通常の集積回路などは、金属や半導体に電流を流すことで電気信号を伝達する。しかし、電流が流れる際には金属などの内部抵抗による熱(ジュール熱)が生じ、エネルギーを失うため、素子の小型化や省電力化の妨げになっていた。
同研究所の斉藤英治教授(物性物理学)らの研究チームは2006年、白金など一部の金属に電流を流すと、電子のスピンの方向が次々に変化して隣の電子に伝わる「スピン波」が生じたり、逆にスピン波が金属に電流を生じさせたりする現象を発見。この現象を利用して、電気信号を伝達することを考えた。
研究チームは、「磁性ガーネット」という電流は通さないものの磁石の性質を帯びやすい絶縁体の両端に白金を取り付け、片方の白金に電流を流したところ、白金で生じたスピン波が絶縁体を伝わり、約1ミリ離れた先にあるもう片方の白金に電流が検出された。
絶縁体そのものには電流が流れないため、ジュール熱はゼロ。伝達によるエネルギーの損失はごく小さく、集積回路クラスなら消費電力は約80%削減できる計算だという。斉藤教授は「絶縁体では電気信号を伝えられないという300年来の常識を覆す発見。省エネなどさまざまな応用が期待できる」と話している。(2010/03/11-06:57)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010031100071