ツイッターは3月14日、遂にネット広告事業に参入した。キーワード検索をかけると関連する広告が表示される「プロモーテッド・ツイート(つぶやき広告)」という新サービスだ。
まだ始まったばかりだが、ユーザーからの反応もひとまず上々。お金を取る広告だから目立たせなければならないが、目障りでは困る。スパムのように大量に送りつけるのもまずい。ツイッターは、うまくそのバランスを取ることに成功した。
広告主は、スターバックス、家電量販店ベスト・バイ、ソニー・ピクチャーズ、ヴァージンアメリカ航空など大企業ぞろい。だが、ツイッターはすぐに気づくだろう。クライアントとして有望なのは大企業だけではない。膨大な数の個人ユーザーもいる。
そもそも「つぶやき広告」が始まったのは、以前からツイッターを販促や広報に使ってきた企業が、せっかくつぶやきを投稿してもすぐに押し流されてしまうことを心配したから。何しろツイッターでは1日の投稿件数が5000万件を突破してなお増加中。大洪水のような有り様なのだ。
■個人ユーザーも潜在クライアント
だが、自分のメッセージを目立たせたいのは個人ユーザーも同じ。たとえばスターバックスは、「コーヒー」というキーワードで検索した人全員に「今日はフラペチーノが無料!」というつぶやきが表示されるサービスに100万ドルの広告料を支払うかもしれない。だが、自分のつぶやきを売り込めるなら1人につき1ドルの広告料を払うという個人ユーザーも100万人はいるかもしれない。
多くの、いや大半のつぶやきはその場かぎりのものだが、金曜夜のライブ情報を告知するアマチュアバンドやトーク番組への出演予定を宣伝する作家のつぶやきは、決して見逃されたくない性質のもの。ただしお金をかけて大々的に宣伝するほどのことでもない。
そこでもしツイッターが、特定のつぶやきを少しだけ他より目立つようにするサービスを低料金で提供すれば、会社は大儲けできるだろうし、ユーザーにとっても極めて価値のあるサービスになるはずだ。
ツイッターのライバル、タンブラーなども考えつきそうだ。自分の投稿をちょっとだけ「くっつきやすく」して、フォロワーのページの上のほうにしばし表示されるようにしてもらうサービスが1ドル、フォロワーのフォロワーまで投稿を届けてもらうサービスなら2ドル......。そうなれば、ほんのおやつ代で自分のメッセージが埋もれるのを避けられる。
■儲かる術がないと笑われてきたが
ネットユーザーは、オンラインの支払いにも慣れてきている。以前は無料が常識だった音楽のダウンロードも、アップルのiTunesのおかげで1曲1ドル払うのが当たり前になった。「ファームビル」や「マフィア・ウォーズ」のようなゲームでは、コンテンツを追加するための少額の電子決済マイクロペイメントが大人気だ。フェースブックが扱う1つ1ドルのバラや香水、といった仮想ギフトの売り上げは今年10億ドルにも達する勢い。ツイッターもその気になれば、一夜にしてこの数十億ドル市場のプレーヤーになれる。
それもスターバックスなどの優良企業から転がり込む大口広告の上に、だ。ツイッターは長いこと、利益の上がるビジネスモデルが描けないことで物笑いの種にされてきた(辛口コメディアンのスティーブン・コルベールはこう皮肉った。「ツイッターの創業者ビズ・ストーンのビズには、あいにく『ビジネス』の意味はないようだ」)。
だが、ネット広告の世界へ慎重に踏み出した第1歩が好評を博した今、ツイッターが業界の巨人に成長する可能性も見えてきた。