毎日より
大阪大基礎工学研究科の石黒浩教授と、ATR知能ロボティクス研究所(京都府精華町)が、実在の人間と同じ外見を持ち遠隔操作ができるロボット「ジェミノイドF」を開発、3日、製造販売を手がける「ココロ」(本社・東京都羽村市)とともに発表した。笑ったり怒ったり複雑な顔の表情も表現でき、分身ロボットをテーマに今年1月公開された近未来映画「サロゲート」さながらのリアルさ。5月にも東大病院で患者とのコミュニケーション手段として試験導入されるという。
石黒教授とATRによるグローバルCOEプログラム「認知脳理解に基づく未来工学創成」の成果。ロボットは「ジェミノイドF」と名づけられ、女性の形で大きさは座った状態で高さ140センチ、重さ30キロ。歩くことはできないものの、みけんや、目、口、あご、肩など上半身の9カ所を空気圧の力で動かすことができる。表情のほか、首の角度を変えたり、お辞儀もできる。遠隔地にいる操作者が、ロボット自身の表情やロボット正面の状況を画面に写し出すコンピューターに向かって話しかけると、音声と操作者の表情などがインターネット回線経由でロボットに伝わり、同時進行で再現される。
記者会見は大阪市北区のビル会議室で行われ、ロボットのモデルになった実在の女性と「ジェミノイドF」が対談。モデルの女性は自分とそっくりのロボットから「趣味は何ですか」などの質問を受け、「まるで妹ができたみたい」とびっくり。また、モデルの女性は操作用パソコンの席に座って自身の「分身」の操作も体験。ロボットが隣の女性に髪の毛などをなでられると「まるで自分がなでられているような錯覚を感じます」と話した。
石黒教授は06年にも自分と外見が同じロボットを開発。今回のロボットは、実在する人間の遠隔操作型ロボットとしては2代目となる。初代機がロボットの後方に冷蔵庫くらいの大きさの設備が必要だったのに比べ、今回のロボットではそれらの設備を体内に収めることに成功し、軽量化を実現。価格も初代機の約3000万円から大幅にダウンし、「ACTROID-F」の名で1体約1000万円で、50体を目標に博物館や病院、企業などに販売するという。