2010年4月7日水曜日

パラパラめくって丸ごとスキャン 東大の高速複写機


NIKKEIより

本をパラパラとめくるだけで内容を高速に読み取れる東京大学の研究チームが開発した特殊な複写機が世界中から注目されている。紹介映像が動画共有サイト「ユーチューブ」で大ヒット。アクセス件数は投稿してわずか1週間余りで36万件を超えた。民間企業とも共同開発の話が進んでいる。予想外の反響に研究チームは「ネットの反応は研究開発を続けるべきかどうかの判断に役立つ」と話している。

東京大学の研究チームが開発した高速複写機の映像(提供:東大の石川正俊教授・渡辺義浩特任助教)
 注目されているのは、本の内容を短時間でデジタルデータに変換する装置で、石川正俊教授と渡辺義浩特任助教らの研究チームが開発した。本を持ってページをパラパラめくり、その様子を上から高速カメラで撮影する。1秒間に500枚の画像を撮影しながら、同時に赤外線レーザーを当てて動くページとの距離を測定していく。250ページの本なら1分程度で撮影できる。

 研究チームは動く紙の形状を数式で表した計算モデルを考案。このモデルに、撮影した膨大な画像とレーザーで測定した距離のデータを当てはめて、コンピューターを使って計算し1ページずつ正確に復元する。コンピューター画面にはコピーした立体的な本が出来上がる。

 図書館の貴重な蔵書を電子化する取り組みが進められているほか、電子書籍への関心が高まっているが、現状では原本を複写機などの上に置いて1ページずつ処理しており、手間と時間がかかる。東大の複写機ならば作業が簡単になるので、世界が注目した。


パラパラとめくりながら上から高速カメラで撮影し中身をデジタル化する
 東大の複写機は昨年夏に完成し、新聞報道によって国内外の企業から問い合わせが相次いだ。その後、米国電気電子学会(IEEE)が発行する雑誌の記者が取材し、撮影した動画を3月中旬にユーチューブに投稿。動画が公開されてから1日に数万件のアクセスがあり、1週間程度で36万件を超えた。

 サイト視聴者からは多数のコメントも寄せられている。中には具体的な応用例の提案や、似たような複写システムを考案している米グーグルと比較した意見などもあり、「貴重な意見」(石川教授)という。

 研究者が成果を世に問う方法は論文発表が基本だが、効率的な産学連携の推進が求められる現状では、研究者個人の興味や専門家集団である学会の評価だけで研究の方向性を決めるのは問題もあるという。「世界中が一定の評価をしているサイトでの反応は、科学技術の方向性を決める新しい基準の1つになるのではないか」と石川教授は話している。

http://www.youtube.com/watch?v=tCOXC5PTJj8