2008年9月29日月曜日

オークションに高値入札してしまうのはなぜか 脳画像で研究

9月26日16時55分配信 ITmediaニュース

 オークションについ高値で入札してしまうのはなぜなのか——米ニューヨーク大学が脳画像と行動経済学を組み合わせ、その理由の解明に挑んだ。

 過去の研究によれば、オークション参加者は実際の品物の価値よりも高い値で入札する傾向がある。ニューヨーク大学の神経科学者と経済学者は実験で、オークションに内在する社会的競争で敗北することに対する恐怖が値をつり上げる一因となっている可能性があることを発見した。

 実験では、被験者にオークションゲームとくじ引きゲームをプレイしてもらい、その脳の活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調べた。オークションゲームの勝敗は対戦相手に競り勝つかどうかで決まり、どちらもゲームでも被験者は負ければお金を失う。

 報酬にかかわる処理を行う脳の線条体を調べたところ、オークションゲームで負けたときの反応が大きかったという。オークションゲームで負けたときの線条体の反応の大きさと、高値で入札する傾向には相関関係があった。このことから研究者らは、「オークションに内在する社会的競争で負けるという予測が、高値入札につながる可能性がある」との仮説を立てた。

 次にこの仮説を検証するため、オークションゲームを使って行動経済学に基づく実験を行った。被験者は、指定の金額で入札するだけの統制群、勝てば実験用通貨15ドルを受け取れるBonus-Frame群、最初に15ドル渡され、負ければ没収されるLoss-Frame群の3グループに分けられた。統制群以外は報酬が同じだが、Bonus-Frame群では「勝利」、Loss-Frame群では「敗北」が強調されている。実験の結果、Loss-Frame群の被験者は、ほかの2グループの被験者よりも入札価格が高かったという。

 「過去の研究では、高値入札の理由をリスクへの嫌悪または勝利の喜びとしているが、われわれは脳画像により、敗北への恐怖という新たな説明に到達できた」と研究者は述べている。この研究結果はScience誌最新号に掲載される。