2008年9月18日木曜日

ウエーブで敵を撃退するミツバチ


新しい研究によると、ミツバチはその光沢のある羽を広げて腹部を上下に素早く動かすことで、まるでスタジアムで"ウエーブ"をするスポーツファンのように、敵の目を惑わすさざ波のような効果を作ることができるという。

 この“揺らぎ”現象の正確な目的は、これまで何十年にわたりさまざまに推測されてきた。しかし新しい研究では、それが天敵スズメバチを撃退するためのミツバチの防御機構であることを証明する強力な証拠が提示された。

 ほかの種類のミツバチと違って、東南アジアの巨大なミツバチは外部に対する物理的な防御を欠いた“開放的な”巣を作る。幾重にも重なった何千匹ものミツバチが、巣の中心で互いにしがみついて生きた巣を作るのである。しかしこれでは、ミツバチやそのミツを食べるスズメバチのような捕食動物に対する守りが脆弱となる。

 オーストリアのグラーツ大学でミツバチを研究しているジェラルド・カストベルガー氏とその同僚は、ネパールの給水塔で450回を超えるミツバチとスズメバチの攻防をカメラで記録した。

 このチームが発見したのは、巨大なミツバチの群れで揺らぎが起きるのはスズメバチが巣のすぐ近くまで飛んできたとき、ということである。スズメバチが巣に近づくほど揺らぎは強くなった。1回の“ウエーブ”はわずか数百ミリ秒しか持続しなかったが、ミツバチは揺らぎを無限に続けることができた。

 揺らぎによるさざ波効果により、おそらく困惑したと思われるスズメバチの進路を変えさせ、巣の周り約50センチに安全地帯を作り出した。

 ミツバチは暴力に訴えることもためらわなかった。群れは、揺らぎで阻止できない敵に向かって戦闘専門のミツバチを送り込む。“窒息スクラム”と呼ばれるミツバチの攻撃も観察されている。スズメバチがなんとか巣の表面までたどり着いたとしても、すぐさま多数のミツバチがスズメバチに群がり、腹部を圧迫して窒息死させてしまう(注)。

 カストベルガー氏によれば、揺らぎは自然の中における自己組織化の最も顕著な例の1つであり、自然の中の社会組織がどのようにコミュニケーションをとるのかということを理解する重要なヒントになり得ると言う。「例えば、揺らぎに参加するミツバチのグループは集団的な防衛行動のために巣に残らなければならず、近づく捕食動物に向かって飛んでいってはいけない、ということを群れは"決定"しなければならない」とカストベルガー氏は話す。

 アメリカ、コロラド大学ボルダー校で社会性昆虫を研究している生物学者マイケル・ブリード氏によれば、この研究によって、ミツバチが腹部の上下動をどのように連係させているのかについて詳しいことが新たに明らかになった。「ミツバチは隣のミツバチに反応しているため、わずかな遅延が積み重なって揺らぎが生じている」とブリード氏は語った。

 欧米のミツバチは揺らぎと縁がないと思われているが、それはアジアのミツバチと同じような圧力にさらされていないからかもしれないとブリード氏は付け加えている。「あらゆるミツバチの種類に揺らぎの能力があるが、この研究にあるようなスズメバチが身近にいないために、欧米のミツバチはその能力を失ってしまったのだろうか。あるいは、それぞれの種がスズメバチに反応してこの能力を独自に進化させてきたのだろうか」と、ブリード氏は独自の感想を述べた。

注:“窒息スクラム”でスズメバチに対抗するセイヨウミツバチに対し、トウヨウミツバチは同じようにスズメバチを取り囲むと飛翔筋の動作による発熱でスズメバチを熱殺する、“蜂球”という手段をとることが知られている。

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