ITmedia(2010.9.13)
mixiがオープン化に大きくかじを切った。9月10日に開いた業界関係者向けイベント「mixi meetup 2010」で、大胆なAPI公開や、他社サービスとの連携を発表。モバゲータウンやYahoo!JAPANなど競合とみられてきた大手サービスとも連携するほか、スマートフォンなど情報家電とも連携していく。
「ネットが登場して20年。これまではサーバとサーバがつながっていた。今後は人と人がつながり、感情を流通させるソーシャルネットワークが拡大していく」――ミクシィの笠原健治社長は、mixiがソーシャルネットワークサービス(SNS)から「ソーシャルグラフプロバイダー」(SGP)に変わると話した。
●「mixi Plugin」と「mixi Graph API」提供
外部サイトにHTMLコードを貼り付けるだけで、mixiと手軽に連携させられる「mixi Plugin」と、外部サイトや情報家電に組み込めるAPI「mixi Graph API」を提供。パートナー企業だけでなく、一般個人にも開放していく。
mixi Plugin第1弾として、外部サイトに「mixiチェック」や日記、ボイス、カレンダーの投稿ボタンを置けるタグ(mixiチェックボタン/SimplePost)の提供をスタート。HTMLコードを埋め込むだけで、Webサイトに投稿ボタンを設置できる。今後、「イイネ!」ボタン用タグなどほかの機能も提供していく。
mixi Graph APIは、mixi Pluginより複雑な機能を組み込めるAPIセット。ECサイトで購買と同時にmixiに投稿したり、外部のブログサービスにmixiのプロフィールを置いたり、スマートフォンの電話帳にmixiの友人関係を反映させたりなど、mixi Pluginより深く連携させられる。
●モバゲーもYahoo!も楽天もmixiにつながる
楽天やヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)、はてななど、大手を含む30社50サイトが、同日までに「mixi Plugin」や「mixi Graph API」を導入。すでに「楽天市場」の商品画面や、「Yahoo!オークション」「モバオク」「はてなココ」などからmixiに投稿できるようになっている。
DeNAはSNS「モバゲータウン」もmixiと連携させる予定。モバゲーの小説やゲームへのリンク、占いの診断結果などをmixiに投稿できるようにする。ミクシィとDeNAは今後さらに深く協業していく方針。「新たなソーシャル事業の共同展開も検討している」と、DeNAの守安功COOは話す。
mixiとモバゲーは競合と見られがちだが、「mixiはリアルのソーシャルグラフを広げており、モバゲーはソーシャルゲームプラットフォームに注力しており、ユーザーの利用意向や特性、目指している方向がまったく違う」と守安COOは説明。「リアルのソーシャルグラフは、日本国内ではすべてmixiさんにお任せすればいい」と割り切った表情で、「モバゲーを使っている人は全員mixiを使ってもらい、ユーザーを積極的に重複させていきながら、3000万、4000万、5000万ユーザーを目指す」と話した。
mixiとハードウェアの連携も進めていく。mixiに投稿できるデジカメなどはすでに発売されているが、今後は、HDDレコーダーやスマートフォンなど情報家電との連携を検討。パナソニックは、「DIGA」向け録画サービスで、友人が録画予約している番組が分かる仕組みの導入などを検討しているという。
●「Webをソーシャライズする」
「Webをソーシャライズする」――mixiのオープン化やTwitterの普及などで、Webでトラフィックを集める手段が、検索エンジン最適化から「いかにバイラルを回すか」に移っていくと、ミクシィの原田明典副社長は指摘。「mixiのソーシャルグラフの特徴を研究してもらい、どういうツールをどうチューニングすればバイラルしやすいか研究してもらえれば」と話す。
mixiのAPIを使ったサービスを提供するスタートアップ企業を支援するプログラムも準備しているほか、「次のプラットフォーム」も準備中。具体的には明かさなかったが、「mixiのソーシャルグラフを使って新しい事業をインキュベーションする場所」(原田副社長)を提供していくという。
笠原社長は「ソーシャルグラフプロバイダーとして、人と人とのつながりをいかに豊かにし、いかに居心地良く維持するかに特化していきたい。つながった先で何ができるかは、みなさま方と一緒にやっていきたい」と、会場に集まった2000人近いネット企業関係者と、Ustreamのライブ配信視聴者に呼びかけた。