asahi.com(2011.1.12)
なかなか来ないバスを待ち続けるか、あきらめて歩くか――。辛抱強く待つかどうかの意思決定にかかわるとみられる神経伝達物質を、独立行政法人の沖縄科学技術研究基盤整備機構神経計算ユニットのチームがラット実験で突きとめた。うつ病などの原因解明につながると期待される。
12日発行の米専門誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス電子版に発表する。
チームはうつ病や睡眠にかかわる神経伝達物質セロトニンに着目。報酬のために待つかどうかの判断にかかわっているとの仮説を立てた。
ラットがエサ場や水場に着くとすぐエサや水が得られる場合と、4秒待たないと得られない場合とで、脳内のセロトニンの働きを調べた。
すると、4秒待つときの方がセロトニンの放出が高まり、濃度が上昇した。さらに、大脳にセロトニンを送る神経細胞の活動を電極で測ると、待っている間に活動が高まり、あきらめてしまう場合に弱まることがわかった。
代表研究者の銅谷賢治さんは「セロトニンの役割を詳細に調べ、うつ病などの原因の解明や、人間的な判断ができるロボットの開発などに貢献したい」と話している。
これまで、セロトニンの働きを抑えると衝動的に目先の利益を選びがちなことは実験で示されていた。