2011年8月25日木曜日

ピントは後から合わせればいい──米企業、画期的なカメラを製品化へ

ITmedia(2011.6.23)




 ピントは写真を撮った後で合わせればいい──米Lytroは6月22日(現地時間)、画期的なデジタルカメラを開発しており、年内に発売する予定だと発表した。画角内の全ての光線を記録し、後からピントを修正したり、写真内の好みの被写体にピントを合わせるといったことが可能になるという。同社サイトでデモ画像を公開している。


 同社はこのカメラを「light field camera」と呼んでいる。通常のカメラのレンズでは、ピントが合う位置は常に1点だ。広角レンズで絞り込むと全体的にピントが合ったように見える(被写界深度が深くなる)が、この場合もピントが合っているのは1点であり、あくまで“全体にピントが合っているように見える”に過ぎない。


 light field cameraは、メインレンズで光をとらえた、センサーの前の配置した無数のマイクロレンズアレイを通過した光の方向をマイクロレンズごとに記録する。このデータをソフトウェアによって処理を行うことで、撮影した範囲の任意の点のピントを撮影後に再現できるという。


 創業者のレン・ン(Ren Ng)CEOはスタンド-フォード大学在学中からこの研究に取り組んでおり、同カメラの原理「Fourier Slice Photography」についての論文もある(論文の内容を紹介したスライド)。

 このカメラが実現すれば、ピンぼけからは永久におさらばできることになる上、オートフォーカスの合焦時間の遅れにイライラすることもなくなる。同社には「Netscape」で知られるマーク・アンドリーセン氏のファンドが投資しており、アンドリーセン氏は「Lytroの革新的な技術により、従来のデジタルカメラは時代遅れのものになるだろう」とコメントしている。

リアルタイムに回帰するwebメディア

CNET Japan(2011.6.26)

既存メディアの未来は暗い

 更新頻度という面から既存メディアとwebメディアを比較してみれば、既存メディアがいかに不利か明確になる。たとえば、月刊誌はマンスリー、週刊誌ならウィークリー。ブログであれば、ほとんどがウィークリーと言っていい。mixiになればデイリーだろう。

 しかし、twitterはさらに早く、数秒、数十秒ごとに更新され、情報が飛び交う。朝のニュースは、夕方にはすでに古く感じてしまうほどで、夜のニュース番組を見ても「全部知ってるよ」ということになるわけだ。言い換えれば、テレビというのはすでに知っている情報を映像としてまとめてくれているメディアなのだ。少なくともネットネイティブの人間はそう感じているだろう。

 ネットに親しんでいない人にとっては、テレビはもっともよく接するメディアであり、それを見て育ったわけだから、テレビと一緒に老いていくのだろう。同じように、PCで育った人は最後までPCとつき合おうと思うだろうが、携帯やスマートフォンなどのモバイルで育った若い層は、PCでさえオヤジ臭いと思っている。

 それは世代の話であるから、何がいいとか悪いとは言えないが、今後新聞、テレビは確実に衰退していくのは間違いない。

 一方、1時間当たりのメディア接触数で見れば、やはりマスメディアのほうが優位である。地上波のNHKが1時間当たり数千万人、BS、CSは1時間数百万人~数十万人ほどになる。

数十万人という単位まで下がれば、USTREAMやニコ生などのソーシャルメディアもアプローチできる規模と言える。たとえば宇多田ヒカルの2時間のライブを視聴したのは累計30万人。1時間当たり数十万人というのは射程範囲に入っている。十分なポテンシャルを秘めているのである。

 また、テレビとの大きな違いは、前のめり感にある。テレビは、寂しいから何となくつけているということが多いが、webメディアの場合は端末に向かってキーボードを操作するという、能動的な姿勢が特徴である。 しかし、そんなwebメディアでも、必ずしもモニターの最前面で見ているわけではない。とりあえずおもしろそうなサイトにアクセスして、バックグラウンドに送ってほかの作業をしていることもある。その意味では、ラジオの使い方に似ていると言える。

 だから、ライブメディアも新鮮さは薄れ、我々を驚かせる時期は終わっていると言っていい。

 次の段階としては、普段からtwitterやmixiを見ていない人たちにどうアプローチするかが課題だろう。物理的には全世界に到達できるメディアであるが、それを見るスキルが複雑であることが障害ではある。たとえば、QRコードのようなものに携帯をかざせばすぐに見られるようになればいいだろう。

 さらに、画質の向上や3D対応、映像の中に埋め込むリンク、何万人が同時視聴しても落ちないなど、技術的なイノベーションも必要だ。

 テレビの情報は一方的に押しつけられるが、若い層は情報をwebで収集している。自分が興味のある情報だけにアクセスするため、情報に偏りが生ずる。その意味では、世界が狭まっているとも言える。

 たとえば、アマゾンで本を買うと「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と、興味の対象が1点に集中してしまうが、実際の書店へ行けばあらゆるジャンルの本が並んでいる。

 嗜好性を結集する機能、サービスは多数あるが、これから必要なのはその逆なのかもしれない。「これが好き」という入力に対してまったく逆のリストを提示する、なんてこともあっていいのではないか。

情報の民主化で見えてくるもの

 既存のマスメディアだけに解放されている記者クラブに対抗して、フリーのジャーナリストらが中心となって自由報道協会が設立された。それが力を持ってくれば、また新たな派閥が形成されてしまうが、我々は両方の意見を知りたい。たとえて言うなら『アエラ』を読みながら、こっちで『サピオ』も読む、みたいな。

 本来、メディアというのは権力を見張るためのものであるが、メディア自体が権威になってくると意図的な編集や印象操作が目につくようになる。しかし、ネットの普及で豊富な情報ツールにアクセスすることができるようになり、マスメディアの偏向ぶりに気づくようになった。USTREAMは映像メディアによるブログのようなものであり、編集されていない今の状況が中継される。視聴者がそこから何を読み取るかは自由。それは見る側のメディアリテラシーを向上させる効果もあるだろう。

 また、話題になっていたり、議論になっているテーマをまとめるサイトも注目されているが、編集している人間の志向でどのようにも文脈を変えることができる。そこに偏向が生じてしまうから、それを防ぐための新しい技術も必要だろう。

 ネットの利点として、これまではいつでもどこでも必要な情報にアクセスできるという面がクローズアップされてきたが、リアルタイムの映像メディアに注目が集まっていることも興味深い。なぜ、わざわざ今という時間を割いて中継を見たり、イベントに集まるのか?

 「そらのちゃん」の功績により、その場をそのままネット生中継することを「ダダ漏れ」と言うようになった。要は、中継用に作り込んだものではなく、本来はクローズしていたものをネット生中継することを「ダダ漏れ」と言うが、「今」という編集できない時間をそのまま伝えることと言っていい。

 視聴者はそういったナマっぽいものを求めているのだ。そういった時代の空気がある。

 そう考えると「ダダ漏れ」の特徴は、ジュースの成分表示でいう「無添加・無農薬」ならぬ「無添加・無編集」と言える。この「ダダ漏れ」現象をメディア論的な観点で再定義し、「オーガニックメディア」と呼んでいるが、直訳すると「有機媒体」ということになる。

 「オーガニックメディア」には編集の必要がない。編集という概念はもっと根本的なところに戻っていくと考えてもいい。何を中継することがおもしろいのか? どういうリアリティーを伝えるのか? といった素材の選択が編集である。

 twitterを見ればわかりやすい。タイムラインは人によって違う。誰をフォローしているかで内容や流れはまったく変わってくる。twitterでは「誰をフォローするか?」は「どんな雑誌を購読するか?」と同義なのである。 USTREAMでもそれはまったく同じ。「あの人が中継するものはおもしろい!」「あの人が中継する対象に興味がある!」と、番組ではなく中継者にファンがつくのである。

 顔を知ってもらいたい職業や場所を認知してもらいたいビジネスにとって、ライブメディアを活用することこそが決め手になるだろう。人間は頻繁に見ているものにシンパシーを抱く。中継者が動いてしゃべっている息づかいを視覚的に見ているから、視聴者はシンパシーを感じやすいのだ。

 ライブメディアのために何か新しく作らなくても、たとえばレストランでいつも作っている料理の調理過程を中継してもいい。すでにやっていることを見せることでシンパシーを抱いてくれるものだ。

保護色や擬態がすさまじくて背景と同化しているトカゲの写真いろいろ

らばQ(2009.11.20)




これからの結婚生活を暗示しかねないウェディングケーキの飾りたち

Garbagenews.com(2009.11.20)







利他行動の進化的起源 - チンパンジーは要求に応じて相手を助ける -

京都大学(2009.10.14)

霊長類研究所と野生動物研究センターの共同チームの研究によって、自分への直接の利益や見返りがなくても、同種他個体からの要求に応えてチンパンジーが他者を手助けすることが明らかとなりました。本研究は、チンパンジー同士の手助け行動を実験を通して実証的に検証した先駆的な研究です。

 なお、この研究成果は、米国科学誌「PLoS ONE(プロスワン)」のオンライン版で公開されました。

研究成果の概要

 霊長類研究所と野生動物研究センターの共同チームの研究によって、自分への直接の利益や見返りがなくても、同種他個体からの要求に応えてチンパンジーが他者を手助けすることが明らかとなった。利他行動の進化については、ダーウィンの時代より多くの研究者が取り組んできたが、まだまだ未解明な点が多い。本研究は、ヒトに最も近縁なチンパンジーで利他行動の生起メカニズムを実証的に調べた点で先駆的である。ヒトがどのように協力的な社会を築き上げてきたかについて新たな可能性を提示した。

 霊長類研究所でおこなった実験では、隣接する2つのブースに、2つの異なる道具使用場面を設定した(図1)。ストローを使ってジュースを飲むストロー場面と、ステッキを使ってジュース容器を引き寄せるステッキ場面である。ストロー場面のチンパンジーにはステッキを、ステッキ場面のチンパンジーにはストローを渡し、ブース間のパネルに開いた穴を通して2個体間で道具が受け渡されるかどうかを調べた。その結果、全試行の59.0%において個体間で道具の受け渡しがみられ、そのうちの74.7%が相手の要求に応じて渡す行動であった(図2)。相手からの見返りがなくても要求されれば道具を渡す行動は継続した。


図1: 実験場面。壁に取り付けられた容器からジュースを飲むにはストローが必要で、床に置かれたジュース容器を手に入れるにはステッキが必要。それぞれ必要な道具は隣のチンパンジーに渡された。



図2: 要求に応じた道具の受渡し。ペンデーサ(奥)が穴から手を伸ばして要求し、それに応じてマリ(手前)がステッキを拾って手渡そうとしている。


 チンパンジーの利他行動の生起には、相手からの要求が重要なようである。ヒトは他人が困っているのを見ると頼まれなくても自ら進んで助けることがあるが、チンパンジーは相手の要求があってはじめて助けることが多かった。自発的な手助けはチンパンジーでは稀だと言える。実際、手の届かない場所に置かれたジュース容器に向かって隣のブースのチンパンジーが必死に手を伸ばしている様子を見ても、持っていたステッキを自発的に相手に差し出すことは稀であった。

 利他行動の進化を考えたとき、この「要求に応じた手助け」は効率的な戦略と言える。相手の手助けをしても、それが「おせっかい」になってしまっては意味がない。その点、「要求に応じた手助け」は必ず相手の役に立つので無駄になることがない。ヒトでみられる助け合い社会も、このような利他行動を出発点として発展してきたのではないだろうか。本研究は、利他行動の進化について新たな道筋を提示している。

星吸い込むブラックホールとらえた! 実験棟「きぼう」


asahi.com(2011.8.26)

39億光年のかなたにある巨大ブラックホールが星を吸い込む瞬間を、国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の実験棟「きぼう」と米国の衛星が世界で初めてとらえた。25日の英科学誌ネイチャーに論文が発表される。

 宇宙航空研究開発機構によると、観測したのは3月28日。きぼうの観測装置「MAXI」と、米国の衛星スウィフトが、それまで暗かった場所から強いX線が突然出始めたのを、ほぼ同時に見つけた。

 ブラックホールに星が吸い込まれると、風呂の栓を抜いたときのように渦ができ、渦と垂直方向には強いビームが出ると考えられている。X線の発生源が、ブラックホールがあるとされる銀河の中心だったことから、星が吸い込まれる瞬間をとらえたと判断した。ビームがたまたま地球のほうを向いていたため、うまく観測できたらしい。

2011年8月23日火曜日

「道具を使う魚」の撮影に成功


SIENCE(2011.7.12)

オーストラリアのグレート・バリア・リーフで、「魚が道具を使う」場面が初めて撮影された。

プロのダイバーであるスコット・ガードナーが、「道具を使う野生の魚」についての初めてと思われる写真を撮影した。オーストラリアのグレート・バリア・リーフで撮影された上の写真は、30cmほどのシロクラベラが、二枚貝の中身を食べるために、貝が砕けて開くまで岩に打ち付けている様子を示している。

シドニーにあるマッコーリー大学のクルム・ブラウンはプレスリリースで、「この岩の周囲に割れた貝殻が散乱していることから、この魚はこのような行為を日常的に行っていると見られる」と述べている。

道具使用が人間に限られないことは、近年たくさん報告されている。例えばチンパンジーは、先端をとがらせた棒を槍として使ったり、石を使って木の実を割ったり、棒を使ってアリの巣をつついたりする。ゾウは、鼻で小枝をつまみ上げてハエを叩いたり、体をかいたりする。カラスでは、針金を使って先がかぎ状になった道具を作り、昆虫を引っ張り出したりする例が観察されている。

ただし、「道具の使用」という概念が具体的に何を意味するかは意見の分かれる問題だ。カモメが貝などを岩の上に落としたとき、道具を使っているといえるのだろうか? テッポウウオが「水鉄砲」を発射して獲物を枝から打ち落とすのはどうなのだろうか?

ブラウン氏は、シロクラベラが道具を使っていると考えているようだ。「海に住む魚において、道具の使用がどれくらい一般的なのかを撮影していく必要がある」と同氏はプレスリリースで述べている。

[タコに関しては、「道具の使用」がすでに観察されている

葉っぱで切り絵! なんて素敵は葉っぱアート!


Gizmodo(2011.7.20)

麻薬探知ガできるかも ガ、雌追う触角においセンサーに

東京新聞(2011.7.26)

警察犬がほえる代わりに、ガが麻薬の入ったかばんに群がって密輸を防ぐ日が来るかもしれない。東京大の桜井健志特任助教と神崎亮平教授らは、性フェロモンを鋭敏に感じ取るカイコガの遺伝子を一カ所組み換えるだけで、簡単に別のにおいを追うようになることを発見した。うまく利用すれば、においの高感度センサーになるかもしれない。成果は米データベースで必読論文に指定されるなど話題を呼んでいる。
 カイコガの雄は、微量の性フェロモンを頼りに雌にたどり着く。触角にある受容体とよばれる組織が、性フェロモンだけを確実に捉えて脳に信号を送り、雌を追う性行動を引き起こすからだ。
 桜井特任助教らは、カイコガの受容体と性行動が、たった一つの遺伝子から決まることを発見。別種のコナガの受容体の遺伝子をカイコガに組み入れてみると、コナガの雌を追うようになった。
 昆虫は八十万種以上おり、多くの独自の受容体を持つ。もしこの中から麻薬や爆薬、病気などのにおいに反応する受容体が見つかれば、その遺伝子をカイコガに組み入れて防犯や医療に役立てられる可能性もあるという。
 「カイコガがフェロモンをかぎ分ける能力は警察犬の嗅覚並み。しかも訓練不要で育成コストは一匹当たり五十円以下」と桜井特任助教はガの“捜査官”の優秀さを強調する。

pixivが一連の騒動を釈明 「創作活動が快適に行える場でありたいという基本に立ち戻る」

ITmedia(2011.7.27)

イラストSNS「pixiv」を運営するピクシブは7月27日、アート団体をめぐる一連の騒動と同社への批判に対する釈明を公開した。ユーザーに謝罪した上で「創作活動が快適に行える場でありたいという基本に立ち戻り、現状の体制について深く反省する」として運営の改善を進めるという。

●「カオス*ラウンジ」問題のごく簡単な経緯

 一連の騒動は、アート団体「カオス*ラウンジ」のメンバーが発表した、多数のイラストを使ったコラージュによる作品が発端。同社の片桐孝憲社長が同団体とともに美術雑誌で紹介されたり、pixivが実施したイラストコンテストへの応募作品がコラージュに利用されたという報告などがあったことから、「pixivが団体に協力し、イラストの無断利用を認めているのではないか」といった批判が相次いだ。

 同団体に関連したものを使った二次創作イラストに「現代アート」というタグを付けてpixivに次々と投稿するユーザーも現れた。同団体メンバーによる“アート”の手法を逆手に取った形だが、こうした作品や投稿したユーザーが次々に削除される一方、アート団体のメンバーのアカウントはそのままだったため、削除基準が不明確だとして強い批判を浴びていた。

 pixivの運営方針に不信感を抱いた描き手も相次ぎ、老舗イラストサイト「TINAMI」や「PiXA」に活動の場を移す動きもあった。両サイトではトラフィックが急増。会員登録は25日にはTINAMIが普段の50倍に、PiXAは100倍に上ったという。

 Twitterや掲示板などでは「芸術」と「創作」とその手法、著作権、キャラクターの改変の是非、コミュニティーサイト運営など多岐にわたる議論が続いている。Twitter上での議論や経緯などはTogetterのまとめなどで参照できる。

●「カオス*ラウンジの制作・展示に協力しているという事実は一切ない」

 同社の釈明は、(1)「カオス*ラウンジ」と同社の役員・社員と関係していたり、制作・展示に協力しているという事実は一切ない、(2)同団体メンバーのアカウントへの対応(26日に停止)が遅れたのは、権利者からの明確な連絡がなかったため、(3)コンテストのイラストの使用を同団体に許可した事実は一切ない、(4)特定のタグがついた作品・ユーザーを無作為に削除しているという事実は一切ない──など。

 同団体と同社の関係については「イベント・雑誌などで弊社と共に紹介されたことはあったが、活動には一切関わりがない」とした。

 著作権侵害については、同社の判断だけでは「その事実を明確にすることはできない」として、権利者と発信者との間で事実関係を確認した上で対応するというスタンス。このため同団体メンバーのアカウントに対する「迅速な処置を行うことが難しい状態」だったという。だが今後は「社外の専門家・ユーザーから意見をいただきながら迅速に対応できるよう改善していきたい」としている。

 同社は「ユーザー様に多大なるご心配、ご懸念を抱かせる結果となりましたことを、深く陳謝いたします」と謝罪。その上で、無断使用された作品の作者に対しては「弊社の責任を自覚し、pixiv内での対応にとどまらず、ご相談に応じたいと考えております」という。

「得体の知れないものになった」――「pixiv」急成長、社名も「ピクシブ」に

ITmedia(2008.10.27)

「得体の知れないものになった」――イラストSNS「pixiv」の急成長ぶりを見て、運営元クルークの片桐孝憲社長はこんな感慨をもらす。pixivに参加し、自ら楽しみ方を作り上げていくユーザーのパワーに圧倒されているという。「『こうしたい』と運営側が思ってもコントロールできない」

 昨年9月のオープンから約1年で、月間ページビュー3億、会員数30万を突破した。今年3月に10万ユーザーを突破した時は「ネットの世界にこんなにイラストがあるのか」と驚いていたが、半年でさらに3倍に増えた。

 pixiv開発者の上谷隆宏さんは「ユーザーが多すぎて実感がわかない」と、ピンとこない様子。サーバ担当のエンジニア・店本哲也さんも「3億PVをさばいている実感はない」というのが素直な感想で、「サイトの雰囲気や楽しさは開設当初と変わらない」と話す。

 3人とも、1年間ほとんど休みなく働き続け、サイトの運営やインフラ増強に追われてきた。アクセスが増える土日は特に忙しい。追加したい機能もあるが、忙しすぎて開発が後回しになっている。

 「どこに行っても“ピクシブさん”と呼ばれ、訂正するのが面倒」(片桐社長)だから、社名を11月1日付けで「ピクシブ株式会社」に変更する。同社の主な事業はpixivとシステムの受託開発。社員は10人で、年内にあと4人増やす予定だ。

pixivなぜ人気

 pixivは、自分で描いたイラストを投稿したり、投稿されたイラストに評価・コメントを付けられるサービス。イラストは1日に8000~1万枚投稿され、累計投稿数は約180万枚に上る。

 投稿しているのは会員の約3割で、残りの7割は「イラストに評価やコメントを付けて、お気に入りのユーザーを応援して楽しんだり、ランキング入りするのを喜んでいる」(片桐社長)という“ROMオンリー”のユーザーだ。

 トップページに表示されるランキング上位の作品は質が高いため、イラスト初心者は気後れして投稿しにくそうにも見えるが「そんなことはない」(片桐社長)。「企画」を見れば、初心者も数多く参加していることが分かるという。

 「企画」とは、特定のテーマのイラストを投稿し合って楽しむというもの。ユーザーが自主的に発案し、頻繁に行っている。例えば、pixivを擬人化したキャラを創作し合う「ピクシブたん」、宇宙人や惑星、ロケットなどSFっぽいイラストを描いて遊ぶ「pixivスペースオペラ」などで、片桐社長も「すべては把握しきれない」(片桐社長)ほどだ。


 ユーザーはイラストを使ってコミュニケーションしており、ほかのユーザーのオリジナルキャラと自分のキャラを戦わせたイラストを投稿するユーザーもいる。

 「pixivはイラストを展示するだけのツールではなく、コミュニティーになっている。ユーザー同士がイラストをコラボしたものなど、pixiv上で新たな作品が生まれるから面白い」――片桐社長はpixivの人気の秘密をこう分析する。

 pixivはユーザーが作り上げていると実感している。「面白いサイトにしようと運営してきたが、実際に作り上げていくのはユーザーのパワー。『こうしたい』と運営側が思ってもコントロールできない。得体の知れないものになった」

「結構、衝撃を与えられたんじゃないかな」


片桐社長と社員犬・チョビ。サーバが落ちたら吠える……なんてことはなく、サーバルームに毛が舞い込むため、店本さんは困っているという
 pixivの1カ月の売り上げは300万円ほど。バナー広告や企業の協賛を受けた「公式企画」などが収入源だが、運営費をまかない切れず、赤字が続いているという。「300万円じゃ全然無理。1000万円くらいあるといいんだが……。いいサイトにしていきたいので、開発費くらいは稼ぎたい」(片桐社長)

 ビジネスモデルを考えるのは得意ではないという。「ユーザーが考えてくれないかな」と片桐社長は冗談を飛ばしつつ、「いいWebサービスというのは、ビジネスとサービスが両立しているものだと思うから、黒字化したい」と真剣だ。

 「日本にとどまるようなサービスにしたくない」――目標は世界で、今もアクセスの約5%は海外からだ。「サイトの規模や影響力が大きい方が面白いでしょ? 日本のイラストや漫画は、映画で言うとハリウッドのようなもので、世界最高峰。日本のカルチャーが世界に広がればいい」(片桐社長)


 10万会員を突破した今年3月、開発者の上谷さんは米Appleのスティーブ・ジョブズCEOの言葉を引いて「宇宙に衝撃を与えるサービスにしたい」と話していた。半年たち、「結構、衝撃は与えられたんじゃないかな。pixivによってイラストの流れが変わった」と自信を持っている。

 自信の裏付けとなっているのは、あるユーザーからもらったこんな言葉だ。「pixivが流行る前は、イラストが漫画よりもないがしろにされていたが、pixivによって1枚のイラストが持つ魅力が理解されるようになった」

pixivコモンズ、pixivブログ……新機能は?


 追加予定の機能やサービスはたくさんある。イラストを使ったユーザー同士のコミュニケーションがより活発になるよう、イラストの利用ルール「pixivコモンズ」を11月にスタート。クリエイティブ・コモンズ(CC)や、ニコニコ動画の「ニコニ・コモンズ」のようなイメージだ。

 pixiv上の作品を使ったユーザー同士の2次創作が盛り上がるよう、CCの「改変」に焦点を当てたルールを定める予定。「作者が投稿したキャラをほかのユーザーが描いてもいい」「イラストを使って動画を作ってもいい」「転載してもいい」など、改変の範囲を細かく選べるようにする。

 「pixiv IDがあれば、ネット上の絵描き活動がすべてまかなえるよう、サービス群を構築していく」(片桐社長)計画だ。その第1弾が10月に公開したばかりの手書きイラストサイト「drawr」(ドロワー)で、第2弾はブログサービスになる予定だ。

 drawrは、pixivにイラストを投稿しないような人にも、「イラストは誰でも描ける」と知ってもらう狙いで開設した。イラストに慣れてもらい、今後pixivにも投稿してもらえれば――と考えている。約2万人が登録している。

 pixivのイラストを書籍化したり、DVD化できるようなサービスの提供も検討している。「会社の収入にはつながらなさそうだが、ユーザーの作品を流通に載せたい」(片桐社長)

 有料会員制度も今年中に導入したい機能の1つ。月額300~500円ほど払えば、無料会員よりもイラストが閲覧しやすくなる予定だ。

FacebookとGoogle+に見る友達関係150人限界説

アスキー総合研究所(2011.7.16)

気のおけない友人関係は、150人までが限界だという話がある。
 『友達の数は何人? ――ダンバー数とつながりの進化心理学』(ロビン・ダンバー著、藤井留美訳、インターシフト刊。原題は『How Many Friends Does One Person Need?』)によると、この数はFacebookやMySpaceが盛んな現在でも変わらないという。それは、脳の「大脳新皮質」の大きさによって決まってくるのだそうだ。

【遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論:FacebookとGoogle+に見る友達関係150人限界説】

 FacebookやMySpaceでの友達の数も、だいたいこの平均150人の範囲に収まり、200人以上友達がいるという人はほんの一握りだという。

 もちろん、人間にはさまざまな規模の集団があって、たとえば狩猟・採集社会では、30~50人程度の集団が形成される。一方で、部族全体の規模は500~2500人程度にもなるが、その中間に「クラン」(clan=氏族)という集団がある。狩猟場や水源の共有などはクラン単位で行われ、これの統計的な平均は150人になるという。

 こうした人のネットワークの規模は、3倍の数で同心円的に大きな集団になるとも論じられている。いちばん内側が3~5人の特に親しい友人で、何かあったらすぐ駆けつけてくれるような関係。それが段階を踏むに従って、5→15→50→150といった人数になる。

●Google+は「うわさ話」、Facebookは「告白」!?

 Googleが新しく始めたSNS「Google+」のテスト運用が始まって、あっという間に全世界で2000万人以上が登録、利用している。世界で7億5000万人という会員を擁するFacebookと、このGoogle+との戦いは、いまネットの世界の最大の関心事といっていい。この2つのサービスにはどんな違いがあり、この戦いというのはどんな意味を持つのだろうか?

 GoogleもアピールしているFacebookとの違いは、「サークル」という概念があることだ。Facebookには「友達」という1つのつながりの概念しかなく、友達であるか否かは完全にオン/オフで表現される。「友達かもしれない」というあいまいな状態がないため、米国では一時期、「Unfriend」(友達解除)という言葉が話題になった。

 それに対して、Google+は、ネット上の友達や知り合いをサークルに振り分けるという発想だ。「Google+ってどう使ったらいいか分からない」という声も聞くが、ただの友達仕分けツールなのだと考えると分かりやすい。ちなみに前回のコラムでは「Google+はクラウド時代のトモダチコレクションなのか?」などと書いた。

 友達をそれぞれのサークルに振り分けることで、個々のサークルに向けて発言したり、会話のストリームを眺めたりできるようになる。現実のサークルと混同しそうになるが、まったく異なるのは、他人のGoogle+において、自分がどんな名前のサークルに誰と一緒に扱われているのかは見えないことだ。Google+のサークルは、各人のご都合主義がぶつかり合わない、うまい具合のソーシャルグラフになっている。

 一方、Facebookで「~さんからからFacebookの友達リクエストが届いています」とくると、ちょっぴり緊張が走る。「~さんがGoogle+であなたを追加しました」は、そこまでの緊迫感はない。Facebookが改まって「付き合ってください」と告白される感覚であるのに対して、Google+は「うわさ話をされた」というくらいの違いがある。

 ところで、Google+には、あらかじめ4つのサークルが用意されている。はじめてアクセスしたときに「おやっ?」と思われた人もいると思う。「友だち」「知人」「フォロー中」「家族・親戚」の文字通り“サークル”が画面に現れる。これは、ちょうど『友達の数は何人?』の著者である進化心理学者のいう、友達、知人、あるいはクランなどの集団があてはまるのだろうか?

●日本のSNSなら、いっそ「カワイイ!」ボタンを

 Facebookで驚かされるのは、とにかく利用者に対して「友達」を見つけてつなぐことを、あの手この手で執拗に求めてくることだ。Facebookの画面右側は、さまざまな友達の活動や広告が表示される非常に特徴的な部分だが、ここに「~さんが友達検索ツールを使いました」などとこれ見よがしな情報も表示されたりもする。

 人間にとって「人と会う」ということは、人生のトピックの1つといってもよい。Facebookは、そうした心理的なエネルギーによって活性化されているサービスなのだ。そして、「友達リクエスト」を「承認」すれば、また別な「友達リクエスト」が届くようになる。

 これは何かの感染かチェーンレターのようなものではないかと思えるほどだが、せっせとみんなでFacebookのためのデータ構築を手伝ってあげているという見方もできるだろう。

 仮に友達の数の平均が「150人」だとすると、その150人の完璧なネットワークがFacebookの生命線なのだ。一方、Google+は実名性のあたりなどに少し甘いところがあるが、3倍数で増える5人、15人、50人、150人といったサークルを自在に管理できる。

 いずれにしろこの2社には、150人のリアルな人のつながりというものが見えていると思う。それに比べて、日本のソーシャルメディアは「友達だから手をつないでおこうね」といった遊びの感覚でできている傾向が強いのではないかと思う。

 もちろん、日本と米国では人のつながりも社会のしくみも異っている。Facebookの根底には「父親が息子のガールフレンドの名前を知っている」とか、「ホームパーティなどを頻繁にやるような文化」があると思う。事実、私の知り合いの米国人は、そうしたライフスタイルがいかにFacebookとマッチしているかを説明してくれた。

 それならば日本のSNSは、徹底的に日本の文化に根ざした作りにすればよいではないかとも思う。mixiは、「チェック」とか「イイネ!」とかではなく、「カワイイ!」ボタンを作ればいいではないかと思うのだ。

●「超巨大」から150人の積み重なりへ

 しかしここで重要なのは、もう「Facebookやmixiが人々の生活にどこまで便利でマッチしたサービスを提供しているか」という次元の話ではなくなっているのではないかということだ。友達が「なんとなくつながっている」という話と、「リアルのつながり150人」が完成しているというのは、まるで話が違うではないか。

 FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは、「100年ごとにメディアは変化する」と発言したことがある。100年前というのは、電話やラジオが発明され、やがてテレビが登場した、マスメディア4媒体の時代である。これまでのネット上のメディアも、基本的にはこれの延長上にあったというわけなのだ。

 いまあなたが読んでいるWebページも、いままで紙に印刷していたものを「オン・ザ・ウェブ」化したものといってよい。いままで、新聞や書店などを通して「デリバリー」されてきたものが、電子的なネットワークを通じてPCやスマートフォンの画面で見られるようになったというくらいの違いしかない。

 それが、文字通りSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)から「ソーシャルメディア」と言い換えられたように、150人のネットワークの積み重ねが情報インフラになったということなのだ。発信と受信が同列になることもでき、受信側が「+1」や「いいね!」でその情報の伝達性を上げることもできる。こうした時代が訪れていることについて、Googleも同意したというのがGoogle+なのではないだろうか?

 7月20日(現地時間)、Googleは、「Google Labs」を終了すると発表した。Google Labsには、同社の社員が勤務時間の20%を使って自分のプロジェクトをやってよいというルールから生まれたサービスが多い。この発表がGoogle+と直接関係するかどうかは不明だが、「より重要なプロダクトへの集中」がその目的だというのだ。

 150人のネットワークは、いままでGoogleが扱ってきたような、Google流に言う「超巨大」(very very large)に比べるとえらく小さく見える。しかし、それは150人ごとの小さな世界に対して「正しい答え」をもたらすというメカニズムなのだともいえる。もちろん、これからも検索の価値はあるだろう。しかし、時代が大きくシフトし始めたのだ。Google+対Facebookの戦い、これからどう展開していくのか? 来年春には、Facebookは株式を公開すると言われている。

紙飛行機を電力飛行機にする方法

【ネタ倉庫】ライトニング・ストレージ(2011.7.28)

ミクシィ逆襲の夏 「最後に勝つ」副社長 フェイスブックとグーグルの攻勢に「地場SNS」の意地


日本経済新聞(2011.7.31)

世界最大のSNS(交流サイト)「フェイスブック」の利用者が7億5000万に達した。このままのペースだと、ほどなく世界のネット人口(約20億人)の過半に達する。一方、日本のSNS最大手「mixi」の登録会員は約2300万人。月に1回以上ログインする「アクティブ利用者数」となると約1550万人。チカラ勝負ではどうにも分が悪い。


 「このままだと日本もフェイスブックに支配されて『ゆでがえる』になるよ」「mixiも実名制にして、ビジネスでも利用できるような方向に早くかじを切ったらどうか」……。ミクシィ代表取締役副社長としてmixi事業を取り仕切る原田明典(36)は最近、方々から“叱咤(しった)激励”を受け、参っている。

 ネット人口あたりの普及率が約4%と、日本は世界でもまれに見る「フェイスブック後進国」。それでも、利用者は400万人に達した。今年6月、フェイスブックは位置情報と連動したクーポンサービスを日本で開始。7月末には日本の初心者向けにフェイスブックをやさしく解説するページへの誘導も始めるなど、攻勢を強めている。フェイスブックの風が吹き始めた。

■首都圏など都市部から浸透

 リコーに勤める納富活成(49)はフェイスブックで100人ほどの友人とつながっている。今年春頃から懐かしい仲間が増え始め、中高の同窓約250人のうち約50人がつながった。医者、マスコミ関係、経営者となった旧友と当時を思い出し会話に花を咲かせる。「全員、リアルの知り合いなので、健康や家族関連などプライベートな話も気兼ねなくできるのが楽しい。mixiも使っていたが、今はほとんどアクセスしていません」

 フェイスブック派は、首都圏や大阪といった都市部が中心。新しいモノ好きの「アーリーアダプター(早期適応者)」と呼ばれる属性とも重なる。彼ら彼女らが実名や会社名など素性を明かし、親しい友人のみならず、長らく会っていなかった同級生や旧友をフェイスブックに呼び込んでいる。プライベートだけでなく、会社の同僚や取引先とも次々とつながり、「実名主義」を掲げるフェイスブックを名刺代わりに使い始めた。

 ネットの世界では、あるサービスの利用者がネット人口の16%を超えると爆発的に普及すると言われる。その手前を「キャズム(=普及期への溝)」と呼ぶ。ネット企業のコンサルティングを手がける斉藤徹(49)は「フェイスブック利用者がキャズムを超えている国は、すでに世界120カ国以上。そんなサービスはほかにない。すでに首都圏の利用者ではmixiを逆転していると見られ、日本でもキャズムを超える可能性が高い」と分析する。

 和製SNSの星は、このまま世界王者に飲み込まれてしまうのか。2008年1月、NTTドコモからミクシィに移り、以降、mixi事業のトップとして収益化などに尽力する原田は、意外なほどにフェイスブックを恐れていない。それどころか、余裕の表情すらのぞかせる。

 「確かにフェイスブックのような名刺代わりに使えるSNSは、日本でも、ある程度は伸びていくでしょうね。それは承知のうえ。だからといって、mixiはフェイスブックと同じ方向にはいかない」

■実名か匿名かの議論は「意味がない」

 フェイスブックとmixiは何が違うのか。よく語られるのは「実名か、匿名か」。だがミクシィ社長の笠原健治(35)は「その区分にはあまり意味がない」と言う。原田も「知り合いでもない人とも簡単につながるツイッターとは違い、現実社会の知り合いとつながる『リアルSNS』という意味では、同じ方向を向いている」と話す。ニックネームで利用できるmixiでも、利用者の多くは実際の知り合いとつながっているからだ。

 今年4月、ミクシィが東京大学と共同で行った調査では、mixi利用者のうち7割近くが、SNSの友人関係のうち「半分以上か全員が実際の知り合い」と答えた。3月に調査会社のマクロミルが行ったアンケート結果では、10代のmixi利用者の78%、20代前半の70%が「実名か、あるいは友人が見れば分かる名前で登録している」と答えている。うち約半数が実名登録。若年層ほど実名への抵抗感は薄まっている。

 では、両者の違いは何か。原田いわく「会社の同僚とか、取引先とか、知り合いではあるが、親密ではない人たちとも全部つながっちゃうのがフェイスブック。mixiが目指すのは、本当の友達とつながる居心地のよい空間。そのために実名制が必須かと言うと、そうではない」

実名登録が約束のフェイスブックでは、検索すれば簡単に知り合いのページを見つけることができる。いわばアドレス帳。友人登録を済ませた相手の友人のリストも実名なので、友人関係が増えるほど知り合いが見つかる確率は高まる。友人登録の申請は拒否することもできるが、現実社会の知り合いを拒否する人は少ない。

 だからこそ広くつながることができ、便利だとも言える。だが、それでは「居心地が悪くなってしまう人もいる」とミクシィは考えている。



 言い換えれば、建前のフェイスブックに対して、本音のmixi。ミクシィは、建前の世界でフェイスブックと戦おうとは最初から思っていない。「本音で話せる世界だからこそ、活性化するコミュニケーションがある」と原田は言う。「mixiからすると、すでに逃していたユーザーというか、mixiから離れていってしまっていたユーザーが今、フェイスブックにいっている。べつに、mixiのユーザー数が減っているわけではないんですよ」

 今年2月、ログインしてmixiを実際に利用した「アクティブ利用者」は1455万人だった。3月は1537万人と大幅増。投稿数も7億6000万件と前月の5億9000万件から急増した。東日本大震災を機に、mixiの利用者が安否を確かめ合い、被災地の情報を共有したからだ。震災直後は1日あたりの利用者数が過去最大を記録し、その後も活気は持続。翌4月は若干落ち込んだものの、5月は利用者数が1547万人、投稿数が8億4000万件と、ともに3月を上回った。

■今夏以降、大幅な機能強化も

 しかし、内輪のプライベートな空間ではなく、パブリックなフェイスブックを好む層が少なくとも数百万人いることは事実。そうしたフェイスブック利用者の多くはmixiのアカウントも持っているが、今では離れてしまっている。であれば、利用者自身が選択したうえで、パブリックな使い方もできるようにするという選択肢はないのか。そう問うと原田は一蹴した。

 「mixiの利用者はもうある程度、居心地のよい空間を作っているので、今さらフェイスブックの方向と混在させるようなことはできないし、持ってるプロダクトのポテンシャルにも、開発リソースにも限界がある。それに、先行者をマネして後発がうまくいったネットサービスなんてないですよ。mixiはクルマに例えれば(トヨタ自動車の小型車)『ヴィッツ』みたいなもので、手軽に女子でも運転できるオートマ。生活に適したコンパクトなSNSを求めていく。むしろ親密な空間としてのSNSを育ててグローバルへ出て行く方が、よほど成功の可能性があると思っています」


 ミクシィ幹部が抱く逆襲の夢。同じリアルSNSでも中身にこだわり、今伸びている市場は捨てる覚悟。それで勝てる自信はあるのか。原田はこう明言する。

 「正直、自信はある。最後には勝ってやろうと思っている。世界で最終的に求められるのは、(建前の)名刺ではなく、居心地。人は毎日パーティーにいかない」

 そうは言っても、フェイスブックの伝播力は侮れない。

 日本でも利用者数でmixiを上回った時、そこに自分の友達がいれば、フェイスブックへの乗り換えが一気に進む可能性も出てくる。フェイスブックが数を制圧した時、mixiが進めてきた方向と同じ戦略を強化することも考えられる。手立てはあるのか。そう突っ込むと原田はお茶を濁した。

「自信があると言うとホワイ、ホワイと攻められるので、あまり言わないようにしてるんです。根拠を全部言いたいのですが、これから出す機能や戦略がばれてしまうのも嫌なので。だから、今は取材もあまり受けるべきではないと思っています。社員も自信を持っている。離職率を調べてもらえば分かりますが、数十人いる主要な技術者のうち、数人くらいしか辞めていません」

 周辺取材をすると、ミクシィが8月と9月に大きな機能追加やサービスの改善を予定していることが浮かび上がる。ミクシィの言うコンセプトの違いやメリットがネットに詳しくない人にもはっきりと分かる形にしていくようだ。

 「フェイスブックのおかげでやっと『リアルSNS』ってどういうものかが理解されつつある。ここから、ミクシィの言う『カジュアルでイージーなSNS』って何なのか、はっきりと説明がつくよう、プロダクトで見せていきます」。原田はこう語るにとどめた。

■米グーグルの参入で競争激化

 企業規模で見れば、フェイスブックとミクシィは巨象と小動物くらいの差がついている。ここに、もう1つの巨象が参戦しただけに、ミクシィの行く末を憂う者が増えるのも無理はない。

 フェイスブックは7月6日、ネット電話大手「スカイプ」と提携し、テレビ電話サービスを始めると発表するなど、ネット上のあらゆる機能やサービスを取り込みつつある。その中身は外部から検索することができない。「すべての情報を整理し、検索できるようにする」ことで巨額の広告費を手にしてきた米グーグルは6月、自前のSNS「Google+」を投入し、対抗姿勢を明らかにした。



グーグルが始めたSNSサービスの画面=ロイター
 フェイスブックと同じ実名制を敷くが、投稿する対象を簡単に振り分けることができる「ゆるさ」が目玉だ。例えば同僚や上司には見せず、親友と呼べる間柄にだけ公開することができる。フェイスブックでも友人関係のリストを分けて公開の範囲を絞ることは可能だが、「面倒」という声が多い。

 Google+では、フェイスブックのように相手の承認を得なくとも友人関係とすることができ、ミニブログのツイッターのように非対称で関係が構築されていく。だが利用者は、公開範囲を簡単に設定することができるため、投稿の内容に応じて都合のよい相手にだけ伝えることが可能というわけだ。つまり、建前と本音を使い分けることができる。

 ただ、これも原田は「コンセプトがぶれている」と気にとめない。じつは、公開範囲を簡単に設定できる機能は、SNSとしては初めてmixiが08年に導入している。SNSの機能として先を行っているこの部分を、今夏以降、ミクシィは我流で強化すると見られる。

 今年6月、ナイキジャパンとミクシィの子会社が共同で行った新たな「ソーシャル広告」は、大きな成果を出した。色やデザインを自分なりにカスタマイズしたシューズやバッグの画像が、マイミクのページのバナー広告に表示されるというキャンペーン。クリックされる割合がパソコンでは通常のバナー広告の約11倍、モバイル端末では約16倍という結果が出たという。

 ナイキは「私たちの想像を上回る素晴らしい結果を生み出すことができました。商品サイトへのアクセス数はほぼ2倍になり、カスタマイズ対象の商品は期間中、日本の売り上げが全世界でトップレベルに躍り出ました」とコメント。原田は「恐らくフェイスブックはこの取り組みにヒントを得て、何かをやってくる」と話す。しかし、それよりさらに先を行くべく、ソーシャル広告に関する新展開の準備も急ぐ。

 SNSを使ったモバイル向けゲームでは、国内で大成功したディー・エヌ・エーやグリーも海外進出を試みており、日本のSNSは世界の先端を行くという見方もある。ミクシィは昨年、中国と韓国のSNS大手と提携、開発やSNSの連携などで共同戦線を張った。その具体的な成果も待たれる。和製の意地を見せることができるか。まずは今夏の動きが試金石となりそうだ。

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オンナゴコロコロ(2009.4.20)

糞便臭を良い香りに変える?! シキボウなどが新繊維を開発 おむつカバー用として売り込む


http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110803/rls11080317440000-n1.htm(2011.8.3)

シキボウは3日、山本香料(大阪市中央区)と共同で、糞(ふん)便臭を良い香りに変える消臭加工繊維「デオマジック」を開発、来年春にも発売すると発表した。悪臭を別の香りで覆う従来手法ではなく、悪臭を香料に混ぜ合わせ、さらに良い香りに変化させる発想から生まれた新繊維で、高齢者のおむつカバー用繊維などとして売り込む。

 新繊維は、何十種類の香料をブレンドして作る香水が、あえて糞便臭のような不快に感じられる成分を少量含ませ、それらによって香りをマイルドにさせていることをヒントにした。両社は糞便臭を加えて香料のにおいがさらに良くなる調合の研究を進め、1年間かけて「草原のようなさわやかな香り」(山本香料の山本芳邦社長)を開発。その香料をマイクロカプセルに詰め込んで繊維に付着させた。

 新繊維は10回程度洗濯すれば消臭効果が小さくなるため、同じ成分の香料スプレーの商品化も目指す。新製品では「糞便臭がほとんど感じられない程度」(シキボウの辻本裕開発技術部次長)まで消臭でき、シキボウで介護や病院、ペット用の繊維など「糞便臭が気になる用途」への展開を目指す。

 価格は一般の繊維より約2割高くなる見通し。初年度1億円、発売3年目に3億円の売り上げを目標にしている。

実店舗で確認して、アマゾンで購入......なライフスタイル

【ネタ倉庫】ライトニング・ストレージ(2011.8.8)

Amazonの安さを知ってしまったので、これからは「ヨドバシカメラやビックカメラで実機を確認してAmazonで購入する」という実店舗を構えている電化店にとっては迷惑極まりない購入習慣がついてしまいそうです。

書店ではすでにそういうことが起こってそう。「書籍を持って帰るのが面倒だから内容の確認を店頭でして、購入を帰ってからAmazonでする」という行動習慣がついている人がいそう。

世界初の半導体メモリー製造でたんぱく質を立体化 奈良先端科技大

産経ニュース(2011.8.8)

肝臓などに含まれ、鉄を貯蔵するたんぱく質「フェリチン」を使い、半導体メモリーをナノ(10億分の1)メートルサイズまで超薄型化することに成功していた奈良先端科学技術大学院大学の浦岡行治教授(半導体工学)らの研究グループが、さらにフェリチンのナノ粒子を立体化して積み重ねることに世界で初めて成功したと発表した。

 立体化することで密度が上がり、半導体メモリーの機能が飛躍的に向上。普及が進むスマートフォンなどへの応用が期待できるという。

 研究グループは、フェリチンでサイズの均一なナノ粒子を作製。さらにアミノ酸分子「ペプチド」を使うことで、ナノ粒子を半導体メモリーのシリコン基板上に立体的に積み重ねることに成功した。

 通常の半導体メモリーの製造工程では、約1千度の熱処理が必要だが、研究グループの開発したフェリチンを使用したバイオ技術では、室温程度の低温で製造することが可能。

 熱に弱いプラスチック基板にも利用できるため、将来的にはスマートフォンなどへの応用が期待されるという。

フェイスブックは反面教師!?「グーグル・プラス」の後発メリット

ダイヤモンド・オンライン(2011.8.12)

グーグルが新しく発表したソーシャルネットワーク・サービス(SNS)、Google+(グーグル・プラス)が破竹の勢いでユーザーを増やしている。

 公開された6月末からおよそ1ヵ月経った8月初めの時点で、登録ユーザー数は2500万人。フェイスブックの7億5000万人にはもちろんかなわないが、こちらのほうは7年かかっての数字だ。

 しかも、グーグル・プラスは、まだ招待制の試行運転期間中にすぎない。それでも話題性も好感度もかなり高く、このぶんでは年末までにツイッターを超えて、フェイスブックに迫る第2のSNSに躍進する可能性もある。

 迎え撃つフェイスブックは、初めて現れた強敵を前にして、明らかに焦燥感を募らせているようだ。グーグル・プラスがスタートして以降、スカイプと提携してビデオチャットを取り込んだり、中小企業向けのサービスを発表したりと大忙しである。グーグル・プラスが短期間でこれほどの人気を集めるとは、予想していなかったのだろう。

 グーグル・プラスの機能はすでにあちこちで報じられているので、ここでは詳述しないが、約めて言えば、以下の三点が大きな特徴だ。

 ひとつは、交友関係やネットでフォローしたい人々を自分なりの名前をつけて分類できる「サークル」という仕組みがあることだ。フェイスブックならば、友達かそうでないかという区分が重要だったが、グーグル・プラスではあらゆる人々を取り込み、「友達」「同僚」「得意先」「ゴルフ仲間」といったサークルに分類できる。

 第二の特徴は、その自分のサークルに取り込む際に相手の承認が必要ではないことだ。相手には、サークルに入ったことだけが伝えられるが、どんな分類になっているのかまでは知らされない。また相手がその人物をフォロー仕返すかどうかも自由だ。

 第三の特徴は、コミュニケーションのためのツールが充実していることである。書き込み以外にも、多方向のビデオチャットやテキストメッセージングができるが、それをサークル内だけ、あるいは複数のサークル、特定のユーザーだけといった具合に、公開する範囲をフレキシブルに設定できる。

 これら3つの点は、ある意味、当たり前のことに聞こえるだろうが、こんなSNSがいままでなかったのだ。

 しかし、グーグル・プラス躍進の理由を、機能面だけで語るのは間違いだ。競争環境がグーグルに味方している点にも着目すべきである。

 SNSの世界には現在、3つの強者がいる。友達関係のフェイスブック、仕事やキャリアのネットワークを広げるリンクトイン、そしてあらゆる人々を相手にするツイッターだ。

 インターネットサービスの世界ではこれまで、最初にサービスを始めたものが市場を制するという経験則があった。新しいサービスでユーザーを一定数まで増やし、ユーザーを自分たちのサービスにすっかり慣れ親しませることで参入障壁を築く。先行するサービスは、新しい要素をどんどん加えながら、ユーザーを堅く囲い込んでいく。

 さて、この論理だと、SNSの競争環境はグーグルに不利ではないかと思われるかもしれないが、こうも言える。SNSの世界はまだ三国志の時代であり、天下統一はなされてない。しかも、グーグルにとって、ラッキーなことに、最大の強国であるフェイスブックに、民の不満が募っている。

 周知のとおり、フェイスブックの設定は「オプトアウト型」が中心、つまりユーザーが注意して外さないと、プライバシー情報が公開されたり共有されたりしてしまうことが多い。しかもその設定をころころ変えるので、ユーザーに極めて評判が悪い。

 フェイスブックからすれば、ユーザーデータの価値を高めて、高い値段で売るためにそうしているのであり、ビジネスのために必要なことだというだろう。ユーザーがプライバシー情報を公開すればするほど、そしてフェイスブックの中で「あれを買った」「ここへ行った」といった情報を友達と共有すればするほど、そのユーザーの行動データは増えていき、それがデータブローカーや広告業界に高く売れるのだ。むろん、グーグル・プラスもユーザー情報を集めるだろう。ただ、今のところ、グーグル・プラスのプライバシー設定については、フェアとの評価が多い。

 また、グーグルは、“3強”の特長のすべてを網羅できる点も有利だ。先ほど述べたとおり、グーグルのサークル機能は友達や仕事関係にそれぞれ対応できる上に、オープンにフォローしたりされたりすることも可能だ。また、リンクトインが企業に提供しているような人材探しのようなサービスも近く加える計画だと報じられている。

 もちろん、インターネット検索の雄グーグルも、これまで開発した新しいサービスのすべてを成功させてきたわけではない。鳴り物入りで発表したものの、ひっそりと消えていったサービスは多く、その中には「バズ」という別のSNSもあった。しかし、人々のインターネットへの入り口が検索からSNSへ移り変わる中、グーグルは今回、後発としての謙虚さを持って、再参入してきた。これは、大きく化けるかもしれない。

地球に落ちていく流れ星…ISSから撮影


Yomiuri Online(2011.8.17)

米航空宇宙局(NASA)は、国際宇宙ステーション(ISS)から撮影したペルセウス座流星群の写真を公開した。

 流れ星を宇宙から見下ろす角度でとらえた写真は珍しいという。

 古川聡さんらと一緒にISSに長期滞在中の米国のロナルド・ギャレン宇宙飛行士が13日、毎年8月に到来する同流星群を撮影した。写真には、地球表面の大気に突入する際に明るく輝く流れ星が写っている

厚さ数十ミクロンの薄膜で植物を育てる技術を東京のMebiolが開発

TechCrunch(2011.8.16)

日本からまた、驚きの技術。東京のMebiolは、薄膜を使用する植物栽培技術…その名をImec…を開発している。植物が、土壌ではなく薄いフィルムの上で生育するのだ。そのフィルムはヒドロゲル(hydrogel)と呼ばれる吸水性の素材から作られ、厚さが”数十ミクロン”しかない。

Mebiolによれば、トマト、ラディッシュ、キュウリ、メロンなどなどは、これまでの栽培技術に比べて水の必要量が80%少ない。1グラムのSkyGel (そのヒドロゲルの商品名)が、100mlの水を吸収する。土壌と違って、バクテリアやウィルスが植物を害する機会がない。もう一つのアドバンテージは、SkyGelが、砂、コンクリート、氷など多様な面の上で使えることだ(近年の利用例がこのPDFに)。

同社によれば、フィルムは交換までに2〜3年は植物の栽培に使える。

東京のDiginfonewsが撮影したこのビデオは、より詳しい情報(Imecの利点と不利)を提供している

誰もが陥っている“その場しのぎ症候群”の処方箋

ITmedia エグゼクティブ(2011.8.22)

 企業人、誰にも覚えがあろう。毎日毎日が忙しくて忙しくて、こなしている仕事で雑用が多く、しかもどうも自分で選択したというより、他から与えられて、あるいは押し付けられて余儀なくやらざるを得ないトラブル処理や、会議出席などに振り回され、限られた時間の中で、一見テキパキ処理しようが、悩み苦しんで処理しようが、結局は「その場しのぎ」で切り抜けている。

 偶然できたつかの間の空白の時間、しかもごく短時間にホッとして机に座って書類を処理して、それがあたかも本来の仕事をしている錯覚に捉われ、それさえ叶わぬときは自宅に書類を持ち帰り、あるいは休日に出てきて書類を処理する。本来は「その場しのぎ」を脱するための根本策を講じなければならないのに、精神的にも肉体的にも疲れ果てて、そこまで思いが及ばない、いや少なくとも手が付かない……というわけだ。

 この状態を放置しておいてよいはずがない。放置すれば、いろいろな問題が深刻化する。

 ロジャー E.ボーン教授(カリフォルニア大学)も、その研究成果の中で指摘している(「Diamond Harvard Business Review」=「DHBR」May 2011. 「その場しのぎ症候群から脱する法」西尚久訳、本記事のタイトルはここから一部借用)。R.E.ボーン教授によると、企業では問題が次々と発生し、対処する時間が不足することが常態化している。問題を放置するよりも「その場しのぎ」でも手を打った方がよい場合もある。

 しかし、「その場しのぎ」による悪影響は、仮に問題が解決してもシステマティックな解決よりも時間を要し、生産性が著しく低下し、不充分どころか間違った解決をもたらし、最悪の場合は製品の市場回収や工場の操業停止、有能な人材の疲弊による退職など、本来業務の経営資源まで食いつぶすことである。

 なぜ「その場しのぎ症候群」が多くの企業で発生し、しかも常態化しているのか。

 企業の実態を若干分析してみよう。大手エレクトロニクス・メーカーA社のB生産管理係長の例だ。よくもまあ毎日毎日、問題が次々と発生するものだ。製品の納期問題が、最多だ。購入資材や外注部品の納入遅れ、治工具や型などのトラブルによる製造工程の遅れ、顧客からの短納期品の飛び込み受注などにより、製品納期遅れが発生する。それに伴う生産計画変更が必要だ。さらに製造ラインを遊ばせる事態になると、製造班長や係長から猛烈な突き上げを食らう。

 火消しのため東奔西走の活躍だ。しかしB係長は、資材や外注部品の恒常的遅れに対する根本的解決策や、頻発する短納期飛び込み受注に対する営業との背景分析や根本策などの手を打たなければならないと時には思いつつ、いつも時間がない。むしろ、その場しのぎの手を打って事態が一段落するたびに、一種の達成感さえ味わった。

 次は、設計の例だ。中堅健康機器メーカーC社のD設計課長は、毎日時間に追われていた。まず、C社ではプロフィットセンターが設計部署になっているので、担当部門の業績結果はD課長の最重要課題だ。予算収益未達成が予想されると(大体未達成が多い)、D課長はその原因究明と対策で多大の時間を取られた。製品改良や新製品開発の推進も必要だ。さらに、多くの会議の膨大な資料作成があり、ほとんどの場合設計部署責任で作成する。合間を縫って、関連部署からの問い合わせに対応したり、多くの会議に出席する必要がある。

 ある時トップから、健康機器のある電気部品を価格低減の目的で、国産からドイツ製に切り替える検討をするよう指示された。該当電気部品のテストが必要だ。Dは担当者Eに指示した。指示されたEは、これまた毎日時間に追われていた。該当電気部品について、メーカーからの性能データの裏づけをするテスト指示書を出した。彼も、相談を受けたD課長も、トップ指示でもあり、その程度のテストで何とかなると安易に考えた。

 2年後に、市場で該当健康機器の出火事故が発生した。ドイツ製電気部品の耐用試験がC社ルールに厳密にのっとらず、甘かったのだ。「その場しのぎ」の付けが回った。

●その場しのぎ症候群の症状

 R.E.ボーン教授は、次のうち3つ以上の症状が見られたらその場しのぎ症候群に陥っていると指摘する。これは、その原因とも解釈される。(1)すべての問題解決の時間がない、(2)おざなりの解決だ、(3)問題が再発しエスカレート、(4)ことの重要性よりも緊急性が優先、(5)小事が大事に発展、(6)パフォーマンスが下がる。しかし、これらは単なる現象の羅列だ。

 「その場しのぎ症候群」の原因は、上記実態例でも示唆されているように、

 (1)「その場しのぎ」でむしろ充実感さえ味わい、結果的にこれでよしの認識に陥っている、

 (2)「その場しのぎ」が習い性になってしまい、例えば部長・課長・係長共に大きな問題が発生した際には部下に任せていた中小問題について、大きな問題がない時につい手を出してしまう、

 (3)あまりにも時間に追われるため、根本対策を考えて実行する発想が頭から消えている、

 (4)そして何よりも、「その場しのぎ」が社内認知されているということだ。

 さて、「その場しのぎ症候群」の処方箋だ。R.E.ボーン教授提案の処方箋を一部参考に、次の処方箋を提案する。

 (1)問題に優先順位をつける(R.E.ボーン:一部の問題は放置することを覚悟の上で、問題発生時点で問題を取捨選択する)。これは、軍医学からの応用だというところが面白い。

 そんなこと当たり前だ!と言われそうだが、現実には問題が起こるはなから手を付けているので、謙虚に反省すべきだ。原因でも触れたように、発生した問題の重要性に無関係にとにかく食らいつくことを止めることだ。辛いことだが、中には放置する覚悟が要る。

 「放置」できる1つの根拠はある。しばしば指摘されることだが、P.F.ドラッカーも主張する、「「企業は、自然現象ではなく社会現象である。そして社会現象は正規分布しない。つまり社会現象においては、一方の極の10%からせいぜい20%というごく少数のトップの事象が成果の90%を占め、残りの大多数の事象は成果の10%を占めるに過ぎない」(P.F.ドラッカー「創造する経営者」ダイヤモンド社)。

 (2)問題をグルーピングして、まとめて根本的に解決する。上記A社の例で部材納入遅れや短納期飛び込み受注などは頻繁に発生するが、グルーピングして根本解決すべきだろう。

 (3)「その場しのぎ」に報奨を与えない(R.E.ボーン:最悪の窮地から組織を救った人は英雄視される。しかしその人は、問題が発生した時にはどこで何をしていたのか。何故問題が大きくなる前に、先手を打って行動しなかったか)。確かに陥りがちな罠は、「その場しのぎ」で縦横無尽の活躍をする者をつい優秀な人材とみなし、評価してしまうことだ。それでは、「その場しのぎ」は決して無くならない。

 (4)さて、最も根本的な処方箋だ。まず大前提として、何が何でも「その場しのぎ症候群」を根絶するのだという強い意志を全社に浸透させ、企業文化として定着させなければならない。それをブレークダウンして示せば、

 ・「その場しのぎ」は罪悪であるという認識を社内に植えつけ、社長方針に明記し、あらゆる機会に経営者はそれを復唱する。さもなくば、「その場しのぎ」人は「やり手」と誤解され、本人も間違った充実感を持つからだ。これは、経営側の課題だ。

 ・「その場しのぎ」に参画しないと、疎外感さえ持つ。その「その場しのぎ」習い性から、意識的に脱出する努力をする。中小問題を振り切る冷たさと思い切りを持ち、空いた時間で根本策を練る努力をすべきだ。これは、その場しのぎ実行側の課題だ。

 ・「その場しのぎ」の実績を「登録」し、その後フォローアップして根本策を実施したという「報告」を義務付ける制度と、それを監査するシステムを整備する。

 「その場しのぎ」は火消しとして避けられないだろうし、大火に至る危険があるから認めざるを得ない必要悪だが、根本策でフォローアップすることを義務付けることが必要だ。

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