミュニティが永続的に成長し,規模が大きくなり,サーバーやそのメンテナンスなどの費用が増大した場合,現在の広告ビジネスだけで運営できるのかは疑問である.

SNSコミュニティや他のオンラインコミュニティを永続的に発展させていくための方策を今のうちから考えておく必要があるんじゃないかなぁと思う.



■ ITmedia 最終更新:5月8日17時28分
 MCJは5月8日、100%子会社のカフェスタが運営するSNS事業を、オンラインゲームを運営するジークレストに譲渡すると発表した。ジークレストが運営するゲームコミュニティー「@games」に移行し、カフェスタは5月末で終了、約7年の歴史に幕を閉じる。

 同サイトをめぐっては、運営コストをまかなうために「存続のために有料会員になるか、アバターなどを購入してほしい」と運営側がユーザーに呼び掛ける異例の試みで話題になっていた。だがMCJの本業であるPC事業で市場が停滞しており、競争力を再強化する必要があるとして、シナジーが見込めないSNS事業の譲渡を決めた。広告収入にほとんどを頼るネットコミュニティーサービスの運営の難しさが改めて浮き彫りになった形だ。

 カフェスタは8日に決済機能を停止。サービスは31日で終了し、6月1日以降は新規書き込みや編集、削除などはできず、閲覧のみとなる。6月2日以降、データを@gamesに移行できるようにする予定。

 IDやニックネーム、パスワードなどは移行後もそのまま使え、日記などのデータも一部を除き引き継がれる。有料アバターアイテムなどを購入したユーザーには、@games内で使える「セルフィ衣装交換券」を配布する。未使用の「カフェスタキャッシュ」は、@games内通過の「Gコイン」に変換する。詳細はWebサイトで。

 カフェスタサービスは旧パワードコム(KDDIが吸収合併)が2002年7月にスタート。04年からはパワードコムと韓国Daum Communicationsが共同出資したTAONが運営し、TAONはその後ライコスジャパンに社名変更。昨年4月、MCJがライコスジャパンから事業を取得して運営していた。

2009年5月4日月曜日

Tex 表のいろいろ


http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/kumazawa/tex/table.html

\documentclass{jarticle}

\begin{document}

\begin{tabular}{|c|c|}
\hline
\parbox{10zw}{大阪にはうまいもんがたくさんある}
&
んやで〜 たこ焼き ギョウザ お好み焼き\\
\hline
\end{tabular}

\medskip

\begin{tabular}{|c|c|}
\hline 
&\\[-8pt]
\parbox{10zw}{大阪にはうまいもんがたくさんある}
&
んやで〜 たこ焼き ギョウザ お好み焼き\\[-8pt]
&\\
\hline
\end{tabular}

\medskip

\begin{tabular}{|c|c|}
\hline
\parbox{10zw}{\strut{}大阪にはうまいもんがたくさんある\strut}
&
んやで〜 たこ焼き ギョウザ お好み焼き\\
\hline
\end{tabular}

\medskip

\begin{tabular}{|p{10zw}|c|}
\hline
大阪にはうまいもんがたくさんある
&
んやで〜 たこ焼き ギョウザ お好み焼き\\
\hline
\end{tabular}

\end{document}

LaTeXで長い図表の回転による横置


参考URL:http://tauros.ams.eng.osaka-u.ac.jp/mt/jp/archives/000044.html

\documentclass[a4paper,12pt]{jarticle}
\usepackage{plext} 
\usepackage{graphicx}
\begin{document}
\begin{table}[htbp]
\rotatebox{90}{
\begin{minipage}{\textheight}
\centering¥caption{\bf 雨ニモ負ケズ(宮澤賢治)}
\begin{tabular}{l}
雨ニモマケズ \\
風ニモマケズ \\
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ\\
丈夫ナカラダヲモチ \\
欲ハナク \\
決シテ瞋ラズ \\
イツモシズカニワラッテヰル \\
一日ニ玄米四合ト \\
味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ \\
アラユルコトヲ \\
ジブンヲカンジョウニ入レズニ \\
ヨクミキキシワカリ \\
ソシテワスレズ  \\
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ \\
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ \\
東ニ病気ノコドモアレバ  \\
行ッテ看病シテヤリ \\
西ニツカレタ母アレバ \\
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ \\
南ニ死ニサウナ人アレバ \\
行ッテコワガラナクテモイイトイヒ \\
北ニケンクヮヤソショウガアレバ \\
ツマラナイカラヤメロトイヒ \\
ヒデリノトキハナミダヲナガシ \\
サムサノナツハオロオロアルキ \\
ミンナニデクノボートヨバレ \\
ホメラレモセズ \\
クニモサレズ \\
サウイフモノニ \\
ワタシハ \\
ナリタイ
\end{tabular} 
\end{minipage}
\end{table} 
\end{document}

2009年5月1日金曜日

信頼を生む「履歴のある仮名」 人はなぜ教えあうのか(3)


見知らぬ人同士が匿名で互いに教えあう場でありながら、多くの利用者がQ&Aサイトを有益と感じている。匿名は情報の信頼性を損ねると考えられがちだが、Q&Aサイトの運営者は会員登録と履歴の管理により、匿名のメリットを活かしつつ、デメリットを低減している。(折田明子)

■本名より「投稿履歴」が重要

 「Yahoo!知恵袋」や「OKWave」「価格.com」などの主要Q&Aサイトでは、質問や回答を書き込むのに会員登録とログインが必要だが、会員登録の際に実名を明らかにする必要はない。会員登録すると、IDごとにQ&Aサイトを利用した履歴を管理する「プロフィル」のページが作成される。

 Yahoo!知恵袋の場合、プロフィルページには利用者が投稿した質問と回答、投稿数、質問者に「ベストアンサー」に選ばれた率などの利用履歴が保存され、すべて利用者に公開される。「どのカテゴリーに強い人かを判断する手がかりになると同時に、投稿する人が回答をアピールする役割がある」(ヤフー検索事業部の湯澤秀人氏)という。Q&Aサイトに投稿する人はニックネームやIDでしか識別されないが、その投稿者の履歴によりどんな人物かイメージすることはできる。

 筆者が2008年9月に実施したインターネットを介した情報交換に関する調査(マクロミルリサーチパネル、全国518名男女、注1)の結果からは、ネット上での相談において相手の本名が分かることはほとんど重視されておらず、むしろプロフィルや投稿履歴が重視されている。この結果からも、本名を秘匿しつつ投稿者の履歴を残すという方法が、質問をする側を安心させるのに効果を上げていることがうかがえるだろう(図1)。

図1 ネット上の相談で重視されること

■匿名にも種類がある

 Q&Aサイトにとって匿名性の取り扱いは微妙な問題をはらんでいる。高い匿名性は、投稿の障壁を下げる効果をもたらすが、同時に誹謗中傷や「荒らし」といったサイトの質を下げる行為が増えるリスクも高くなる。匿名性は、実名をはじめとする個人情報によって人物を特定できる「本人到達性」と、実名の有無に関わらず同一人物であることが判別できる「リンク可能性(Linkability)」の2つの観点から分類することができる(図2)。広義には、本人到達性のない状態が「匿名」だが、リンク可能性によって匿名の種類は分かれる。

 複数の投稿が同一人物によるものと判別でき、ひも付けられる状態はリンク可能性が高く、「仮名」といえる。同一のニックネームを継続して用いると、「カメラに強い○○さん」のように一種の「キャラクター」としてとらえられるのがその例だ。逆に、名前もプロフィルもなく、複数の投稿が同一人物によるものかどうか分からない「リンク不能」な状態は「完全匿名」となる。ネットの掲示板でしばしば見られる「通りすがり」という名前での、その場限りの投稿がそれにあたる。

 完全匿名による書き込みは、投稿のしにくさを減らすが、情報の信頼性や投稿の質が低下するリスクがある。実名はその逆で、投稿のハードルは上がるが信頼性は高い。Q&Aサイトは、利用する「仮名」を登録させ、リンク可能な投稿履歴をプロフィルページに掲載することによって、投稿のしやすさと質のバランスをとっているといえる。

 Yahoo!知恵袋と価格.comはすべての投稿履歴を掲載し、かつ履歴の一覧性も高い。個人的な書き込みも誹謗中傷も含め、すべての書き込みが同一人物のものとしてリンク可能であり、識別できる。そのため、実名が秘匿された状態であっても、例えば病気や健康についての投稿と、趣味に関する投稿が同一人物のものとして認識されることになり、利用者の抵抗感を完全にぬぐうことはできない。

 たとえば、カメラに詳しいことをアピールしていたのに、自分の持病についての投稿までひも付けられて、人格のイメージを形成されてしまうような状況は、多くの投稿者が望んでいないだろう。さらにプロフィルページを知人が読んだ場合に、確証は得られないまでも投稿者本人が特定されるリスクもある。すべての投稿が投稿者のIDにひも付くがゆえに、かえって質問がしづらくなるという事態が発生する可能性があるということだ。

■匿名性と信頼性を両立する試み

 OKWaveの場合、投稿者のプロフィルページでは投稿した回答履歴が公開されるが、質問履歴は掲載していない。「回答は投稿者の意志で、信憑性を判断する一助となるが、質問履歴は不可抗力。その人自身をあぶりだしてしまう」(オウケイウェイヴの武田健太郎氏)との考え方によるもので、複数の質問が本人にひも付けにくくなっているといえる。

 「人力検索はてな」の場合は、IDの工夫によってリンク可能な範囲、すなわち匿名性の強さを調整することができる。利用登録のためのIDである「メインアカウント」の登録1つに対し、「サブアカウント」を別個に取得することができるのだ。人力検索のプロフィルには、サブアカウントごとに質問履歴や回答回数、ポイントの支払いおよび受け取りの回数などが記載される。

 たとえば、あるアカウントでは専門性の高いブログの執筆や回答の投稿をし、別のアカウントではプライベートな悩みを相談するといった使い分けができる。現在、約90万のメインアカウントに対して、サブアカウントは約2万あるという。はてな広報担当の万井綾子氏は「自分も仕事用のはてなIDとプライベート用のはてなIDを分けて使っている」と話す。

 自分以外の利用者からは別々に認識される複数のアカウントだが、サイトの運営者であるはてな側から見ると1人によるものとして扱われる。仮にルール違反を犯せば、全てのアカウントが利用停止される。つまり、ユーザー間ではある程度「リンク不能」な状態を作り、サービス提供者はそれらの行為をすべてメインアカウントに「リンク可能」にしているのだ(図3)。ユーザー間、サービス提供者というようにIDを取り扱う階層(レイヤ)を分けることによって、使い分けによる書き込みやすさと、書き込んだ内容に対する責任を確保する試みだと言えるだろう。

図3 はてなはIDを取り扱うレイヤを分けている

■適切な設計が善意を引き出す

 Q&Aサイトが掲示板や一般の情報サイトに比べ高い支持を受けている一番の理由は、ユーザー登録と履歴情報によって利用者を識別できる「仮名性」を活かした設計にあるといえる。質問者と回答者を識別できるだけでなく、その相手にお礼をしたり評価をしたりすることで利用者が仮名の自分を律する効果もある。

 プロフィルの投稿履歴が他人に閲覧されることにより、たとえ実名を秘匿していても、自分の行為に責任を感じることになる。他者の役に立つ質問を投稿すれば、感謝を表すポイントや投票が蓄積されるが、程度の低い投稿を続けるならば、その履歴からユーザー自身も低い評価を受ける。こうした蓄積を元に、質問者は回答の信頼性を判断できるし、回答者は自分のプロフィルに蓄積された良い評価を裏切らないふるまいをみせる。

 一般にサイトの利用者を増やす障壁になるとされるユーザー登録だが、実は、利用者は好意的に見ている。前述の2008年9月実施の調査からも、同一のニックネームを使うにせよ、ニックネームをそのつど変えるにせよ、「ユーザー登録をするサイトを使いたい」という回答者が7割を超えた。

 オウケイウェイヴの宮城重幸広報室長は「一定のルールを設定することで、人のいい面が引き出せている」と語る。Q&Aサイトの設計とルールはネット上で善意を生かすための貴重な事例とみなすことができるのではないだろうか。(終わり)

投稿を促すサイトの不思議 人はなぜ教えあうのか(2)


Q&Aサイトをビジネスとして運営するならば、利用者を増やす必要がある。より多くの質問が投稿され、良質な回答がより多く寄せられるような場を提供するために、各社はどのような工夫をしているのだろうか。(折田明子)

■入り口は100、データベースは1つ

 各社が共通して目指すのは、「質問を投稿したときに、必ず回答がつくと思えるサービス」(ヤフー検索事業部の湯澤秀人氏)だ。専門性を持つサイトと組み、多くの回答者と質問者を確保するという考え方を先行して実践していたのがオウケイウェイヴのパートナー戦略だ。オウケイウェイヴのQ&Aサイト「OKWave」は100を超えるパートナー企業のサイトにQ&Aサイトの入り口を設置している。

教えて!gooのトップ画面

 各パートナーサイトでは画面やカテゴリーをカスタマイズできるため、それぞれが別サイトに見えるが、実はデータベースは共通だ。例えばNTTレゾナントの「教えて!Goo」やマイクロソフトの「MSN相談箱」 、楽天市場の「楽天みんなで解決!Q&A」は、それぞれ特徴ある入口をもっているが、取り扱われる質問と回答はすべて共通のものだ。

 パートナー戦略について、オウケイウェイヴの武田健太郎氏は「たとえば、不動産のことを聞きたい人に適した回答者は不動産サイトにいる。回答者がたくさんいるところはどこなのかを追求した」と語る。利用者が異なる多くのサイトと組むことで、回答を充実し質問者の満足度を高めるという狙いだ。現在も介護、育児、リサイクルなど多様なコミュニティーサイトとの連携を検討しているという。

 直接会っての相談とは異なり、ネットに書き込むだけの相談では行き違いも発生する。OKWaveは寄せられた回答に対して質問者がコメントを追加し、言い足りなかったことを補足したり誤解を修正したりすることができる。その結果、込み入った悩みの相談や、丁寧な回答が寄せられているという。

 質の高い回答者を増やす試みとして、「Yahoo!知恵袋」は2008年11月からはオールアバウトの情報サイト「All about」との連携を開始した。All aboutの専門家がYahoo!知恵袋に1人のユーザーとして参加し、質問に対して回答を投稿する。回答はまったくのボランティアであるため、回答の頻度はそれぞれの専門家によって異なるが、専門性や知識のPRの場として活用されている。All aboutの専門家は写真と実名が掲載されるものの、ルール上は一般の回答者と同様に扱われる。専門家の回答が必ずしもベストアンサーに選ばれるわけでもなく、一般ユーザーと切磋琢磨している点がユニークだ。

■質問に気づかせる工夫

 利用者が増え続けているQ&Aサイトだが、ほとんどの利用者は閲覧のみで実際に質問や回答を投稿する人は必ずしも多くはない。筆者が2008年9月に実施したインターネットを介した情報交換に関する調査(マクロミルリサーチパネル、全国518名男女、注1)によると、カカクコムの価格比較サイト「価格.com」に投稿したことがあると答えた割合は回答者の4.1%にとどまり、閲覧のみの人が約7割に達する。投稿経験のある人の割合は、OKWaveのパートナーサイトである教えて!Gooで3.7%、Yahoo!知恵袋でも5.6%にとどまる。いかに潜在的な質問者と回答者に参加してもらうかはサイト運営者に共通する課題だ。

Q&Aサイトは閲覧のみの利用者が多い

 Yahoo!知恵袋は、「Yahoo!JAPAN」が持つサービスやコンテンツからの誘導により知恵袋への投稿を促している。検索窓の上部には、ウェブ・画像・動画などとともにYahoo!知恵袋へのリンクが張られ、知恵袋に蓄積された質問と回答を対象に検索をすることができる。また、モバイル版では検索すると、検索結果の画面にキーワードを含むQ&Aへのリンクが表示される。

 ヤフーの湯澤氏は「共通のデータベースを利用しながら、知恵袋とそれぞれの専門的なページを意識せずに相互に行き来できるようにしたい」と話す。例えば、育児サイトの「Yahoo!ベビー」とは質問コーナーの内容を共有している。「Yahoo!ベビーのページに来る人は育児中の人が多く、これを見て悩みを解決したり、知恵袋へのリンクからアクセスして自分も何かを回答したりする傾向がある」(ヤフー検索事業部の中川智敏氏)ためだ。

 ほかのサービスに知恵袋のプラットフォームを提供し、関連するトピックに質問や回答を投稿してもらうことで、結果的に知恵袋のデータベースが充実する。同様の試みはファッションサイト「Yahoo!FASHION」やペットサイト「Yahoo!ペット」でも実施されている。

 多くのサービスを抱える「はてな」においても、検索窓の上部に配置された「人力検索」のタブによる質問の検索をはじめ、質問と回答に関連する情報がさまざまな方法で関連付けられている。質問のページには類似した質問を「おとなり質問」として表示。ある分野に詳しい回答者が、回答可能な質問を次々と見つけて投稿できる。

■初心者は「マーク」で保護

 質問の投稿を促すためには、そのきっかけだけでなく投稿のためのハードルを下げることも必要だ。価格.comでは2008年6月より初心者向けのヘルプ付新規書き込み機能を導入した。この専用フォームでは、投稿者が書き込む内容の種類を選択すると、質問を書き込むページにタイトルや文例を表示し、より意図が伝わりやすい質問文が作成できるよう支援する。

 投稿した質問には初心者マークが表示されるうえ、他のユーザーが回答をする際に画面に「初心者の投稿であり、丁寧な説明で返信してほしい」という趣旨の注意が表示される。初心者マークの投稿に高圧的な回答がつけられた場合にはコメントを削除するルールだが「削除に対するクレームはない」(カカクコムショッピングメディア部の遠藤靖幸氏)という。

 価格.comは利用者の8割が30代以上と、広く利用されているサイトの中では年齢層が高い。50代、60代とおぼしき回答者が懇切丁寧に説明するような事例もあり「利用者同士のやりとりは誘導せず、枠組みとルールを整えることに専念する」(カカクコムの遠藤氏)とのスタンスを貫いてきた。

 一方でサイト開設から時間が経つにつれて常連が増え、基本的な質問に対して高圧的な回答がなされ、ユーザーへのアンケートからは「高圧的な回答者がこわくて質問を書き込めない」という声が上がっていた。そこで初心者マークを導入し、初心者やネットリテラシーが低い人からの投稿を促すことにしたのだという。

 人力検索はてなによる、換金性のあるポイントのやりとりも、質問者の立場を強くする目的で導入された。質問者が提供するポイントは、「回答者が質問者の代わりに調べる手間の対価」(はてな広報担当の万井綾子氏)となり、基本的な質問に対して「過去のQ&Aを見れば分かるのに」と言われない効果があるという。

 質問内容に関するハードルを下げる工夫として、OKWaveおよびパートナーサイトでは、2008年12月から動画と画像による投稿を開始した。「質問をして知りたい情報をスムーズに得るには国語力が必要だが、言葉で説明するのが難しいこともある。補完する機能は必要だ」と、オウケイウェイヴの武田氏は説明する。

 具体的には「植物が病気になって斑点ができた」「この服装でデートに行くのはどうだろう」といった質問で威力を発揮する。将来は携帯電話で動画を撮影して質問できるようにすることも考えているという。Yahoo!知恵袋も2008年12月からパソコンとケータイの両方から画像の投稿が可能となった。「『円錐に内接している球の面積の求め方』など、数学の問題の解き方に関する質問で活用されている」(ヤフーの中川氏)という。

 それにしても、なぜQ&Aサイトの利用者は見知らぬ人に質問し、その回答が信じるに値すると判断しているのだろうか。次回は質問と回答の信頼性を高める仕組みについて検証することにする。

Q&Aサイト、8割が回答に「満足」 人はなぜ教えあうのか(1)


インターネット上で利用者同士が互いに質問と回答を投稿しあうQ&Aサイトは、さまざまな相談ごとをもちかける場であると同時に、膨大な知識が蓄積されるデータベースとして活用されるようになった。なぜ見知らぬ人同士で、有益な情報交換が成り立つのか。また、蓄積された知識はどのように活用されているのか。主なQ&Aサイトの試みを取り上げながら、ネット上の「教えあい」について考える。(折田明子)

 風邪の流行る季節だ。「咳が止まらない」「加湿器の効果」といったフレーズをYahoo!やGoogleで検索してみると、「Yahoo!知恵袋」や「人力検索はてな」「教えて!goo」「OKWave」といったQ&Aサイトの質問と回答ページが上位に表示される。

 単に「咳」や「加湿器」と検索したときには、その言葉の定義や製品情報が表示されがちだが、より話し言葉に近いフレーズで検索すると、自分が求めている個人の経験談やアドバイスを検索結果から得やすくなる。質問をするつもりで検索窓に入力すると、Q&Aサイトの質問と似た文章を打ち込むことになり、その結果Q&Aサイトに蓄積された知識を見つけることができるのだ。

■Yahoo!知恵袋、利用者2.7倍に

yahoo!知恵袋のトップ画面

 Q&Aサイトの利用者は急増している。ネットレイティングスが2008年4月に発表したデータによれば、2008年3月時点でYahoo!知恵袋の利用者数は1261万人(1年前は465万人)、教えて!gooは781万人(同505万人)と、1年間で5割から2.7倍という高い伸びを示している。さらに、ネットレイティングスの2008年12月24日付プレスリリースによれば、Yahoo!知恵袋やOKWaveなどのQ&A サイトは、家庭だけでなく職場でも使われるようになっているという。

 日本のQ&Aサイトの歴史は、2000年1月に運営開始された「OKWebコミュニティ」(現OKWave)に始まる。その後、2001年7月には人力検索はてな、2004年4月にはYahoo!知恵袋がベータ版サービスを開始した。「価格.com」では、価格比較サイトの付加機能として1997年からクチコミができる掲示板を開設。2000年3月から製品や型番単位ごとに書き込みができるようにした。

 現在、Q&Aサイトはどのように利用されているのか。筆者が2008年9月に実施したインターネットクチコミに関する調査(マクロミルリサーチパネル、全国518名男女、注1)の結果から、Q&Aサイトに関連する部分をご紹介しよう。

 ネット上の情報交換の経験については、回答者の4人に3人が価格.comの利用経験があり、約半数がYahoo!知恵袋および教えて!Gooを利用している。Yahoo!知恵袋では特に「趣味について」(27.2%)、「家電やPCの購買・利用法について」(25.6%)、「健康や病気について」(20.8%)の利用が目立っていた。

ヤフー知恵袋の利用者に聞いた、閲覧した質問の種類(複数回答)

 利用者の声をみると「賞味期限切れの生肉を食べられるか確認したところすぐに回答があり実際に食べられた」(男性・35歳・パート・アルバイト)、「検索しても出てこなかったこと(本当に困ったこと)を質問した時にすぐに回答がきて、具体的な理由をあげて『大丈夫ですよ』と言ってもらえたこと。安心しました」(女性・29歳・専業主婦)といった、自分では調べきれないことについてQ&Aサイトを利用する例が目立った。

 持病のことや「恋愛相談の書き込みをしたら即答で返事をもらえた」(女性・25歳・会社員)といった人に聞きづらい相談ごとにも利用されている。こうした相談や情報収集については、80%以上の利用者が「満足を得られた」と回答しており、Q&Aサイトでの情報交換を利用者が有益と感じていることがわかる。

■質問や回答にはIDが必要

 ここで、Yahoo!知恵袋を例にQ&Aサイトのサービスの概要を確認しておこう。Q&Aサイトを閲覧するだけであれば特に準備はいらないが、質問や回答を書き込むためにはサイトのID(ここではYahoo!JAPAN ID)の取得と利用登録(ニックネーム登録)が求められる。その後の質問や回答は設定したニックネームにより行われることになる。

 投稿した質問は、他の質問と交じり合うことなく一つの独立した掲示板を形成し、内容に応じた適切なカテゴリーに分類して掲載されて回答の投稿を待つ。質問はYahoo!知恵袋のトップページに掲載されている「回答受付中の質問」として掲載されるほか、投稿内容に対する検索結果にも表示される。

 回答者はトップページやカテゴリーごとに掲載される質問リストを見るか、Yahoo!知恵袋の質問や回答を対象とした検索機能によって自分が答えられそうな質問を探し、回答を投稿する。質問を投稿してから、早いものでは1分以内に回答が投稿される。

 Yahoo!知恵袋では質問の掲載期間である7日間が終了するか、質問者自身が複数の回答からもっとも有益だったものを「ベストアンサー」として選択すれば、回答の受付は終了する。1つも回答が得られなかった質問は、質問期間が終了すると削除される。終了した質問と回答の記録はデータベース化され、サービス内のみならず一般の検索エンジンからも検索できるようになる。

■回答者には報酬と名誉

 なぜ回答者は質問に回答するのだろう。

 Q&Aサイトでは、寄せられた回答や、特に役立つ回答に対して何らかの「お礼」ができる機能を備えている。Yahoo!知恵袋は「ベストアンサー」の回答者に対して質問者がお礼として「知恵コイン」というポイントを渡すことができる。OKWaveにも同様の「ありがとうポイント」という機能がある。

 Yahoo!知恵袋とOKWaveでやりとりされるポイントは、Yahoo!JAPANポイントのように金銭の代わりに使えるものではない。Yahoo!の知恵コインの場合、回答がベストアンサーに選ばれる以外にも、知恵袋へのログインや質問、回答の投稿のほか、他者の回答を評価するなどサイトを利用するほどに増える。たまったポイントは、自分が質問を投稿する際にお礼として提示するための原資となる。

 人力検索はてなの場合も、質問者は回答者のためにあらかじめ「何ポイント提供するか」を示し、有益な回答を投稿した回答者はポイントを得る。はてなの場合は、はてなが提供する有料サービスのポイントと共通で換金性があり、サイトの利用で加算されるほか、1ポイント1円で購入することもできる。ポイントは楽天やAmazonのポイントに移行することも可能だ。

 ただ、はてなの利用者は「報酬額以外のモチベーションで回答している人も多い」(はてなの万井綾子氏)という。最も優れた回答には「いるか賞」という「勲章」が付与され、「いるか賞」の数がプロフィルに表示される。Yahoo!知恵袋やOKWaveにも多くの回答を投稿し、その評価が高い回答者のIDをランキングする仕組みがあり、こうした「名誉」が大きなモチベーションになっているようだ。

 価格.comの場合は、クチコミやレビューで気に入った投稿者のことを「お気に入りクチコミスト」として登録することができる。膨大な投稿の中からお気に入りの投稿者の動向がすぐ分かる仕組みだ。また、お気に入りに登録された回答者は自分に何人のファンがついているかが分かるようになっており、回答者のモチベーションにつながっている。

 価格.comでは常連とされるユーザーが多く存在している。価格.comにユーザー登録制度が導入される前から、いわゆる「固定ハンドル」として同じニックネームを名乗り続けている人たちだ。中には、一日に5~6時間かけてパソコンのパーツに関する質問に答え、投稿数が3万件以上にも上った「常連」もいたという。各分野にスペシャリストが存在し、「『○○さんの回答がついて嬉しいです』とコメントされていることもある」(カカクコムの甲斐かおり氏)というように、ファンが多い常連ユーザーが半ばブランド化しコミュニティーの活性化に一役買っている。

 Q&Aサイトの利用が拡大している理由はこれだけにとどまらない。次回は広く質問と回答を集めるための各社の様々な工夫を見ていく。

人気料理レシピサイト「クックパッド」大ヒットのワケ


■ cookpad

月間で600万人が訪れる、お化け料理レシピサイトをご存じだろうか。料理レシピを自分で投稿できたり、検索したりできる「クックパッド」だ。ユーザーの9割は女性。30代女性ではなんと4人に1人がユーザーという。

そもそも料理レシピは料理雑誌にも料理本にも載っている。もちろんネット上にもある。なのに、女性はなぜクックパッドに行くのか。運営元の佐野陽光社長に聞いた。

「料理を作る人というのは、たくさんの人に、おいしいね、と言ってもらいたいんです。それをサイトへの投稿という形で、簡単に楽しくできるようにしているんです」

つまり、多くの人に“おいしい”と言われたい女性の心理を、うまく捉えたサイトなのだ。実際、投稿されたレシピを使って調理したユーザーの写真付きレポートが、数十件単位でアップされることも。

「さらに加えて、レシピを探すユーザーのために、検索機能に徹底してこだわりました」

例えば、白菜で検索する。だが、白菜を使った料理が出てくるだけではない。なぜ、白菜と入れたか、まで考えるのがクックパッド。導き出される仮説は、「冷蔵庫にたくさん白菜があるからでは…?」。だから、大量に白菜を使うレシピが出る。ユーザーは、ドンピシャのレシピに出会える確率が高まる。

「アクセスのピーク時間は16時。すばやく的確な情報が手に入らないと、忙しい女性ユーザーには使ってもらえません」

レスポンスも驚くほど早い。忙しいユーザーのために、レスポンス向上に1998年の開設以来こだわってきた。目標は0.2秒。検索機能も自社で開発。実は背景にあるのは、高度なテクノロジーだ。ユーザーニーズの分析にも先端技術が使われる。料理がテーマのやさしいサイトと思いきや、技術をベースにした骨太サイトなのだ。

誰でもレシピを投稿でき、50万件ものレシピから、自分の調理レベルや調理環境に合ったレシピが探せる。これは本にも他のサイトにもない醍醐味。だから今日も女性はクックパッドに向かうのだ。
(R25編集部)