2014年7月24日木曜日

GmailとGoogleカレンダーのデータダウンロードがようやく可能に

ITmedia(2013.12.6)

 米Googleは12月5日(現地時間)、「Googleカレンダー」と「Gmail」のデータをダウンロードできるようにしたと発表した。Googleカレンダーは同日から、Gmailは向こう数カ月中に“ローリングアウト”する。
 同社は2009年にユーザーデータの完全開放を目指すサイト「Data Liberation」立ち上げ、様々なサービスのデータのエクスポートを可能にしてきたが、GmailとGoogleカレンダーはユーザーからのリクエストが多かったにもかかわらず、これまでできなかった。
 データのダウンロードは、Googleのサービスのページ右上に表示されているアカウント名をクリックして表示される「アカウント」→「自分のデータをダウンロード」→「アーカイブを作成」で行える。
 Gmailはすべてのデータあるいは指定したラベルのみをダウンロードできる。ファイル形式はmboxなので、米MicrosoftのOutlookやMozillaのThunerbird、米Appleのメールなど、一般的なメールクライアントにインポートできる。
 Googleカレンダーもすべてのデータあるいは指定したカレンダーのみをダウンロードできる。こちらのファイル形式はiCalendar(ICS)。

2014年6月13日金曜日

ubuntu 14.04にjavaをインストールする方法

ubuntu 14.04にjavaをインストールする方法は以下の通り.

(1) Software Center から Developer Tools の Java の OpenJDK Java 7 Runtime
  をインストール

(2) sudo apt-get install openjdk-7-jdk を実行する.

(3) .bashrcにJAVA_HOMEを以下のように追加する.
  JAVA_HOME=/usr/lib/jvm/java-7-openjdk-amd64
  export JAVA_HOME

(4) source .bashrc で変更を反映する.

(5) java -version でjavaがインストールされているか確認する.

(6) javac -version でjavacがインストールされているか確認する.

■ 参考サイト
Ubuntu に OpenJDK をインストールしてみたよ。コマンド1つで簡単インストール

ubuntuでapt-getコマンドをproxy経由で実行する方法

ubuntuでapt-getコマンドをproxy経由で実行する方法は,以下の通り.

(1) .bashrcに以下の内容を追加する.
  export http_proxy="http://プロキシ名:ポート/"
  export https_proxy="https://プロキシ名:ポート/"
  export ftp_proxy="ftp://プロキシ名:ポート/"

(2) source .bashrcで変更内容を反映する.

■ 参考サイト
Ubuntu-Proxy設定

cygwinでjavaのクラスパスを通す方法

cygwinでjavaのクラスパスを通す方法は以下の通り.

(1) .bashrcにlinuxと同じようにクラスパスを記述する.
  CLASSPATH=.:~
  CLASSPATH=$CLASSPATH:/usr/local/lib/hogehoge.jar
  export CLASSPATH

(2) source .bashrc で変更内容を反映する.

(3) echo $CLASSPATH でクラスパスが通っているか確認する.

(4) javacにクラスパスを以下のように記述する.
  javac -cp "$(cygpath -pw "$CLASSPATH")" hogehoge.java

  # -cp は,-classpathの略
  # cygpath は,linuxのパスをwindowsパスに変換するコマンド

(5) java -cp "$(cygpath -pw "$CLASSPATH")" hogehoge

■ 参考サイト
徒然学習録.net

Parallels desktop 9 にubuntu 14.04 をインストール

Parallels desktop 9にubuntu 14.04をインストールすると,解像度が低くランチャーが表示されません.

以下のサイトに解決方法が掲載されていました.

■ 参考サイト
Parallels 9 上で Ubuntu 14.04 を動かす

非常に助かりました.ありがとうございました.

2014年6月9日月曜日

Googleの新たなイノベーション – 検索、モバイルに続く一手とは?

SEO Japan(2014.6.9)

Googleといえば今や単なる検索サービス企業から、世界最先端技術企業のイメージを多くの人に持たれていると思います。Google Mapのような革命的な地図サービスに始まり、自動車操縦のオートメーション化、そして最近では東大発のロボット企業やドローン技術の買収でも注目を浴びています。検索サービスからスタートし、今やデジタル領域で最大手の広告プラットフォームとなったGoogleが何故、このような最新技術に興味を持っているのでしょう?その背景にあるGoogleが目指す新たなイノベーションをカリスマ的存在のデジタルマーケッターとして知られるミッチ・ジョエルが考える。 — SEO Japan
検索エンジンが、ロボット & ドローン(自動操縦機器)を開発する会社の買収に走るのは、正常だろうか?
プロのマーケッターなら、Googleのここ数年の活動に首を傾げているはずだ。検索エンジンとして地位を確立した(そして、広告プラットフォームを最適化し、3500億ドルの時価総額を持つまでに成長させた)企業が、生まれたばかりの、未来志向のテクノロジーに資金を投入することを理解するのは容易ではない。広告、そして、ソフトウェアのライセンス事業から主に収益を得ているGoogleに対して、ロボットや自動操縦機器は、どのように関わってくるのだろうか?

■ Googleのイノベーション 第一期

Googleは、劇的なイノベーションを2度経験している(この2つのイノベーションの間には、多くの同様のイノベーション、そして、小規模なイノベーションが行われていた)。まずは、Googleが検索を極めた、第一期を理解することが重要である。「検索」は、決まった形を持たず、インターネット上で作られた、様々な相違するデータ、コンテンツ、そして、情報を整理する能力そのものである。これには、プログラムから記事に至るまで、あらゆるアイテムが含まれ、(数年の歳月を経て)Google検索なしでは、何かを探す(思い出す)ことなど想像出来なくなるほど進化していった。当然ながら、検索には、世界の情報を整理するだけでは、莫大な収益を得られないと言う問題がある。Googleは、キーワードベースの広告を発明したわけではないが、間違いなく、このアプローチを極めたのはGoogleである。パフォーマンスベースの広告の時代を導いたGoogleは、検索エンジンマーケティングを、最も効果が高い広告の形式に数えられるほどまでに成長させたのであった。つまり、コンテンツを検索するユーザーに、検索のUXを妨げない、コンテキストをベースとした広告が表示される仕組みである。さらに、消費者が広告をクリックした(つまり、興味を示した)場合のみ、料金が発生する入札ベースを採用し、広告をブランドやメディア企業に販売するようになった。数年を経て、Googleは、オファーを従来のバナー広告の代わりに、このタイプの広告の表示を望む個人のウェブサイトにまで、販売を拡大していった。その後、Googleは、GDN(Google Display Network)を構築するべく、戦略的な買収を行っていった。2006年のYouTubeの買収もまた、Googleの第一期イノベーションにおいて、大きな意味を持っていた。その数年後、TrueViewによって、消費者が視聴している広告(そして、スキップしている広告)を学習する試みが行われ、オンライン動画で有効なCMのタイプを理解することが可能になった。数年以内に、TrueViewは、キーワードと同じように、効果的なパフォーマンスベースのCM広告へと成長する可能性を秘めている。Googleがウェブを席巻した第一期を大局的に見るなら、comScore Media Metrixによる2014年2月のデスクトップのウェブサイト Top 50ランキングをチェックすると良いだろう — 2億2200万人を超えるユニークビジターのうち、Googleのウェブサイトは、1億8700万人以上のユニークビジターを占めていたのであった。

■ Googleのイノベーション 第二期

2006年、Googleは、Androidと呼ばれる、当時知名度が低かったモバイル OSを買収した。当時、メディアの専門家は、この買収に当惑していた。しかし、Androidの買収は、大胆な行動ながら、モバイルの分野で大きな勢力を得る原動力となった。現在、Googleは、モバイル対応のプラットフォームでアプリを構築するだけでなく、モバイルの接続が行われる実際のプラットフォームを運営するようになっている。 消費者がデスクトップのPCとラップトップから、スマートフォンとタブレットに移るにつれ、Googleは、モバイル業界にイノベーションを与え、手中に収めるようになった。Apple、そして、爆発的な成功を収めたiPhoneとiPadとの互角の戦いも忘れてはならない。それでも、Android(そして、Androidを支えるGoogleのアプリとモバイルウェブサイト)は、モバイルで一大勢力を形成している。事実、comScoreが2014年2月の米国のスマートフォン加入者シェアを調べた結果、Googleが占めるモバイルウェブの割合が明らかになった — スマートフォンメーカーとして1位に輝ているのはApple(41.3 %)だが、Androidは、スマートフォンプラットフォームにおいて、52%のシェアを獲得して、1位を獲得している。さらに衝撃的なのは、スマートフォンの閲覧およびアプリのオーディエンス全体の90%近くがGoogleのサイトで占められている点である。要するに、Googleはモバイルも制しているのだ。

■ Googleのイノベーション 第三期

Googleのような企業は、どのように業績を伸ばしていくのだろうか?事業の規模を拡大する機会は、減りつつある(3000万人が新たに特定のアプリを利用したところで、Googleが急激に成長するわけではない)。その答えは、現在、インターネットを利用していない人達をネットに結びつける取り組みである。珍しいことではない。デジタルの分裂は、ずっと前から議論の対象になっていたはずだ(持つものと持たざる者の間に存在する溝)。事実、Googleのエリック・シュミット会長は、ビジネス書「The New Digital Age – Reshaping the Future of People, Nations and Business」(新たなデジタルの時代 – 人、国、企業の未来の再建)(Googleの職員、ジョレッド・コーヘン氏と共同で執筆)の中でこのトピックを詳しく取り上げている。インターネットに接続していない人達が50億近く存在する。(現時点で)「スマート」もしくは「オンライン化」されていない機器は無数にある。Googleは、この規模に狙いを定めなければならない。そのため、イノベーションを無人操作機、ロボット、そして、人工知能に集中させているのだ。無人操作機(ドローン)は、この最後のネット非接続地域にインターネットを提供する力をGoogleに与える。ロボットは、機械が動き、考え、そして、人間の介入をある程度必要としない状態で、働くことが出来ると言うアイデアに基づいている。それには、機械学習機能をベースとする新しいタイプの演算コードと構造が必要になる(コンピュータをプログラミングして、別のコンピュータに対して、命令を下し、この作業を継続することで、改善され、さらに多くの命令を与えることが可能になる)。先日のドローンを開発するTitan Aerospaceの買収、あるいは、ここ数年の8社(あるいはもっと多く)のロボット開発を行う企業(あの有名なBoston Dynamicsもその一つ)に対する買収に大きな注目が集まっているものの、1月下旬にGoogleがDeepMindを買収した理由は十分にクローズアップされているとは言えない。

■ コンピュータを賢くする

Googleは、DeepMindの買収に5億ドル近い資金を投入したと報じられている(と言っても、割と最近、Nestの買収に30億ドル以上を投じていたため、あまり大きな金額には見えないかもしれない)。DeepMindは、買収時には、無名であったが、このロンドンを拠点に活動するテクノロジー企業は、コンピュータが、人間のように学習し、動くことが出来るように支援する人工知能を開発していたと言われている。この人工知能、ネットに接続するデバイスを増やす取り組み、そして、無人操縦機とロボットの買い取りを考慮すると、想像は膨らむ一方である。マーケッターの観点では、奇妙であり、Googleのイメージとはかけ離れているように見えるものの、視野を広げることを厭わない考えを持っているなら、Googleが、ビジネスモデルをメディアに依存するのではなく、テクノロジーと世界を結びつける取り組みに関心を寄せていることは、容易に想像がつくはずだ。企業にとっても、この点を理解することは重要である。もしかしたら、今後のマーケティングでは、単純に、投じる広告費を効率良く利用することではなく、Googleの後に続き、よりグローバルなレベルで、テクノロジーを通じて、より大勢の人達に接触する取り組みが、成功を左右する可能性がある。

筆者について:ミッチ・ジョエルは数々の受賞歴を誇るカナダ発のデジタルマーケティング/コミュニケーションエージェンシー、Twist Imageの代表です。2008年にはカナダで最もソーシャルメディア上で影響力のある人物、そして40歳以下で最も有名な40人の一人、さらに世界で最も影響力のあるオンラインマーケッター100人の一人に選ばれました。著書である「Six Pixels of Separation」(Grand Central Publishing – Hachette Book Group)は、ビジネス/マーケティング書として英語圏で大ベストセラーになっています。ミッチのブログはこちらから。

この記事は、Six Pixels of Separationに掲載された「Google’s Third Wave Of Innovation」を翻訳した内容です。

2014年5月30日金曜日

算数・数学つまずきの分類

算数・数学のつまづきやすいポイントを16分類した表


■ 参考サイト
誰もがどこかでつまずいた→小学校の算数から大学数学まで126の難所を16種類に分類した
算数・数学つまずきの分類

Parallels Desktop上のWindowsでUSキーボードから日本語入力切替

Parallels Desktop上のWindowsでキーボードから日本語入力を切替る場合,デフォルトではcaps lockを押せば良いのですが,「alt」 + 「~(チルダ)」でも切替できるそうです.

■ 参考サイト

LaTeXiTの使い方

LaTeXiTは,MacでTeXのように数式を綺麗に書くことができるツールです.
詳しい設定方法が以下のホームページに掲載されています.

Parallels Desktop上のwindowsでUSキーボードを使う方法

Parallels Desktop上のwindowsでUSキーボードを使う方法を探していたら以下のホームページに詳しく解説してありました.助かりました.ありがとうございました.

■ ITリテラシー協会
Parallels Desktop上のWindowsをUS配列キーボードで使う方法

2013年11月7日木曜日

2020年「自動運転」には技術とともに法整備も課題 !

clicccar.com(2013.10.18)

最先端のIT技術で交通事故や渋滞を減らす将来の交通システムについての国際会議「第20回ITS世界会議 東京2013」が、10月14(月)~18日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催されました。

「Open ITS to the Next」をテーマに参加国60ヶ国、会議参加者8000人以上となるビッグイベントで、日本での開催は9年ぶり。

開会式では「ITS JAPAN」の渡辺浩之会長が自動運転システム実現への意気込みを語り、安倍首相も「成長戦略における重要な要素として規制緩和やインフラ整備を積極的に進めていきたい」とのコメント映像を寄せるなど気合の入れようが覗えます。

今回のITS世界会議は「CEATEC JAPAN」、「東京モーターショー2013」と連携した3部構成となっています。

イベントでは自動運転技術や高度運転支援の関連技術が数多く紹介され、トヨタやホンダ等、国内外の自動車メーカーが実演走行を披露してITS技術を世界にアピール。

トヨタは2010年代半ばの実用化を目標に高速道路での自動運転システムを開発しており、国土交通省の承認を得て2年前から公道試験を実施、今回実際に自律走行する試験車両(有人)を初公開しました。

GMもクルーズ・コントロールシステムを発展させた「スーパー・クルーズ」と称する高速道路での自動運転システムを2020年までに実用化予定で、人間による操作が必要となった場合にドライバーへ運転操作の介入を求めるシステムとなっている模様。

こうした技術革新で課題となって来るのが自動運転中に事故が起きた際の責任問題。

自動化が進むほど運転者がシステムに依存して注意力や技量が低下しかねないほか、事故の原因究明や責任明確化が難しくなるという課題が浮上しており、自動走行中に通信を伴う場合はハッキングによるテロ対策の必要性 も懸念されています。

そもそも自動運転システムにはGoogleや日産などが取り組んでいる「自律型」と、トヨタやホンダが開発を進めている「インフラ協調型」の2方式が存在。

前者が自動運転の際に車載センサーやカメラの情報を主にしているのに対して、後者は外部からの情報(信号・道路標識・GPS)を取り込んで車載センサーやカメラの情報と融合・情報処理しながら自律走行する方式で、外部情報を利用することによるシステムコストの低減が期待されています。

カーブ先の渋滞や故障車など、レーダーやセンサーだけでは検知できない情報をキャッチすることで、より安全な自動運転の実現を目指している訳ですが、逆に外部電波を悪用した意図的な走行妨害を受ける可能性が懸念されます。

実際、国土交通省主催の「オートパイロットシステムに関する検討会」でも無線による遠隔操作へのセキュリティ対応の必要性が取り上げられるなど、安全対策が議論されつつあるようです。

今後どちらの方式で進むのか、若しくは両方式が共存するのかが課題となりそうですが、何れにしても人の手を介さない「完全自動運転」で高速道路や一般道を走行する事になれば、現状の道路交通法第70条でドライバー自身に課している「安全運転義務」をどのように扱うかの議論になるのは明白。

ドライバーに過失が無くても、自動運転システム自体の不具合や外部要因による事故などの可能性も考えられることから、今後は「自動運転」の普及に向けた法整備も平行して進められることになるものと思われます。


■第20回ITS世界会議 東京2013
  http://www.itsworldcongress.jp/japanese/

■ITS JAPAN
  http://www.its-jp.org/  

■国土交通省 オートパイロットシステム検討会










http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/autopilot/ 

“樹脂らしくない”iPhone 5cボディーの秘密、そこに込められた工夫と努力 【銘品分解】

日経トレンディネット(2013.10.29)

 発売前は「中国市場向けの廉価版」と見られていたiPhone 5c。しかし、実際に触れて見ると、樹脂特有の安っぽさは全くない。今回は、その作り方の秘密に迫る。

 多くの人がプラスチックに対して抱く偏見に、真っ向から挑んだデザイン。iPhone 5cの特徴を簡単に言い表すと、そんな表現が当てはまる。

 持つと、しっとりと手に吸い付くように感じる手触り。本体をポケットに入れるときのなめらかに滑り落ちる感覚。そして、光を当てて反射させて見ても、ほとんどゆがみを確認できない表面。そこにプラスチック製品が持つネガティブな要素は見当たらない。

 今回はアップルのiPhone 5cを、東京大学生産技術研究所の山中俊治・教授や外装設計に詳しい技術者とともに分解。樹脂の常識を覆したモノ作りの工夫に迫った。

●安っぽさの原因は射出成形にあり

 一般的に「プラスチックのような」という表現は、ほめ言葉として使われることは少ない。金型の割れ目にできる線や、光に当てると目立つ表面のゆがみなど、大量生産ゆえの配慮に欠けた安っぽさが目立つ製品を想像する人が多いはずだ。ただし、それはプラスチックが悪いわけでは決してない。

 金属らしい精緻な高級感や、磁器のようなつややかな質感、ガラスのような平滑さ、そしてプラスチックの安っぽさなど…。こうした素材の「らしさ」を生み出す要因は「素材そのものの性質と言うより、むしろ加工方法に起因することが多い」と山中教授は説明する。

 プラスチックの質感そのものが安っぽいのではなく、問題はむしろ、射出成形などプラスチックを成形する際の技術の利用方法にあるというわけだ。

 射出成形は、簡単に言えば熱を加えてドロドロに溶かした樹脂を、圧力をかけながら金型に流し込む成形法。金型の作り方次第で、基本的にどのような形も作れる便利な加工方法だ。

 自由に形を作れるため、射出成形で樹脂のきょう体を作る場合は、1回の加工できょう体に必要な要素をすべて成形するように設計するのが普通だ。例えばきょう体の内側には、リブと呼ばれる補強のための板をはわせ、内部の部品をきょう体に固定させるためのボスと呼ばれるねじ穴も同時に作る。

 カメラのレンズをはめ込むための穴などもあらかじめ用意しておくなど、1回の成形工程でほぼすべての要素を作ってしまうというのが、これまでの樹脂きょう体の常識的な製造工程だ。製造工程を簡略化できるため、きょう体の製造コストは低くなる。

 一方で、こうして何でも1回の成形で作ろうとして金型を複雑にすればするほど、確実にきょう体が歪むという弱点を射出成形は持つ。表面はまっすぐだとしても、裏側の厚みが違えば、型から抜いて冷やしたときにきょう体に無理な力がかかってゆがみ、それが表面にも影響を及ぼすことになるのだ。同じように穴の開いた形状を射出成形で作ると「穴の周囲に向かって面が歪む」(山中教授)。ほんのわずかな歪みやゆがみを、消費者は光の反射などを通して敏感に感じ取り、無意識のうちに安っぽいと感じるようになるのだ。

●つややかにするためのひと手間

 射出成形で樹脂製品を作るにあたり、多くのメーカーはこうした問題を認識して、その解決方法を探ってきた。たとえばセイコーエプソンは、ピアノのようにつややかな面のプリンターを作るために研究を重ねた結果、射出成形時の樹脂の流れの乱れが面のゆがみの原因となることを発見。材料を注意深く選び樹脂が流れやすくなるようなリブ構造を採用したり、樹脂の板厚に配慮するなどの工夫を重ねてきた。同社だけではなく、各社樹脂の安っぽさを解消の努力を行い、独自のノウハウを積み上げてきた。

 ただし、iPhone5cでアップルが使うのは強度はあるが「樹脂の中でも形を出しにくい」と山中教授が言うポリカーボネート。高温に熱しても粘度が高いままで、金型内での樹脂の流れが悪い。小手先の工夫で完璧な面を作れるかは分からない。

 そこでアップルが編み出したのが、射出成形の工程ではきょう体にボスやリブなどを一切付けず、プレーンな箱だけを作るという方法だ。強度に必要なリブや、製品の組み付けに必要なボスは、成形後に金属部品を接着したり、溶接することで補う。さらに、面のゆがみのもう1つの原因となるボタンやカメラレンズのための穴を、金属部品を接着して強度を確保した後で切削加工で開けることで歪みを解消した。

 こうした工夫の結果が下の写真だ。ほとんどゆがみが見られないほどつややかな面を実現。例えば台湾HTCのHTC J butterflyや韓国サムスン電子のGALAXY 4Sの背面パネルと比較すると、その差は歴然だ。

 とはいえ、iPhone 5cの樹脂きょう体は決して完璧ではない。日経デザインが購入したソフトバンク製の黄色いiPhone 5cは寸法精度に問題があり、画面のガラスパネルときょう体の間に0.5ミリほどのすき間とゆがみが出来ていた。ゆがみが生じていた場所は「樹脂を注入する『ゲート』と呼ばれる場所から最も遠い位置にあり、一番問題が起きそうな場所」(山中教授)だ。金型の温度管理の問題なのか、樹脂がスムーズに流れていかなかったのだろうと推測できる。

 日経デザインが見たほかの数個のきょう体には同じような問題は見付からなかったため、たまたま運悪く寸法精度の良くない製品に当たったようだ。ただ、販売して間もない新しいアップル製品が、こうした問題を抱えていることは少なくない。外装部品の開発に詳しいある技術者によると「一般的に大量の需要がある製品の初期ロットでは、品質基準を若干落としてでも、生産量を確保するケースがある」と解説する。アップルのように、特に発売時に製品数を多く確保する必要があるメーカーの場合は、なおさらだろう。

 またアップル製品としてはめずらしく、iPhone 5cでは見えない所に手を抜いていることも今回の分析で分かった。それは、ボタンやスピーカー部のために切削加工で開けた穴の処理だ。肉眼ではほとんど見えないが、拡大して見ると切削した後のチリがまだたくさんこびりついているのが確認できた。

 製品の内部にまで、細心の注意を払ってデザインするアップルだが、同社も「人間の目の解像度」を超える部分については、さすがにコストダウンを優先しているようだ。







米Yahooが Flickr を全面リニューアル、無料で1TBまでアップロード可能に

Engadget Japanese(2013.5.21)

米Yahoo が20日に開催したニューヨークでのメディアイベントは、買収したばかりの Tumblr よりも Flickr の全面リニューアル発表がメインでした。


「Tumblr はダメにしない」と約束すれば「じゃあ Flickr はどうなった?」と即答されるほど買収後の凋落を嘆かれる Flickr ですが、Yahooは過ちを認め、 Flickr を再び素晴らしいサイトとして復活させるとうたっています。

リニューアルの目玉は大きな写真を敷き詰めた新ユーザーインターフェース、無料で1TB容量の提供 (「6.5Mピクセル写真にして53万7731枚」)、モバイルアプリの大幅強化など。続きには新デザインの概要と、発表からの質疑セッションを掲載します。





無料ユーザーがアップロードできる容量を1TBに拡大。「フルサイズ写真で53万7731枚分」(フルサイズは約2MB換算?)。



ウェブサイトとモバイルアプリのデザインを全面刷新。大きな写真を主体に。

旧 Flickr は写真のまわりの余白にテキストやリンクが散在する、いかにも素直な「写真+テキスト」のウェブページだったのに対して、新 Flickr は大きな写真を細いフレームで敷き詰めて、テキストをオーバーレイしたレイアウトへ。

最近の Google+ アルバムや、マイクロソフトの SkyDrive アルバム表示のように、写真をクロップせず余白なく敷き詰めて見せる。



モバイルアプリも新デザインに更新。Android版から。



最近は必須になった「共有アイコン」も常設。同じYahoo参加になった Tumblr はもちろんFacebook、Twitter、Pinterest、メールで共有。



一枚表示。白い余白にサイズ違いへのリンクが並ぶ見慣れた Flickr から、フル画面に近い表示と黒背景、上下にナビゲーションへ。




前職 Google のイベントでも何かと顔出ししていた Mayer CEOも会心のドヤ顔。

質疑より。



Q:Flickr と Tumblr を連携させたようなサービスは?
A:可能性はあるが、Tumblr は買ったばかりで話はまだ。

Q: Tumblr は NYCの新オフィスに移るのか?
A:移転しません。

Q:ユーザーにそんな大容量を与えてどう得になる?
A:「世界は写真で回ってる」。大事なのはできるかぎり無制限に近づけて、ユーザー、クリエーターが容量について心配しないで済むようにすること。

Q:Facebook や Instagram との違いは?
A:無制限のアップロードや、写真を切りとらず、縮小もしないこと。
また Yahoo は多くのパートナー企業と密接に協力しており、競合排除を避ける。アップル、マイクロソフト、Google、Facebook と協力して、Flickr の写真が最適なフォーマットで扱えるようにしている。

Q:発表したばかりの Tumblr 買収について。Tumblrの Karp CEOはどんな反応だったか。
A:Yahoo と Tumblr は相補的な関係。Yahoo はコンテンツが欲しかった、Tumblr は大企業のリソースやツールが必要だった。当初は買収ではなく、提携のつもりで話を進めていた。

Q:Tumblr とYahooの客層、年齢層の違いについて。
A:Tumblr のユーザー層は若く、Yahoo のユーザー層はもっと年齢が高め。Tumblr がリーチしている層はこれまで Yahooブランドが弱かった部分。お互いにとって成長の余地がある。

写真は老若問わず重要。新Flickr のデザインは使い方がシンプルになり、すべての年齢層に訴求する。

Q:Tumblr にアップロードするコンテンツに制限は設けるのか。
A:否。Tumblr はもともと、ほかの大多数のユーザーコンテンツサイトよりもアダルトコンテンツが実は少ない。また、望むユーザーにだけ見せて、望まないユーザーは見ないようにする技術もある。

Q:Flickr がふたたびすごいサービスになったからといって、どうやってそれを知ってもらうのか。
A:マーケティング。たとえばタイムズスクエアにはすでに11の大きな看板を設けて、Flickrのフォトストリームを流している。

Q:アップロードツールについて。
A:ウェブベースのシンプルなアップローダに加えて、OS X やモバイルにアップローダを統合。

Q:Flickr のプレミアムアカウントはなくなるのか?
A:" Flickr Pro " というものはない。 「プロ写真家」(とそうでない写真家との区別)がないように。

ストレージ上限を 2TB にする有料の「ダブラー」はある。また有料の広告オフオプションもある。

Q:Flickr 買収のように(失敗)しないために、社内的に何か変更したのか。
A:ほかの成功した買収から学んで、Tumblr は独立運営させることにした。勢いのある企業にはそれが重要。

Q:マネタイズを始める時期は。
A:すでに収益は上げている。またいくつか改善に向けて動いている。たとえば Mail から一部の広告を外して、かわりにもっと効率のよいものに変えた。ホーム画面広告も高品質で「シームレスに統合」されたものに変更など。

Q:ユーザーの写真を守るための冗長性確保は。
A:複数の場所のデータセンタやコロケーションサービスを使っている。心配はしていない。

Q:新デザインのお手本にしたのは?
A: 多数のモバイルアプリを研究した。
Retina ディスプレイが大きな変化を起こした。フル解像度でない写真はすぐに分かってしまう。

Q:Tumblr にとってYahooはなにができる。
A:投資と、人材を雇えることに加えて、コンテンツ発見ツールを提供できる。Yahoo には AI、パーソナライゼーション、検索の経験がある。

米Yahooが Tumblr買収を正式発表、「ダメにしないことを約束」。カープCEO続投で独立運営

Engadget Japanese(2013.5.20)

米 Yahoo が Tumblr の買収を正式に認めました。Yahoo と Tumblr の共同発表によると、両社は Yahoo が Tumblr を11億ドルで買収することで包括的合意に至ったとのこと。


両社連名のプレスリリースのほか、Yahooの CEO Marissa Mayer 氏と Tumblr の CEO David Karp 氏はそれぞれ Tumblr 上で個人名のコメントを出しており、特に Tumblr のカープCEOはいかにも当人らしい率直な物言いで Tumblr ユーザーに語りかけています。

追記:20日にニュヨークで開かれたメディアイベントでは、やっちまったほうの買収案件 Flickr の全面リニューアル発表のほか、質疑セッションでは Tumblr 買収についても多くの回答がありました。詳しくは Flickr 記事へ。

まず両社連名の正式な発表文では合意に続く2文目から、買収で Tumblr を「台無しにしない約束」として、 買収後も Tumblr は Yahoo 本体とは「別個のビジネス」として独立運営されること、創業CEOの David Karp が引き続き指揮することを明確にしました。

さらに、製品・サービスおよびブランドは引き続きTumblr 流の「遠慮のなさ、機知、クリエーターの力になることへの献身」によって独立して開発・決定されることなどを挙げ、既存 Tumblr ユーザーの動揺を鎮めることに努めています。


Yahoo のマリッサ・メイヤーCEO が yahoo.tumblr.com に投稿したのは、こちらもまず冒頭が「We promise not to screw it up. ぶち壊しにしないと約束します」から始まる文章。ほぼプレスリリースの内容に沿ったものですが、加えて Tumblr 側の今後のプロダクトロードマップも、チームも、率直で機知に富んだ態度も変わらないこと、Tumblr の目標である「クリエーターに力を与え、最高の作品を作り、ふさわしいオーディエンスの前に提示できるようにすること」は今後もそのままであると強調しています。

では買収でなにが変わるのか、といえば、Tumblrにとっては Yahoo のパーソナライゼーション技術や検索インフラを活用でき、ユーザーが求めるクリエーターやブロガー、コンテンツをもっと見つけやすくできること。Yahoo にとってはTumblr の500億ポストと、今後も毎秒900件・毎日7500万件のペースで加わる投稿が Yahoo のメディアネットワークと(より良い)検索体験に加わること。

またTumblrはこれまでマネタイズ後回しで快適さとユーザーベース拡大を優先してきましたが、ユーザーにとって気になる広告についても軽く触れられています。そちらは「両社は Tumblrにとって違和感がなく、ユーザーエクスペリエンスをより強化できるような広告の機会を作りだすことで協力します」。

さらにメイヤーCEOのコメントを引けば、「多くの意味で、TumblrとYahooほど違う組み合わせもありません。しかし同時に、これほど相補的な組み合わせもないでしょう」。メイヤー氏といえば、昨年夏に米Yahoo のCEOになる以前は Google のバイスプレジデントとして、検索や地図サービスなど担当の「Googleの顔」のひとりを務めていました。


一方、Tumblr 側の当事者デイヴィッド・カープCEO (1986年生まれ26歳) は、staff.tumblr.com にもう少し簡潔で率直な文を載せています。そちらはまず「Tumblr が Yahooに加わると伝えられてとてもうれしい」と切り出したあと (そのまま引用すると):

「これがどれほど素晴らしいことか説明する前に、まず心配を払拭させてほしい:われわれはムラサキにはならない。各ヘッドクオーターは移転しない。チームも変わらない。開発ロードマップは変わらない。そして、『クリエーターの力になり、最高の作品を作りふさわしい相手に届けられるよう手助けする』という使命は決して変わらない」

ではどう変わるのか、については、カープCEOによれば「単純に、Tumblr はもっと速く、良くなる」。やるべき仕事は以前から変わらず、まだまだ先は長いが、今後はもっとリソースが増えるのだ、と簡潔にして楽観的な説明です。

Yahooについては、元祖インターネット企業であり、メリッサ(CEO)は「インターネットをクリエーターのための究極のカンバスにする」というTumblrの夢を共有している、彼女に力を貸してもらえてこれほどありがたいことはないとの評価。

商売の面についても、広告という言葉はないものの、コミュニティや皆が愛するプロダクトを損なうことのないTumblr のビジネスのビジョンを共有できている、と表現しています。

結びは「これまでもそうだったように、Tumblrのすべては、この信じられないほどすばらしいコミュニティのおかげで成り立っている。失望はさせない。」(ついでに署名は「Fuck yeah, David」)。


このように、少なくとも両社CEOコメントのレベルでは、また特に Tumblr のサービスを David 個人の資質に結びつけて解釈してきたようなコアなオーディエンスにとっては、当面の心配を軽減させる言葉が並んでいます。 逆にいえば、「米Yahooに買われるとロクなことにならないだろう」という反応が世界的にここまで大きかったことに改めて感慨を覚えざるを得ません。

「まだまだミクシィは終わらない、第2の黄金期を作る」──新社長が抱負、mixiはスマホアプリにシフト

ITmedia(2013.5.15)

「まだまだミクシィは終わらない、第2の黄金期を作るつもりで取り組む」──ミクシィの社長に就任する同社の朝倉祐介執行役員は5月15日の会見で抱負を語った。創業者で「mixi」を育てた笠原健治社長は代表権のない会長に就き、新事業に専念。若返った新経営体制は「ユーザーファースト」を引き継ぎつつ、スマートフォンネイティブアプリへのシフトなど「第2の黄金期」に向けた取り組みを進める。

 朝倉氏は30歳。中学卒業と同時に競馬の騎手を目指してオーストラリアに渡り、帰国後は競走馬育成に従事したという経歴を持つ。東京大学法学部を卒業後、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーを経てアプリプラットフォームなどを展開するベンチャー「ネイキッドテクノロジー」の社長を務め、同社が2011年9月に買収される形でミクシィに加わった。

 朝倉氏は「10年前、1ユーザーとして愛していたサービスを擁する会社を統括する立場になるのは不思議な感覚。重い責任を感じるが、これほどやりがいがある仕事もない」と意気込む。退任する笠原氏は「大手コンサルティングファームとネットベンチャー社長という2つの立場の経験を生かし、冷静でありながら情熱的に物事を判断できる」と評価する。

●mixiはネイティブアプリにシフト

 新経営体制では、社長兼CEOの朝倉氏のもと、mixi事業を統括する最高事業責任者に川崎裕一氏が就任する。川崎氏ははてな副社長を経てソーシャルサービスを手がけるkamadoを創業。朝倉氏と同様、ミクシィによる買収で同社に加わった。

 笠原氏は新経営体制について、「朝倉新社長は前年度から、『ユーザーファースト』の提唱やユニット制の導入など社内改革を主導してきている。体制変更は、経営陣の中でそれぞれがより得意な分野に注力しパフォーマンスを最大化するための施策だ」と説明する。笠原氏は今後、新規事業立ち上げに専念し、取締役会長として新体制をサポートしていく。

 屋台骨となるSNS「mixi」は、昨年度掲げた「ユーザーファースト」を今後も継続。利用率でアプリはWebブラウザの1.6倍に上っており、これを踏まえてスマートフォン向けネイティブアプリの開発に注力。写真や日記、ゲームなど個別の機能ごとにアプリを提供し、全体のトラフィックとユーザー課金の拡大を目指す。

 現在mixiが展開しているネイティブアプリは「mixi」本体と「コミュニティ」に特化した「mixiコミュニティ」の2本で、3月時点のダウンロード数は累計1000万件を突破している。今後アプリ数を50本に増やすことを目標に掲げ、アプリエンジニアを4倍に増加させるほか、Webエンジニアがスムーズにスマホアプリを開発できる環境構築にも重点的に取り組む。

●「変革」へmixi収益拡大やVCも

 朝倉氏は、“新生ミクシィ”が全社を挙げて取り組む「変革」として「mixi内外での収益拡大」を挙げる。広告収入が振るわなくなる中、mixi内ではネイティブアプリへのシフトによるサービス向上と課金機会の拡大で深耕し、さらに日本最大級のコミュニティーサービスを9年にわたって運営してきた技術力やノウハウが生きる外部向け事業も展開していく。

 「外」向け事業は順次設立する戦略子会社が担う。第1弾として7月に設立する「ミクシィマーケティング」は、過去展開したユーザー参加型プロモーション事例などをもとにマーケティングソリューションを開発。スマホ向けDSP事業「Vantage」やネットポイントサービス「モラッポ」も担当する。

 自社にない技術やサービスを取り込み「今までの延長線上ではない非連続的な成長を促す」(朝倉新社長)ため、外部事業への投資も積極化。7月1日付けで投資子会社「アイ・マーキュリーキャピタル」を設立し、50億円規模のベンチャーキャピタルに乗り出す。企業売買による利益創出ではなく、目標はあくまでも事業拡大。「今あるキャッシュを生かし、自社の成長につなげるための投資をオフライン事業も含め積極的に実施していきたい」(朝倉新社長)という。

●「ギラついたミクシィを取り戻す」

 「長期的に見ると最も重要で本質的」としたのは、人材の育成と輩出。開発体制を変更し、少人数のチームに裁量と収益責任を持たせるユニット制を敷いたことで、年齢や実績に関わらず優秀な人材に“真剣勝負の場”を提供することができたと言う。

 「自身の大学の先輩でもある笠原さんが、学生の頃に立ち上げたベンチャー企業をここまで大きくしたことを僕自身心から尊敬している。アントレプレナーシップマインドを継承し、スピード感と緊張感がある環境で、創業当時のようなギラついたミクシィを取り戻したい。競馬で例えるなら、G1レベルの人材をそろえてダービーに勝ちに行くつもり」(朝倉新社長)

2013年10月21日月曜日

SNSの栄枯盛衰


2013年8月23日金曜日

ホンダ 大型バイク「NC700X」 「みんなが反対することをやりたい」 フィット真っ二つエンジンで低燃費を実現 青木柾憲さん(本田技術研究所 上席研究員)

WEDGE(2013.8.15)

求めやすい価格や高い燃費性能、さらに乗りやすさなどが評価され、2012年度には排気量401cc以上の大型バイク市場で米国のライバル社を抑えてトップになった。派生モデルを含む同年度の販売台数は約5100台と、目標の3500台も大きく上回っている。

 価格は64万円台からで、12年2月の発売時はホンダの400cc級の製品よりも安く、バイクファンを驚かせた。開発の指揮を執ったのはホンダの研究開発部門である本田技術研究所の二輪R&Dセンター上席研究員、青木柾憲(58歳)。入社以来、米国の研究所勤務時代も含めバイク開発一筋であり、責任者として手掛けたモデルだけでざっと20台に及ぶ。数々のヒット車を生み出したベテラン技術者だ。

 青木に開発の指示があったのは08年3月。いわゆるナナハン(排気量750cc)級で既存車より30%のコスト削減を図るという内容だった。トップメーカーとして、国内バイク市場の長期低迷に何とか手を打ちたい、という狙いがあった。排気量251cc以上の中型・大型車の市場は1980年代半ばに15万台規模だったのが、08年には3分の1まで縮小していた。

 需要が縮むので量産効果が薄れて価格は上昇、するとユーザー離れが加速―といった負のスパイラルを断つため、コストからアプローチしようというわけだ。しかし、これほど具体性に欠ける開発方針は、ホンダでも異例だったという。

 そこは百戦錬磨の青木。「コストさえ下げれば何をやってもいいのだろう」と解釈し、プロジェクトを立ち上げた。「好きにさせてもらう、という感じですよ」と、青木は悪戯っぽく笑う。とはいえ、数十人の技術者が参画するプロジェクトだけに、「コスト低減」だけではベクトルは定まらない。自由度が高いと、逆に目指す製品像がなかなか見えて来ないのだった。青木には「好きにできるというのに、多くのメンバーが既成概念に縛られている」と映った。

 前に進めるため、青木は同年7月に北海道の自社テストコースにメンバー30人余りを集めて合宿した。500~800cc級の国内外のバイク14台を用意し、各人が乗り比べたのだ。ひと晩だけは全員集合して夕食を兼ねたミーティングを開き、さまざまな意見をぶつけ合った。

 これにより、トップの燃費性能をめざすこと、高速のみならず日常の走りも楽しくなるエンジン特性の確保といった大まかな方向性が固まり、開発メンバー間の意思疎通も少し深まった。それでもカチッとした製品コンセプトを固めるには至らなかった。

眠れぬほど気になった居酒屋で出た意見
 ある日、青木がメンバーと居酒屋で意見を交わしていた時だった。心臓部のエンジンを担当する主任研究員の山本俊朗が「フィットの1.3リットルのエンジンをパカッと切って半分にしたら、燃費のいいのができる」と話した。最初は「酔った勢いの発言」と受け流していた青木だが、その夜、眠れないほど引っ掛かった。結局、翌日には山本に半分に切ったエンジン開発を指示した。

 「NC700X」のエンジンが直列2気筒670ccとなったのは、実際に同社のベストセラー乗用車「フィット」の低燃費エンジンをモデルにしたからだ。直列4気筒を2気筒にし、シリンダ(燃焼室)径などはそのまま踏襲した。ただし、バイクのエンジンなので2つの燃焼室での爆発タイミングを故意にずらすよう味付けをした。バイク用語では「鼓動感」と呼ぶそうだが、「ドドッ、ドドッ」と独特のリズムを奏でるようにしている。

 燃費は1リットルで41キロ(時速60キロ定地走行)と、400cc級にも勝るレベルを実現した。エンジンの最高回転は毎分6400回転と、このクラスでは1万回転以上が当たり前だったホンダのバイク用エンジンとは全く素性の異なるものができた。回転を抑制することで低中速域から十分なトルク(回転力)が得られるので、多くのユーザーから「乗りやすいのに加速感も十分」との評価を得ることにつながった。

 もっとも大型用のエンジンとしては型破りなので、青木は社内の酷評を覚悟していた。それを克服して商品化に進むには、実際に乗ってもらうことだった。09年の夏、役員も交えた開発中のバイクの試乗検討会が北海道で行われた。ホンダの役員は全員大型バイクを操ることができるが、とくに社長の伊東孝紳はバイクが大好きで、しっかりした評価軸ももつ。数々の試乗車から伊東が最高の評価を与えたのは、青木チームのバイクであり、事実上の商品化ゴーサインとなった。

 そもそもの課題であったコストは、国内で生産するだけに厳しかったものの、材料歩留まりを高める新工法など日本ならではのアプローチを進めた。

 同時に、アジアを中心にホンダの海外工場に納入するサプライヤーからも部品を調達、海外部品比率を4割程度にすることで目標に到達させた。

 速射砲のように繰り出される青木の話は愉快で、相手を飽きさせない。印象的だったのは、「みんなが反対するのは、既成概念をはみ出しているから。むしろそこにヒットの可能性がある。だから私はみんなが反対することをやりたい」。さらに「最大の敵は、前例のないことを否定する社内の壁」とも言い切る。ホンダには貴重な、尖った理念をもつエンジニアでもある。(敬称略)

■メイキング オブ ヒットメーカー 青木柾憲(あおき・まさのり)さん 本田技術研究所 上席研究員
1954年生まれ
長野県長野市生まれ。幼稚園の時分に音楽に目覚め、中学2年までピアノ教室に足しげく通った音楽少年であった。県立長野高校へ進学し、軽音楽部でキーボードを担当した。高校1年時に二輪免許を取得。
1974年(19歳)
電気通信大学工学部機械工学科へ進学し、吉祥寺で一人暮らしを始める。いわゆる貧乏学生で、バイクとは無縁の生活を過ごした。趣味の音楽では、作曲活動なども行い、ラジオに投稿した自作の曲が放送されることもあった。就職活動では音楽活動をウリにした。
1978年(23歳)
ホンダに入社。「クルマよりバイクのほうが技術者の裁量が大きく、全部作れそう」とバイク部門を希望。念願叶って、2年目に埼玉県朝霞市にある現在の二輪R&Dセンターに配属となった。93~96年の米国カリフォルニア州駐在を除けば、一貫して朝霞で働いた。
2003年(48歳)
03年から開発責任者を離れ、コスト企画や小型バイクなどの管理業務を担当した時期もあった。だが、「マネジメント業務は性に合わない。開発責任者への復帰を熱烈に希望した」甲斐もあり、06年に天職である開発責任者へ戻った。自宅にはグランドピアノが2台ある。「音楽もバイクも良いモノを作りたいという私の欲求を満たしてくれるという点で同じ」という。



“LINE疲れ”に陥る学生たち 「返信は義務」80%…既読機能が苦痛

SankeiBiz(2013.8.23)

便利なコミュニケーションツールとして利用者が増え続けている「LINE」。7月には、サービス開始からわずか2年で世界の利用者が2億人を突破した。無料に加え、大勢の仲間と同時に通話やメッセージのやり取りができることから、大学生には必須アイテムだ。ところが、相手にメッセージを読んだことを伝える「既読」表示機能が、精神的なプレッシャーとなるなど、“LINE疲れ”に悩む学生が少なくないという。関西大学総合情報学部・谷本奈穂ゼミの有志学生記者たちが、キャンパスのLINE事情をリポートする。

 LINEは、24時間いつでもどこでも、無料で通話やメッセージのやり取りができるコミュニケーションアプリである。世界231カ国で使われ、登録ユーザー数は現在も破竹の勢いで増え続けている。LINEには、送られてきたメッセージを開くと「既読」というマークが相手に表示される機能がある。東日本大震災などの災害を教訓に、災害時に家族や友人の安否確認をできるようにするために導入されたそうだ。

 ところが、この便利な機能が想定外の問題をもたらしている。メッセージを開くと、相手に「既読」が伝わるため、そのまま何も返信しないと相手が気分を害するのではないかと、プレッシャーに感じる学生が少なくないというのだ。実際、それがきっかけで、信頼関係が失われたり、関係が悪くなったりし、いじめにまで発展したというケースもあるという。最近は、「既読」が表示されないようにするアプリまで登場しており、多くの利用者が「既読」機能に苦痛を感じているのである。

 頻繁なメッセージ通知や既読への対応…。“LINE疲れ”の実態を調べるため、関西大学のキャンパスで6月に100人の学生を対象としたアンケートを行った。まず、「LINEを使用していますか」との質問に、「使用している」と答えた学生は実に98%を占めた。「使用している」と答えた学生に対して、「LINEの既読が気になりますか」と尋ねたところ、「気になる」と回答した学生が76%に上り、「気にならない」の24%の3倍という結果になった。

 「既読機能があるため、相手に返信しなければならないと思いますか」との質問には、「思う」と回答した学生が80%を占めた。「既読が気になる」との回答数を上回っており、気にはならなくても、返信が「ほぼ義務」となっている実態が浮かび上がってきた。アンケートを通じて、“LINE疲れ”を感じているという学生数人にインタビューをすることができた。

 LINE疲れの原因として、ある学生は、「LINEを使ってグループで何かを決める際に、全員の既読がつかない時や、既読をつけているにもかかわらず返信をしてくれない時に、非常にストレスや疲れを感じてしまいます」と答えてくれた。「通知を押してトーク画面を開くと、既読がついてしまい、その時は忙しくて返信できない状況でも、すぐに返信しなければいけないと思ってしまいます」と話す学生もいた。

 さらに別の学生は「グループ間で連絡を取り合う際、既読は何人と表示されるだけなので、誰が連絡を見ていて、誰が連絡を見ていないのか、分からない。全員の既読が表示されないと、話が前に進まない時があります」と、具体的な実例を挙げてくれた。




2013年8月20日火曜日

経営悪化のグリー、任天堂のパクリゲーを次々と配信中止に

きま速(2013.8.20)

今回グリーは、巨額の特別損失を計上し、ソフトの開発中止やサービス中止しました。それらの中止ソフトから、これまでのグリーの必勝パターンが崩れていることが見えてきます。かつて、グリーの田中社長は、「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」と言ってのけました。

「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」
http://news.livedoor.com/article/detail/5864856/

このパクリ上等発言は、かなり物議をかもしまして、実際にパクリゲームを連発するグリーに、憤る声も多かったのです。

「GREEのゲームはパクリだらけ? そんな疑惑ゲーム一覧」
http://getnews.jp/archives/115930

しかし、やはりそんなパクリゲームは長続きしませんでした。上記の記事に取り上げられた、『ラブプラス』のパクリである「ヒメこい」、『けいおん』のパクリである「いもこい」、『魔法少女まどか☆マギカ』のパクリである「契約魔法少女」は、いずれも1年経たずサービスを停止しました。

そして今期、特別損失として計上されたソフト郡を見ると、数々のパクリシリーズが相次いでサービス中止になったのです。

●『マリオカート』をパクッたように見える「Wacky Motors」
http://jp.product.gree.net/wacky/motors/ 8月28日サービス終了

●『nintendogs』をパクッたようにしか見えない「ともだち☆ドッグス」
http://jp.product.gree.net/dogs/ 8月12日サービス終了

●『ポケットモンスター』をパクッたとしか思えない「MONPLA SMASH」
http://jp.product.gree.net/monpla/smash/ 8月28日サービス終了

任天堂関係では、「おいでよ、どうぶつの森」をパクッた感じの「どうぶつフレンズ」が、まだ生き残っています。これまでの成功パターンが崩れたグリー。これからの展開はどうなるのでしょうか?事業計画が公開されてないため、どうなるか予断を許しません。もし、懲りずに『パズル&ドラゴンズ』のパクリソフトが出たら、また取り上げたいと思います。

「稼ぐアイデア増産」の集中テクニック

PRESIDENT(2013.8.19)

日本を代表するクリエーター「佐藤可士和」の名前は知らなくても、彼のデザインした広告や企業のロゴを目にしたことのない人はいないだろう。クライアントと目指す方向を探り、「これしかない」というデザインに落とし込む。その手腕は、ファーストリテイリングの柳井正氏、セブン&アイの鈴木敏文氏、楽天の三木谷浩史氏など、多くの著名経営者から厚い信頼を得ている。ユニクロのロゴ制作から幼稚園・病院のプロデュースまで、仕事の幅は広い。

多忙を極める佐藤氏だが、スケジュール管理は主に、妻でマネジャーの佐藤悦子氏が行い、可士和氏自身は手帳を持たない。

「基本的にいつも手ぶらです。持ち歩くのは携帯電話とカギと小銭、カードケースくらい。最近はこれにiPadが加わりました」

スケジュールはウェブ上のカレンダーでスタッフと共有し、常に数カ月先まで確認。大小あわせて約30本のプロジェクトを抱える状態だ。スケジュールは変更になることも多いため、ウェブで常にチェックしている。時間の使い方についてどのように考えているのだろうか。

「複数のプロジェクトを同時並行していると、やることが多くて焦ってくる。でもそこでちょこまかと手をつけても、効率は上がらない」(可士和氏)

それなら「目の前のことに集中する」と決めたほうがいい。

「クリエーションに関しては、大事なのはかけた時間の長さではなく、どれだけ深く集中できるかが勝負。毎日1時間×3日よりも、3時間まとめてバシッとやったほうがよかったりする。僕の場合、時間管理は集中するためのメンタルのコントロールに直結しています」(可士和氏)

もともと集中するために頭のスイッチを切り替えるのは得意という可士和氏だが、妻の悦子氏によるスケジュールの組み方に助けられている部分も大きい。

「佐藤はすごく集中力がある。本人曰く『狂った集中力』(笑)。だからといって大きなプロジェクトの大詰めで、急に1時間空いたから、全く別の新しいことを考えるのは無理。だから佐藤の頭の空き具合を計算する。いま彼が何に気持ちを奪われているのか、『脳内視野』がどうなっているかを考えてスケジュールを組んでいます」(悦子氏)

可士和氏のアートディレクションは、企業や組織のトップと1対1で会話を重ね、問題点や狙いを整理することから始まる。


「セブン&アイの場合は、広告のこともお店のこともあるけれど、まずはプライベートブランドから着手しようということになり、新しいロゴマークを作りました。最初から鈴木会長に『ロゴをつくってほしい』という言い方をされたわけではありません。頼まれたのは『セブン-イレブンをよくしてほしい』ということだけ」(可士和氏)

抽象的で漠然としたリクエスト。しかしこのような頼み方はユニクロの場合も同様で、柳井会長からの依頼は「世界戦略をやってくれ」の一言だった。

可士和氏はそんなとき「何をすればいいですか」とは聞かない。それを考えることが仕事だからだ。大きなプロジェクトではデザインに着手するのは最後の最後。経営戦略を考えるコンサルタントのように、何をすべきか考えるところから仕事が始まる。そのために必要なのが徹底的な対話だ。セブン-イレブンのときは上層部とだけでも30回以上ミーティングを重ねた。

「ミーティングというより僕がインタビューをする感じです。日本経済についてなど、大きな視野の話もする。鈴木会長に『コンビニは将来の社会にとって、どういうものになるんですか』という質問を投げかけたりもします」(可士和氏)

このような視野の大きな話から入るのは遠回りのような気もするが、可士和氏はそれを真っ向から否定する。

「それが1番の近道。人間は話すことで思考や情報が整理されます。鈴木会長も僕との対話の中でセブン-イレブンの40年の歴史を振り返ったりしているはず。対話を重ねると何をすべきかというゴールが見えてくる。ゴールの設定をすることは非常に重要。どこに行くべきかを共有することこそ、本当の意味でのクリエーティブな作業です。仕事がなかなかうまくいかない人は、ゴールが見えないまま走り始めてしまっているのかもしれませんね」


「経営者と話すことが1番大事」と断言する可士和氏。しかし大企業トップと引く手あまたのクリエーター同士では、頻繁にミーティングの時間を持つのは難しい。そこで悦子氏が考案したのが、「時間割方式」とでもいうべき方法だ。

「長期にわたってお仕事をさせていただく企業トップとのミーティングは、週1回とか月2回とか、ミーティングの曜日と時間を決めて定例にしています。テレビ番組表のように。そのほうがかえって時間をとりやすい。何曜日の何時と1度決めたら、急ぎの確認事項がなくても、その時間は必ずお会いするようにしています。雑談をするだけでも、そこからアイデアが生まれることもあります」(悦子氏)

人と会う予定は火・水・木・金に入れ、月曜日は「デザインデー」として空けておく。可士和氏がクリエーティブな作業に集中するためだ。悦子氏は言う。

「放っておくとどんどん埋まってしまうのですが、クオリティを維持するためには佐藤が集中できる時間を死守するしかない」

また、打ち合わせと打ち合わせの間は最低でも30分あけるという。もし打ち合わせが延びても次に約束した人を待たせることがないし、その間に頭を切り替えることができるからだ。悦子氏は時間の余白を重視する。

「スケジュールに余裕を持たせておけば、何かあってもバタバタしない。それにインターバルや休みをとってリフレッシュすることも絶対に必要です」

博報堂勤務時代に知り合った2人だが、当初は、可士和氏と悦子氏とでは、仕事に関するとらえ方も違った。

「広告業界のクリエーターは徹夜や残業をするのが当たり前で、忙しい=売れっ子、という風潮もありました。佐藤も完全に夜型だったようです。私は博報堂を辞めたあと、外資系企業や化粧品会社に勤めて違う世界を経験しました。それで広告業界の時間の使い方に違和感を覚えたのかもしれません」(悦子氏)


子供が生まれる前、2人で予定していたハワイ旅行を、可士和氏が「撮影が入ったから」とキャンセルしようとしたことがあったと悦子氏は述懐する。


「それに私は大反対。『ちゃんと仕事をするためにも休むことは絶対に必要』と言い続けていたら、わかってくれるようになりました。私が佐藤からもらったものはたくさんあるんですが、もし私が佐藤に影響を与えたことがあるとすれば、それは休むことの大切さかもしれません。若いうちは徹夜が続いても平気ですが、そんな生活を続けていたらいずれ体調を崩すし、クリエーターとしても涸渇してしまう。そうなったらかえって仕事先に迷惑をかけてしまいます」

可士和氏が独立して個人事務所「サムライ」を設立したことも、働き方が変わるきっかけだった。広告代理店の仕事はスパンが短く不測の事態にその都度対応する必要もあるため、自分のペースを保つことはなかなか難しかったが、独立後に手がけるようになった長期的な企業のブランディングは、比較的、自分のペースで仕事が進めやすい。

加えて、悦子氏がマネジャーとしてサムライに参加し、お互いの役割分担が明確になったことも大きなプラスとなった。

「博報堂ではお金やスケジュールの管理も僕の仕事でした。いまは、それを事務処理能力の高い悦子が一手に引き受けてくれるので、僕はクリエーティブということに集中できる」(可士和氏)

「夫婦で同じ職場で働くのは大変でしょう、とよく言われるんですが、一緒にいる時間はそれほど長くない。今日なんか15分くらい(笑)。会社で仕事の話ができない日は、家で話すこともよくあります」(悦子氏)

長男が誕生したことも、2人の時間の使い方に変化を与えた。

「子供が生まれる前は、何かあっても夜中まで働けばカバーできた。でもそれはもう無理なので、『午後9時だけど今日は早く寝て、明日の朝3時に起きてからやろう』と、工夫するようになりました」(悦子氏)


普段の悦子氏は毎朝4時起き。子供の世話と、責任ある仕事の両立は考えただけでも大変そうだ。そう言うと、悦子氏は笑ってこう答えた。


「『忙しそうですね』と言われると、私もまだまだだな、と思います。忙しそうに見えるのは、他人を受け入れる余裕がないということでもありますから」

悦子氏が化粧品会社に勤務しているとき、忙しいはずの女性トップがまったくバタバタしていなかった。以来、「ゆっくりしているほうがきれい」と確信。仕事のやり方を工夫し、万一に備え余白を設けるようになった。

悦子氏のスケジュール管理法は、デジタルと紙の2本立て。長期の予定は見開き2週間の手帳に書き込む。変更が多い短期の予定はネットで管理する。その日にすべきことは、「メール」「電話」「請求書」「契約書」など項目ごとにA4の裏紙を使ってすべて書き出していく。

「忘れてはいけないことは紙に書くのが1番。こうすると作業の量が目で見てすぐわかります」(悦子氏)

1件片付けるたびに赤線を引いて消し、1日の終わりに、その紙を破いて捨てる。

「紙を破いて捨てることで、すごくスッキリする」(悦子氏)

実は悦子氏は「メモ魔」でもある。誰にどんな手土産を渡したか、誰とどこで会食をしたかなど、すべて手帳の備忘録に記録する。2回目以降にダブらないようにするためだ。

効率的に時間を管理すれば、空き時間でジムに行ったり、近所の公園で早朝ウオーキングをすることもできる。可士和氏は「サムライは小さな会社です。僕や悦子が倒れるわけにいかない。ですから、運動をして、体を鍛えるのも仕事のうち。それに、メンタルにもとてもいいリフレッシュになります」と言う。

「昔は僕もジム通いが続かなかった。続けるコツは、パーソナルトレーナーを予約すること。そうなるとその人と会う約束を守るために、行かざるをえない」


週末は同じく子供を持つ家族と、釣りや農園に出かけることも多い。

「息子が1歳のとき、食育になるかなと、ファームのメンバーになったのですが、親のほうも自然のなかで汗をかくことが楽しみになってきた」(悦子氏)

佐藤夫妻が農業を始めてまもなく、ファームに若い家族世代のメンバーが急増した。

「自分で種をまいたものを食べることで、生活を自分でつくるリアリティが感じられる。皆がそれを求めている時代なんだ、と佐藤はわかったようです。それは仕事にも活きます。時代の感覚を掴む必要がある佐藤の仕事では、オフの時間を充実させることも大切なことだと思います」(悦子氏)

「子供はパワフルです。うちの子は一緒に遊んでいても、僕が集中していないと怒る(笑)。そうすると遊びに集中せざるをえないから、いいリフレッシュになるんです」(可士和氏)

忙しさを理由に土日も仕事をし、結果的に効率を落としている人は多いのではないか。佐藤夫妻からは、仕事と時間のやり繰りについて学ぶ点は多い。