2013年11月7日木曜日

米Yahooが Tumblr買収を正式発表、「ダメにしないことを約束」。カープCEO続投で独立運営

Engadget Japanese(2013.5.20)

米 Yahoo が Tumblr の買収を正式に認めました。Yahoo と Tumblr の共同発表によると、両社は Yahoo が Tumblr を11億ドルで買収することで包括的合意に至ったとのこと。


両社連名のプレスリリースのほか、Yahooの CEO Marissa Mayer 氏と Tumblr の CEO David Karp 氏はそれぞれ Tumblr 上で個人名のコメントを出しており、特に Tumblr のカープCEOはいかにも当人らしい率直な物言いで Tumblr ユーザーに語りかけています。

追記:20日にニュヨークで開かれたメディアイベントでは、やっちまったほうの買収案件 Flickr の全面リニューアル発表のほか、質疑セッションでは Tumblr 買収についても多くの回答がありました。詳しくは Flickr 記事へ。

まず両社連名の正式な発表文では合意に続く2文目から、買収で Tumblr を「台無しにしない約束」として、 買収後も Tumblr は Yahoo 本体とは「別個のビジネス」として独立運営されること、創業CEOの David Karp が引き続き指揮することを明確にしました。

さらに、製品・サービスおよびブランドは引き続きTumblr 流の「遠慮のなさ、機知、クリエーターの力になることへの献身」によって独立して開発・決定されることなどを挙げ、既存 Tumblr ユーザーの動揺を鎮めることに努めています。


Yahoo のマリッサ・メイヤーCEO が yahoo.tumblr.com に投稿したのは、こちらもまず冒頭が「We promise not to screw it up. ぶち壊しにしないと約束します」から始まる文章。ほぼプレスリリースの内容に沿ったものですが、加えて Tumblr 側の今後のプロダクトロードマップも、チームも、率直で機知に富んだ態度も変わらないこと、Tumblr の目標である「クリエーターに力を与え、最高の作品を作り、ふさわしいオーディエンスの前に提示できるようにすること」は今後もそのままであると強調しています。

では買収でなにが変わるのか、といえば、Tumblrにとっては Yahoo のパーソナライゼーション技術や検索インフラを活用でき、ユーザーが求めるクリエーターやブロガー、コンテンツをもっと見つけやすくできること。Yahoo にとってはTumblr の500億ポストと、今後も毎秒900件・毎日7500万件のペースで加わる投稿が Yahoo のメディアネットワークと(より良い)検索体験に加わること。

またTumblrはこれまでマネタイズ後回しで快適さとユーザーベース拡大を優先してきましたが、ユーザーにとって気になる広告についても軽く触れられています。そちらは「両社は Tumblrにとって違和感がなく、ユーザーエクスペリエンスをより強化できるような広告の機会を作りだすことで協力します」。

さらにメイヤーCEOのコメントを引けば、「多くの意味で、TumblrとYahooほど違う組み合わせもありません。しかし同時に、これほど相補的な組み合わせもないでしょう」。メイヤー氏といえば、昨年夏に米Yahoo のCEOになる以前は Google のバイスプレジデントとして、検索や地図サービスなど担当の「Googleの顔」のひとりを務めていました。


一方、Tumblr 側の当事者デイヴィッド・カープCEO (1986年生まれ26歳) は、staff.tumblr.com にもう少し簡潔で率直な文を載せています。そちらはまず「Tumblr が Yahooに加わると伝えられてとてもうれしい」と切り出したあと (そのまま引用すると):

「これがどれほど素晴らしいことか説明する前に、まず心配を払拭させてほしい:われわれはムラサキにはならない。各ヘッドクオーターは移転しない。チームも変わらない。開発ロードマップは変わらない。そして、『クリエーターの力になり、最高の作品を作りふさわしい相手に届けられるよう手助けする』という使命は決して変わらない」

ではどう変わるのか、については、カープCEOによれば「単純に、Tumblr はもっと速く、良くなる」。やるべき仕事は以前から変わらず、まだまだ先は長いが、今後はもっとリソースが増えるのだ、と簡潔にして楽観的な説明です。

Yahooについては、元祖インターネット企業であり、メリッサ(CEO)は「インターネットをクリエーターのための究極のカンバスにする」というTumblrの夢を共有している、彼女に力を貸してもらえてこれほどありがたいことはないとの評価。

商売の面についても、広告という言葉はないものの、コミュニティや皆が愛するプロダクトを損なうことのないTumblr のビジネスのビジョンを共有できている、と表現しています。

結びは「これまでもそうだったように、Tumblrのすべては、この信じられないほどすばらしいコミュニティのおかげで成り立っている。失望はさせない。」(ついでに署名は「Fuck yeah, David」)。


このように、少なくとも両社CEOコメントのレベルでは、また特に Tumblr のサービスを David 個人の資質に結びつけて解釈してきたようなコアなオーディエンスにとっては、当面の心配を軽減させる言葉が並んでいます。 逆にいえば、「米Yahooに買われるとロクなことにならないだろう」という反応が世界的にここまで大きかったことに改めて感慨を覚えざるを得ません。