WEB本の雑誌(2011.6.19)
ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの普及により、これまでよりも情報が素早く拡散されるようになった昨今、企業のイメージアップを担う各社の広報担当者たちにとってネットにおけるPR活動は欠かせないものとなっています。
しかし、ネットは宣伝ツールとして優れている反面、誰しも自由に発言できるため「バッシング」や「炎上」といった事態に陥りやすい特性も。広報担当者たちの頭を悩ませ続けるこの問題に、編集者兼PRプランナーの中川淳一郎さんは「ネットには叩かれやすい企業と、そうでない企業がある」として、その違いを『広報会議 7月号』(宣伝会議)でこう解説しています。
「ネット上では地道に仕事をしているイメージのある『町工場』や『農家』は叩かれにくく、華やかで楽しそうで儲かってそうなイメージがある企業が叩かれやすい。(中略)基本的に叩かれる企業は『嫉妬』が絡んでいる」
例えば、2010年10月にサイバーエージェントの女性内定者が、参加した「総会」の様子をブログにアップしたところ、非難が殺到しブログが「炎上」したことがありました。ブログの内容自体は「(素晴らしい会で)働く意欲が高まった」という前向きなものでしたが、そこに写っていた女性内定者たちがいずれも美人ぞろいだったことで、ブログの閲覧者たちから「自分たちの幸せな境遇を誇示している」と受け止められ、「叩き」の対象となったのです。
「人は苦しい生活を送っている人を叩かない。自分よりも楽しく、幸せそうな人生を送っている人を叩くのである。それは企業も同じだ」(中川さん)
そうした事態への防衛策として、中川さんは「儲かっているイメージを出さない」、「社会に何らかの還元をする(ただし偽善と映らない形で)」ことを提言しています。実際に、本当は儲かっている企業であっても、安く品質の良い製品を提供する「ユニクロ」や、ガリガリ君で知られる「赤城乳業」などは叩かれにくいのだそうです。
中身よりも体裁を気にしがちな日本独自の文脈と言えそうですが、ネット時代のPR活動を考える上で、こうした要素は考慮せざるを得なくなっているようです。とはいえ、中川さんに言わせれば、「ネットで叩かれようが、実際のところ大した影響はなく、ビビった担当者が過剰に反応し、事を荒立てただけのことも多い」とか。一部の人が騒いでいるだけなのか、それとも社会的な「問題」となっているのかを、きちんと把握することが大切なのかもしれません。