琉球新報(2011.1.23)
沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)の磯田昌岐代表研究者(神経システム行動ユニット)らの研究グループは、ニホンザルを用いた実験で、自分と他者の行動を区別している細胞が前頭葉の内側領域にあることを初めて発見した。米科学誌「カレントバイオロジー」のオンライン版で21日発表した。研究結果は統合失調症や自閉症の原因解明につながる可能性がある。
磯田氏らが行った実験は、2匹のサルを向かい合わせに座らせ、一方のサルに緑と黄色のボタン、どちらか一つを押させて正解の色ならジュースをあげる。もう一方のサルはその様子を観察する。これを2回ずつ交互に繰り返す。正解の色は複数回連続し、途中でサルに分からないように正解の色を変える。
ルールを理解して相手が間違った色を押したことや、正解の色が途中で変わったことを、見ている側のサルは相手のサルが押したボタンから判断しなければならない。この実験で相手が間違った後、自分の番で正しくボタンを押せた確率は9割を超えた。
実験中にサルの脳細胞に電極を刺して反応を観察したところ、別のサルが行動している時にだけ反応を示す「他者細胞」が前頭葉の内側領域表面に集中していることが分かった。自分が行動している時にだけ反応する「自己細胞」や、自分が行動する時も別のサルが行動する時も反応する「ミラー細胞」も確認した。
ミラー細胞の存在は先行する研究で明らかになっていたが、他者細胞の発見は初めて。ミラー細胞の存在だけでは自分と他者の行動を区別できないという課題があったが、他者細胞の発見により矛盾を説明できる。