clicccar.com(2013.10.18)
最先端のIT技術で交通事故や渋滞を減らす将来の交通システムについての国際会議「第20回ITS世界会議 東京2013」が、10月14(月)~18日(金)にかけて東京ビッグサイトで開催されました。
「Open ITS to the Next」をテーマに参加国60ヶ国、会議参加者8000人以上となるビッグイベントで、日本での開催は9年ぶり。
開会式では「ITS JAPAN」の渡辺浩之会長が自動運転システム実現への意気込みを語り、安倍首相も「成長戦略における重要な要素として規制緩和やインフラ整備を積極的に進めていきたい」とのコメント映像を寄せるなど気合の入れようが覗えます。
今回のITS世界会議は「CEATEC JAPAN」、「東京モーターショー2013」と連携した3部構成となっています。
イベントでは自動運転技術や高度運転支援の関連技術が数多く紹介され、トヨタやホンダ等、国内外の自動車メーカーが実演走行を披露してITS技術を世界にアピール。
トヨタは2010年代半ばの実用化を目標に高速道路での自動運転システムを開発しており、国土交通省の承認を得て2年前から公道試験を実施、今回実際に自律走行する試験車両(有人)を初公開しました。
GMもクルーズ・コントロールシステムを発展させた「スーパー・クルーズ」と称する高速道路での自動運転システムを2020年までに実用化予定で、人間による操作が必要となった場合にドライバーへ運転操作の介入を求めるシステムとなっている模様。
こうした技術革新で課題となって来るのが自動運転中に事故が起きた際の責任問題。
自動化が進むほど運転者がシステムに依存して注意力や技量が低下しかねないほか、事故の原因究明や責任明確化が難しくなるという課題が浮上しており、自動走行中に通信を伴う場合はハッキングによるテロ対策の必要性 も懸念されています。
そもそも自動運転システムにはGoogleや日産などが取り組んでいる「自律型」と、トヨタやホンダが開発を進めている「インフラ協調型」の2方式が存在。
前者が自動運転の際に車載センサーやカメラの情報を主にしているのに対して、後者は外部からの情報(信号・道路標識・GPS)を取り込んで車載センサーやカメラの情報と融合・情報処理しながら自律走行する方式で、外部情報を利用することによるシステムコストの低減が期待されています。
カーブ先の渋滞や故障車など、レーダーやセンサーだけでは検知できない情報をキャッチすることで、より安全な自動運転の実現を目指している訳ですが、逆に外部電波を悪用した意図的な走行妨害を受ける可能性が懸念されます。
実際、国土交通省主催の「オートパイロットシステムに関する検討会」でも無線による遠隔操作へのセキュリティ対応の必要性が取り上げられるなど、安全対策が議論されつつあるようです。
今後どちらの方式で進むのか、若しくは両方式が共存するのかが課題となりそうですが、何れにしても人の手を介さない「完全自動運転」で高速道路や一般道を走行する事になれば、現状の道路交通法第70条でドライバー自身に課している「安全運転義務」をどのように扱うかの議論になるのは明白。
ドライバーに過失が無くても、自動運転システム自体の不具合や外部要因による事故などの可能性も考えられることから、今後は「自動運転」の普及に向けた法整備も平行して進められることになるものと思われます。
■第20回ITS世界会議 東京2013
http://www.itsworldcongress.jp/japanese/
■ITS JAPAN
http://www.its-jp.org/
■国土交通省 オートパイロットシステム検討会
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/autopilot/
2013年11月7日木曜日
“樹脂らしくない”iPhone 5cボディーの秘密、そこに込められた工夫と努力 【銘品分解】
日経トレンディネット(2013.10.29)
発売前は「中国市場向けの廉価版」と見られていたiPhone 5c。しかし、実際に触れて見ると、樹脂特有の安っぽさは全くない。今回は、その作り方の秘密に迫る。
多くの人がプラスチックに対して抱く偏見に、真っ向から挑んだデザイン。iPhone 5cの特徴を簡単に言い表すと、そんな表現が当てはまる。
持つと、しっとりと手に吸い付くように感じる手触り。本体をポケットに入れるときのなめらかに滑り落ちる感覚。そして、光を当てて反射させて見ても、ほとんどゆがみを確認できない表面。そこにプラスチック製品が持つネガティブな要素は見当たらない。
今回はアップルのiPhone 5cを、東京大学生産技術研究所の山中俊治・教授や外装設計に詳しい技術者とともに分解。樹脂の常識を覆したモノ作りの工夫に迫った。
●安っぽさの原因は射出成形にあり
一般的に「プラスチックのような」という表現は、ほめ言葉として使われることは少ない。金型の割れ目にできる線や、光に当てると目立つ表面のゆがみなど、大量生産ゆえの配慮に欠けた安っぽさが目立つ製品を想像する人が多いはずだ。ただし、それはプラスチックが悪いわけでは決してない。
金属らしい精緻な高級感や、磁器のようなつややかな質感、ガラスのような平滑さ、そしてプラスチックの安っぽさなど…。こうした素材の「らしさ」を生み出す要因は「素材そのものの性質と言うより、むしろ加工方法に起因することが多い」と山中教授は説明する。
プラスチックの質感そのものが安っぽいのではなく、問題はむしろ、射出成形などプラスチックを成形する際の技術の利用方法にあるというわけだ。
射出成形は、簡単に言えば熱を加えてドロドロに溶かした樹脂を、圧力をかけながら金型に流し込む成形法。金型の作り方次第で、基本的にどのような形も作れる便利な加工方法だ。
自由に形を作れるため、射出成形で樹脂のきょう体を作る場合は、1回の加工できょう体に必要な要素をすべて成形するように設計するのが普通だ。例えばきょう体の内側には、リブと呼ばれる補強のための板をはわせ、内部の部品をきょう体に固定させるためのボスと呼ばれるねじ穴も同時に作る。
カメラのレンズをはめ込むための穴などもあらかじめ用意しておくなど、1回の成形工程でほぼすべての要素を作ってしまうというのが、これまでの樹脂きょう体の常識的な製造工程だ。製造工程を簡略化できるため、きょう体の製造コストは低くなる。
一方で、こうして何でも1回の成形で作ろうとして金型を複雑にすればするほど、確実にきょう体が歪むという弱点を射出成形は持つ。表面はまっすぐだとしても、裏側の厚みが違えば、型から抜いて冷やしたときにきょう体に無理な力がかかってゆがみ、それが表面にも影響を及ぼすことになるのだ。同じように穴の開いた形状を射出成形で作ると「穴の周囲に向かって面が歪む」(山中教授)。ほんのわずかな歪みやゆがみを、消費者は光の反射などを通して敏感に感じ取り、無意識のうちに安っぽいと感じるようになるのだ。
●つややかにするためのひと手間
射出成形で樹脂製品を作るにあたり、多くのメーカーはこうした問題を認識して、その解決方法を探ってきた。たとえばセイコーエプソンは、ピアノのようにつややかな面のプリンターを作るために研究を重ねた結果、射出成形時の樹脂の流れの乱れが面のゆがみの原因となることを発見。材料を注意深く選び樹脂が流れやすくなるようなリブ構造を採用したり、樹脂の板厚に配慮するなどの工夫を重ねてきた。同社だけではなく、各社樹脂の安っぽさを解消の努力を行い、独自のノウハウを積み上げてきた。
ただし、iPhone5cでアップルが使うのは強度はあるが「樹脂の中でも形を出しにくい」と山中教授が言うポリカーボネート。高温に熱しても粘度が高いままで、金型内での樹脂の流れが悪い。小手先の工夫で完璧な面を作れるかは分からない。
そこでアップルが編み出したのが、射出成形の工程ではきょう体にボスやリブなどを一切付けず、プレーンな箱だけを作るという方法だ。強度に必要なリブや、製品の組み付けに必要なボスは、成形後に金属部品を接着したり、溶接することで補う。さらに、面のゆがみのもう1つの原因となるボタンやカメラレンズのための穴を、金属部品を接着して強度を確保した後で切削加工で開けることで歪みを解消した。
こうした工夫の結果が下の写真だ。ほとんどゆがみが見られないほどつややかな面を実現。例えば台湾HTCのHTC J butterflyや韓国サムスン電子のGALAXY 4Sの背面パネルと比較すると、その差は歴然だ。
とはいえ、iPhone 5cの樹脂きょう体は決して完璧ではない。日経デザインが購入したソフトバンク製の黄色いiPhone 5cは寸法精度に問題があり、画面のガラスパネルときょう体の間に0.5ミリほどのすき間とゆがみが出来ていた。ゆがみが生じていた場所は「樹脂を注入する『ゲート』と呼ばれる場所から最も遠い位置にあり、一番問題が起きそうな場所」(山中教授)だ。金型の温度管理の問題なのか、樹脂がスムーズに流れていかなかったのだろうと推測できる。
日経デザインが見たほかの数個のきょう体には同じような問題は見付からなかったため、たまたま運悪く寸法精度の良くない製品に当たったようだ。ただ、販売して間もない新しいアップル製品が、こうした問題を抱えていることは少なくない。外装部品の開発に詳しいある技術者によると「一般的に大量の需要がある製品の初期ロットでは、品質基準を若干落としてでも、生産量を確保するケースがある」と解説する。アップルのように、特に発売時に製品数を多く確保する必要があるメーカーの場合は、なおさらだろう。
またアップル製品としてはめずらしく、iPhone 5cでは見えない所に手を抜いていることも今回の分析で分かった。それは、ボタンやスピーカー部のために切削加工で開けた穴の処理だ。肉眼ではほとんど見えないが、拡大して見ると切削した後のチリがまだたくさんこびりついているのが確認できた。
製品の内部にまで、細心の注意を払ってデザインするアップルだが、同社も「人間の目の解像度」を超える部分については、さすがにコストダウンを優先しているようだ。
発売前は「中国市場向けの廉価版」と見られていたiPhone 5c。しかし、実際に触れて見ると、樹脂特有の安っぽさは全くない。今回は、その作り方の秘密に迫る。
多くの人がプラスチックに対して抱く偏見に、真っ向から挑んだデザイン。iPhone 5cの特徴を簡単に言い表すと、そんな表現が当てはまる。
持つと、しっとりと手に吸い付くように感じる手触り。本体をポケットに入れるときのなめらかに滑り落ちる感覚。そして、光を当てて反射させて見ても、ほとんどゆがみを確認できない表面。そこにプラスチック製品が持つネガティブな要素は見当たらない。
今回はアップルのiPhone 5cを、東京大学生産技術研究所の山中俊治・教授や外装設計に詳しい技術者とともに分解。樹脂の常識を覆したモノ作りの工夫に迫った。
●安っぽさの原因は射出成形にあり
一般的に「プラスチックのような」という表現は、ほめ言葉として使われることは少ない。金型の割れ目にできる線や、光に当てると目立つ表面のゆがみなど、大量生産ゆえの配慮に欠けた安っぽさが目立つ製品を想像する人が多いはずだ。ただし、それはプラスチックが悪いわけでは決してない。
金属らしい精緻な高級感や、磁器のようなつややかな質感、ガラスのような平滑さ、そしてプラスチックの安っぽさなど…。こうした素材の「らしさ」を生み出す要因は「素材そのものの性質と言うより、むしろ加工方法に起因することが多い」と山中教授は説明する。
プラスチックの質感そのものが安っぽいのではなく、問題はむしろ、射出成形などプラスチックを成形する際の技術の利用方法にあるというわけだ。
射出成形は、簡単に言えば熱を加えてドロドロに溶かした樹脂を、圧力をかけながら金型に流し込む成形法。金型の作り方次第で、基本的にどのような形も作れる便利な加工方法だ。
自由に形を作れるため、射出成形で樹脂のきょう体を作る場合は、1回の加工できょう体に必要な要素をすべて成形するように設計するのが普通だ。例えばきょう体の内側には、リブと呼ばれる補強のための板をはわせ、内部の部品をきょう体に固定させるためのボスと呼ばれるねじ穴も同時に作る。
カメラのレンズをはめ込むための穴などもあらかじめ用意しておくなど、1回の成形工程でほぼすべての要素を作ってしまうというのが、これまでの樹脂きょう体の常識的な製造工程だ。製造工程を簡略化できるため、きょう体の製造コストは低くなる。
一方で、こうして何でも1回の成形で作ろうとして金型を複雑にすればするほど、確実にきょう体が歪むという弱点を射出成形は持つ。表面はまっすぐだとしても、裏側の厚みが違えば、型から抜いて冷やしたときにきょう体に無理な力がかかってゆがみ、それが表面にも影響を及ぼすことになるのだ。同じように穴の開いた形状を射出成形で作ると「穴の周囲に向かって面が歪む」(山中教授)。ほんのわずかな歪みやゆがみを、消費者は光の反射などを通して敏感に感じ取り、無意識のうちに安っぽいと感じるようになるのだ。
●つややかにするためのひと手間
射出成形で樹脂製品を作るにあたり、多くのメーカーはこうした問題を認識して、その解決方法を探ってきた。たとえばセイコーエプソンは、ピアノのようにつややかな面のプリンターを作るために研究を重ねた結果、射出成形時の樹脂の流れの乱れが面のゆがみの原因となることを発見。材料を注意深く選び樹脂が流れやすくなるようなリブ構造を採用したり、樹脂の板厚に配慮するなどの工夫を重ねてきた。同社だけではなく、各社樹脂の安っぽさを解消の努力を行い、独自のノウハウを積み上げてきた。
ただし、iPhone5cでアップルが使うのは強度はあるが「樹脂の中でも形を出しにくい」と山中教授が言うポリカーボネート。高温に熱しても粘度が高いままで、金型内での樹脂の流れが悪い。小手先の工夫で完璧な面を作れるかは分からない。
そこでアップルが編み出したのが、射出成形の工程ではきょう体にボスやリブなどを一切付けず、プレーンな箱だけを作るという方法だ。強度に必要なリブや、製品の組み付けに必要なボスは、成形後に金属部品を接着したり、溶接することで補う。さらに、面のゆがみのもう1つの原因となるボタンやカメラレンズのための穴を、金属部品を接着して強度を確保した後で切削加工で開けることで歪みを解消した。
こうした工夫の結果が下の写真だ。ほとんどゆがみが見られないほどつややかな面を実現。例えば台湾HTCのHTC J butterflyや韓国サムスン電子のGALAXY 4Sの背面パネルと比較すると、その差は歴然だ。
とはいえ、iPhone 5cの樹脂きょう体は決して完璧ではない。日経デザインが購入したソフトバンク製の黄色いiPhone 5cは寸法精度に問題があり、画面のガラスパネルときょう体の間に0.5ミリほどのすき間とゆがみが出来ていた。ゆがみが生じていた場所は「樹脂を注入する『ゲート』と呼ばれる場所から最も遠い位置にあり、一番問題が起きそうな場所」(山中教授)だ。金型の温度管理の問題なのか、樹脂がスムーズに流れていかなかったのだろうと推測できる。
日経デザインが見たほかの数個のきょう体には同じような問題は見付からなかったため、たまたま運悪く寸法精度の良くない製品に当たったようだ。ただ、販売して間もない新しいアップル製品が、こうした問題を抱えていることは少なくない。外装部品の開発に詳しいある技術者によると「一般的に大量の需要がある製品の初期ロットでは、品質基準を若干落としてでも、生産量を確保するケースがある」と解説する。アップルのように、特に発売時に製品数を多く確保する必要があるメーカーの場合は、なおさらだろう。
またアップル製品としてはめずらしく、iPhone 5cでは見えない所に手を抜いていることも今回の分析で分かった。それは、ボタンやスピーカー部のために切削加工で開けた穴の処理だ。肉眼ではほとんど見えないが、拡大して見ると切削した後のチリがまだたくさんこびりついているのが確認できた。
製品の内部にまで、細心の注意を払ってデザインするアップルだが、同社も「人間の目の解像度」を超える部分については、さすがにコストダウンを優先しているようだ。
米Yahooが Flickr を全面リニューアル、無料で1TBまでアップロード可能に
Engadget Japanese(2013.5.21)
米Yahoo が20日に開催したニューヨークでのメディアイベントは、買収したばかりの Tumblr よりも Flickr の全面リニューアル発表がメインでした。
「Tumblr はダメにしない」と約束すれば「じゃあ Flickr はどうなった?」と即答されるほど買収後の凋落を嘆かれる Flickr ですが、Yahooは過ちを認め、 Flickr を再び素晴らしいサイトとして復活させるとうたっています。
リニューアルの目玉は大きな写真を敷き詰めた新ユーザーインターフェース、無料で1TB容量の提供 (「6.5Mピクセル写真にして53万7731枚」)、モバイルアプリの大幅強化など。続きには新デザインの概要と、発表からの質疑セッションを掲載します。
無料ユーザーがアップロードできる容量を1TBに拡大。「フルサイズ写真で53万7731枚分」(フルサイズは約2MB換算?)。
ウェブサイトとモバイルアプリのデザインを全面刷新。大きな写真を主体に。
旧 Flickr は写真のまわりの余白にテキストやリンクが散在する、いかにも素直な「写真+テキスト」のウェブページだったのに対して、新 Flickr は大きな写真を細いフレームで敷き詰めて、テキストをオーバーレイしたレイアウトへ。
最近の Google+ アルバムや、マイクロソフトの SkyDrive アルバム表示のように、写真をクロップせず余白なく敷き詰めて見せる。
モバイルアプリも新デザインに更新。Android版から。
最近は必須になった「共有アイコン」も常設。同じYahoo参加になった Tumblr はもちろんFacebook、Twitter、Pinterest、メールで共有。
一枚表示。白い余白にサイズ違いへのリンクが並ぶ見慣れた Flickr から、フル画面に近い表示と黒背景、上下にナビゲーションへ。
前職 Google のイベントでも何かと顔出ししていた Mayer CEOも会心のドヤ顔。
質疑より。
Q:Flickr と Tumblr を連携させたようなサービスは?
A:可能性はあるが、Tumblr は買ったばかりで話はまだ。
Q: Tumblr は NYCの新オフィスに移るのか?
A:移転しません。
Q:ユーザーにそんな大容量を与えてどう得になる?
A:「世界は写真で回ってる」。大事なのはできるかぎり無制限に近づけて、ユーザー、クリエーターが容量について心配しないで済むようにすること。
Q:Facebook や Instagram との違いは?
A:無制限のアップロードや、写真を切りとらず、縮小もしないこと。
また Yahoo は多くのパートナー企業と密接に協力しており、競合排除を避ける。アップル、マイクロソフト、Google、Facebook と協力して、Flickr の写真が最適なフォーマットで扱えるようにしている。
Q:発表したばかりの Tumblr 買収について。Tumblrの Karp CEOはどんな反応だったか。
A:Yahoo と Tumblr は相補的な関係。Yahoo はコンテンツが欲しかった、Tumblr は大企業のリソースやツールが必要だった。当初は買収ではなく、提携のつもりで話を進めていた。
Q:Tumblr とYahooの客層、年齢層の違いについて。
A:Tumblr のユーザー層は若く、Yahoo のユーザー層はもっと年齢が高め。Tumblr がリーチしている層はこれまで Yahooブランドが弱かった部分。お互いにとって成長の余地がある。
写真は老若問わず重要。新Flickr のデザインは使い方がシンプルになり、すべての年齢層に訴求する。
Q:Tumblr にアップロードするコンテンツに制限は設けるのか。
A:否。Tumblr はもともと、ほかの大多数のユーザーコンテンツサイトよりもアダルトコンテンツが実は少ない。また、望むユーザーにだけ見せて、望まないユーザーは見ないようにする技術もある。
Q:Flickr がふたたびすごいサービスになったからといって、どうやってそれを知ってもらうのか。
A:マーケティング。たとえばタイムズスクエアにはすでに11の大きな看板を設けて、Flickrのフォトストリームを流している。
Q:アップロードツールについて。
A:ウェブベースのシンプルなアップローダに加えて、OS X やモバイルにアップローダを統合。
Q:Flickr のプレミアムアカウントはなくなるのか?
A:" Flickr Pro " というものはない。 「プロ写真家」(とそうでない写真家との区別)がないように。
ストレージ上限を 2TB にする有料の「ダブラー」はある。また有料の広告オフオプションもある。
Q:Flickr 買収のように(失敗)しないために、社内的に何か変更したのか。
A:ほかの成功した買収から学んで、Tumblr は独立運営させることにした。勢いのある企業にはそれが重要。
Q:マネタイズを始める時期は。
A:すでに収益は上げている。またいくつか改善に向けて動いている。たとえば Mail から一部の広告を外して、かわりにもっと効率のよいものに変えた。ホーム画面広告も高品質で「シームレスに統合」されたものに変更など。
Q:ユーザーの写真を守るための冗長性確保は。
A:複数の場所のデータセンタやコロケーションサービスを使っている。心配はしていない。
Q:新デザインのお手本にしたのは?
A: 多数のモバイルアプリを研究した。
Retina ディスプレイが大きな変化を起こした。フル解像度でない写真はすぐに分かってしまう。
Q:Tumblr にとってYahooはなにができる。
A:投資と、人材を雇えることに加えて、コンテンツ発見ツールを提供できる。Yahoo には AI、パーソナライゼーション、検索の経験がある。
米Yahoo が20日に開催したニューヨークでのメディアイベントは、買収したばかりの Tumblr よりも Flickr の全面リニューアル発表がメインでした。
「Tumblr はダメにしない」と約束すれば「じゃあ Flickr はどうなった?」と即答されるほど買収後の凋落を嘆かれる Flickr ですが、Yahooは過ちを認め、 Flickr を再び素晴らしいサイトとして復活させるとうたっています。
リニューアルの目玉は大きな写真を敷き詰めた新ユーザーインターフェース、無料で1TB容量の提供 (「6.5Mピクセル写真にして53万7731枚」)、モバイルアプリの大幅強化など。続きには新デザインの概要と、発表からの質疑セッションを掲載します。
無料ユーザーがアップロードできる容量を1TBに拡大。「フルサイズ写真で53万7731枚分」(フルサイズは約2MB換算?)。
ウェブサイトとモバイルアプリのデザインを全面刷新。大きな写真を主体に。
旧 Flickr は写真のまわりの余白にテキストやリンクが散在する、いかにも素直な「写真+テキスト」のウェブページだったのに対して、新 Flickr は大きな写真を細いフレームで敷き詰めて、テキストをオーバーレイしたレイアウトへ。
最近の Google+ アルバムや、マイクロソフトの SkyDrive アルバム表示のように、写真をクロップせず余白なく敷き詰めて見せる。
モバイルアプリも新デザインに更新。Android版から。
最近は必須になった「共有アイコン」も常設。同じYahoo参加になった Tumblr はもちろんFacebook、Twitter、Pinterest、メールで共有。
一枚表示。白い余白にサイズ違いへのリンクが並ぶ見慣れた Flickr から、フル画面に近い表示と黒背景、上下にナビゲーションへ。
前職 Google のイベントでも何かと顔出ししていた Mayer CEOも会心のドヤ顔。
質疑より。
Q:Flickr と Tumblr を連携させたようなサービスは?
A:可能性はあるが、Tumblr は買ったばかりで話はまだ。
Q: Tumblr は NYCの新オフィスに移るのか?
A:移転しません。
Q:ユーザーにそんな大容量を与えてどう得になる?
A:「世界は写真で回ってる」。大事なのはできるかぎり無制限に近づけて、ユーザー、クリエーターが容量について心配しないで済むようにすること。
Q:Facebook や Instagram との違いは?
A:無制限のアップロードや、写真を切りとらず、縮小もしないこと。
また Yahoo は多くのパートナー企業と密接に協力しており、競合排除を避ける。アップル、マイクロソフト、Google、Facebook と協力して、Flickr の写真が最適なフォーマットで扱えるようにしている。
Q:発表したばかりの Tumblr 買収について。Tumblrの Karp CEOはどんな反応だったか。
A:Yahoo と Tumblr は相補的な関係。Yahoo はコンテンツが欲しかった、Tumblr は大企業のリソースやツールが必要だった。当初は買収ではなく、提携のつもりで話を進めていた。
Q:Tumblr とYahooの客層、年齢層の違いについて。
A:Tumblr のユーザー層は若く、Yahoo のユーザー層はもっと年齢が高め。Tumblr がリーチしている層はこれまで Yahooブランドが弱かった部分。お互いにとって成長の余地がある。
写真は老若問わず重要。新Flickr のデザインは使い方がシンプルになり、すべての年齢層に訴求する。
Q:Tumblr にアップロードするコンテンツに制限は設けるのか。
A:否。Tumblr はもともと、ほかの大多数のユーザーコンテンツサイトよりもアダルトコンテンツが実は少ない。また、望むユーザーにだけ見せて、望まないユーザーは見ないようにする技術もある。
Q:Flickr がふたたびすごいサービスになったからといって、どうやってそれを知ってもらうのか。
A:マーケティング。たとえばタイムズスクエアにはすでに11の大きな看板を設けて、Flickrのフォトストリームを流している。
Q:アップロードツールについて。
A:ウェブベースのシンプルなアップローダに加えて、OS X やモバイルにアップローダを統合。
Q:Flickr のプレミアムアカウントはなくなるのか?
A:" Flickr Pro " というものはない。 「プロ写真家」(とそうでない写真家との区別)がないように。
ストレージ上限を 2TB にする有料の「ダブラー」はある。また有料の広告オフオプションもある。
Q:Flickr 買収のように(失敗)しないために、社内的に何か変更したのか。
A:ほかの成功した買収から学んで、Tumblr は独立運営させることにした。勢いのある企業にはそれが重要。
Q:マネタイズを始める時期は。
A:すでに収益は上げている。またいくつか改善に向けて動いている。たとえば Mail から一部の広告を外して、かわりにもっと効率のよいものに変えた。ホーム画面広告も高品質で「シームレスに統合」されたものに変更など。
Q:ユーザーの写真を守るための冗長性確保は。
A:複数の場所のデータセンタやコロケーションサービスを使っている。心配はしていない。
Q:新デザインのお手本にしたのは?
A: 多数のモバイルアプリを研究した。
Retina ディスプレイが大きな変化を起こした。フル解像度でない写真はすぐに分かってしまう。
Q:Tumblr にとってYahooはなにができる。
A:投資と、人材を雇えることに加えて、コンテンツ発見ツールを提供できる。Yahoo には AI、パーソナライゼーション、検索の経験がある。
米Yahooが Tumblr買収を正式発表、「ダメにしないことを約束」。カープCEO続投で独立運営
Engadget Japanese(2013.5.20)
米 Yahoo が Tumblr の買収を正式に認めました。Yahoo と Tumblr の共同発表によると、両社は Yahoo が Tumblr を11億ドルで買収することで包括的合意に至ったとのこと。
両社連名のプレスリリースのほか、Yahooの CEO Marissa Mayer 氏と Tumblr の CEO David Karp 氏はそれぞれ Tumblr 上で個人名のコメントを出しており、特に Tumblr のカープCEOはいかにも当人らしい率直な物言いで Tumblr ユーザーに語りかけています。
追記:20日にニュヨークで開かれたメディアイベントでは、やっちまったほうの買収案件 Flickr の全面リニューアル発表のほか、質疑セッションでは Tumblr 買収についても多くの回答がありました。詳しくは Flickr 記事へ。
まず両社連名の正式な発表文では合意に続く2文目から、買収で Tumblr を「台無しにしない約束」として、 買収後も Tumblr は Yahoo 本体とは「別個のビジネス」として独立運営されること、創業CEOの David Karp が引き続き指揮することを明確にしました。
さらに、製品・サービスおよびブランドは引き続きTumblr 流の「遠慮のなさ、機知、クリエーターの力になることへの献身」によって独立して開発・決定されることなどを挙げ、既存 Tumblr ユーザーの動揺を鎮めることに努めています。
Yahoo のマリッサ・メイヤーCEO が yahoo.tumblr.com に投稿したのは、こちらもまず冒頭が「We promise not to screw it up. ぶち壊しにしないと約束します」から始まる文章。ほぼプレスリリースの内容に沿ったものですが、加えて Tumblr 側の今後のプロダクトロードマップも、チームも、率直で機知に富んだ態度も変わらないこと、Tumblr の目標である「クリエーターに力を与え、最高の作品を作り、ふさわしいオーディエンスの前に提示できるようにすること」は今後もそのままであると強調しています。
では買収でなにが変わるのか、といえば、Tumblrにとっては Yahoo のパーソナライゼーション技術や検索インフラを活用でき、ユーザーが求めるクリエーターやブロガー、コンテンツをもっと見つけやすくできること。Yahoo にとってはTumblr の500億ポストと、今後も毎秒900件・毎日7500万件のペースで加わる投稿が Yahoo のメディアネットワークと(より良い)検索体験に加わること。
またTumblrはこれまでマネタイズ後回しで快適さとユーザーベース拡大を優先してきましたが、ユーザーにとって気になる広告についても軽く触れられています。そちらは「両社は Tumblrにとって違和感がなく、ユーザーエクスペリエンスをより強化できるような広告の機会を作りだすことで協力します」。
さらにメイヤーCEOのコメントを引けば、「多くの意味で、TumblrとYahooほど違う組み合わせもありません。しかし同時に、これほど相補的な組み合わせもないでしょう」。メイヤー氏といえば、昨年夏に米Yahoo のCEOになる以前は Google のバイスプレジデントとして、検索や地図サービスなど担当の「Googleの顔」のひとりを務めていました。
一方、Tumblr 側の当事者デイヴィッド・カープCEO (1986年生まれ26歳) は、staff.tumblr.com にもう少し簡潔で率直な文を載せています。そちらはまず「Tumblr が Yahooに加わると伝えられてとてもうれしい」と切り出したあと (そのまま引用すると):
「これがどれほど素晴らしいことか説明する前に、まず心配を払拭させてほしい:われわれはムラサキにはならない。各ヘッドクオーターは移転しない。チームも変わらない。開発ロードマップは変わらない。そして、『クリエーターの力になり、最高の作品を作りふさわしい相手に届けられるよう手助けする』という使命は決して変わらない」
ではどう変わるのか、については、カープCEOによれば「単純に、Tumblr はもっと速く、良くなる」。やるべき仕事は以前から変わらず、まだまだ先は長いが、今後はもっとリソースが増えるのだ、と簡潔にして楽観的な説明です。
Yahooについては、元祖インターネット企業であり、メリッサ(CEO)は「インターネットをクリエーターのための究極のカンバスにする」というTumblrの夢を共有している、彼女に力を貸してもらえてこれほどありがたいことはないとの評価。
商売の面についても、広告という言葉はないものの、コミュニティや皆が愛するプロダクトを損なうことのないTumblr のビジネスのビジョンを共有できている、と表現しています。
結びは「これまでもそうだったように、Tumblrのすべては、この信じられないほどすばらしいコミュニティのおかげで成り立っている。失望はさせない。」(ついでに署名は「Fuck yeah, David」)。
このように、少なくとも両社CEOコメントのレベルでは、また特に Tumblr のサービスを David 個人の資質に結びつけて解釈してきたようなコアなオーディエンスにとっては、当面の心配を軽減させる言葉が並んでいます。 逆にいえば、「米Yahooに買われるとロクなことにならないだろう」という反応が世界的にここまで大きかったことに改めて感慨を覚えざるを得ません。
米 Yahoo が Tumblr の買収を正式に認めました。Yahoo と Tumblr の共同発表によると、両社は Yahoo が Tumblr を11億ドルで買収することで包括的合意に至ったとのこと。
両社連名のプレスリリースのほか、Yahooの CEO Marissa Mayer 氏と Tumblr の CEO David Karp 氏はそれぞれ Tumblr 上で個人名のコメントを出しており、特に Tumblr のカープCEOはいかにも当人らしい率直な物言いで Tumblr ユーザーに語りかけています。
追記:20日にニュヨークで開かれたメディアイベントでは、やっちまったほうの買収案件 Flickr の全面リニューアル発表のほか、質疑セッションでは Tumblr 買収についても多くの回答がありました。詳しくは Flickr 記事へ。
まず両社連名の正式な発表文では合意に続く2文目から、買収で Tumblr を「台無しにしない約束」として、 買収後も Tumblr は Yahoo 本体とは「別個のビジネス」として独立運営されること、創業CEOの David Karp が引き続き指揮することを明確にしました。
さらに、製品・サービスおよびブランドは引き続きTumblr 流の「遠慮のなさ、機知、クリエーターの力になることへの献身」によって独立して開発・決定されることなどを挙げ、既存 Tumblr ユーザーの動揺を鎮めることに努めています。
Yahoo のマリッサ・メイヤーCEO が yahoo.tumblr.com に投稿したのは、こちらもまず冒頭が「We promise not to screw it up. ぶち壊しにしないと約束します」から始まる文章。ほぼプレスリリースの内容に沿ったものですが、加えて Tumblr 側の今後のプロダクトロードマップも、チームも、率直で機知に富んだ態度も変わらないこと、Tumblr の目標である「クリエーターに力を与え、最高の作品を作り、ふさわしいオーディエンスの前に提示できるようにすること」は今後もそのままであると強調しています。
では買収でなにが変わるのか、といえば、Tumblrにとっては Yahoo のパーソナライゼーション技術や検索インフラを活用でき、ユーザーが求めるクリエーターやブロガー、コンテンツをもっと見つけやすくできること。Yahoo にとってはTumblr の500億ポストと、今後も毎秒900件・毎日7500万件のペースで加わる投稿が Yahoo のメディアネットワークと(より良い)検索体験に加わること。
またTumblrはこれまでマネタイズ後回しで快適さとユーザーベース拡大を優先してきましたが、ユーザーにとって気になる広告についても軽く触れられています。そちらは「両社は Tumblrにとって違和感がなく、ユーザーエクスペリエンスをより強化できるような広告の機会を作りだすことで協力します」。
さらにメイヤーCEOのコメントを引けば、「多くの意味で、TumblrとYahooほど違う組み合わせもありません。しかし同時に、これほど相補的な組み合わせもないでしょう」。メイヤー氏といえば、昨年夏に米Yahoo のCEOになる以前は Google のバイスプレジデントとして、検索や地図サービスなど担当の「Googleの顔」のひとりを務めていました。
一方、Tumblr 側の当事者デイヴィッド・カープCEO (1986年生まれ26歳) は、staff.tumblr.com にもう少し簡潔で率直な文を載せています。そちらはまず「Tumblr が Yahooに加わると伝えられてとてもうれしい」と切り出したあと (そのまま引用すると):
「これがどれほど素晴らしいことか説明する前に、まず心配を払拭させてほしい:われわれはムラサキにはならない。各ヘッドクオーターは移転しない。チームも変わらない。開発ロードマップは変わらない。そして、『クリエーターの力になり、最高の作品を作りふさわしい相手に届けられるよう手助けする』という使命は決して変わらない」
ではどう変わるのか、については、カープCEOによれば「単純に、Tumblr はもっと速く、良くなる」。やるべき仕事は以前から変わらず、まだまだ先は長いが、今後はもっとリソースが増えるのだ、と簡潔にして楽観的な説明です。
Yahooについては、元祖インターネット企業であり、メリッサ(CEO)は「インターネットをクリエーターのための究極のカンバスにする」というTumblrの夢を共有している、彼女に力を貸してもらえてこれほどありがたいことはないとの評価。
商売の面についても、広告という言葉はないものの、コミュニティや皆が愛するプロダクトを損なうことのないTumblr のビジネスのビジョンを共有できている、と表現しています。
結びは「これまでもそうだったように、Tumblrのすべては、この信じられないほどすばらしいコミュニティのおかげで成り立っている。失望はさせない。」(ついでに署名は「Fuck yeah, David」)。
このように、少なくとも両社CEOコメントのレベルでは、また特に Tumblr のサービスを David 個人の資質に結びつけて解釈してきたようなコアなオーディエンスにとっては、当面の心配を軽減させる言葉が並んでいます。 逆にいえば、「米Yahooに買われるとロクなことにならないだろう」という反応が世界的にここまで大きかったことに改めて感慨を覚えざるを得ません。
「まだまだミクシィは終わらない、第2の黄金期を作る」──新社長が抱負、mixiはスマホアプリにシフト
ITmedia(2013.5.15)
「まだまだミクシィは終わらない、第2の黄金期を作るつもりで取り組む」──ミクシィの社長に就任する同社の朝倉祐介執行役員は5月15日の会見で抱負を語った。創業者で「mixi」を育てた笠原健治社長は代表権のない会長に就き、新事業に専念。若返った新経営体制は「ユーザーファースト」を引き継ぎつつ、スマートフォンネイティブアプリへのシフトなど「第2の黄金期」に向けた取り組みを進める。
朝倉氏は30歳。中学卒業と同時に競馬の騎手を目指してオーストラリアに渡り、帰国後は競走馬育成に従事したという経歴を持つ。東京大学法学部を卒業後、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーを経てアプリプラットフォームなどを展開するベンチャー「ネイキッドテクノロジー」の社長を務め、同社が2011年9月に買収される形でミクシィに加わった。
朝倉氏は「10年前、1ユーザーとして愛していたサービスを擁する会社を統括する立場になるのは不思議な感覚。重い責任を感じるが、これほどやりがいがある仕事もない」と意気込む。退任する笠原氏は「大手コンサルティングファームとネットベンチャー社長という2つの立場の経験を生かし、冷静でありながら情熱的に物事を判断できる」と評価する。
●mixiはネイティブアプリにシフト
新経営体制では、社長兼CEOの朝倉氏のもと、mixi事業を統括する最高事業責任者に川崎裕一氏が就任する。川崎氏ははてな副社長を経てソーシャルサービスを手がけるkamadoを創業。朝倉氏と同様、ミクシィによる買収で同社に加わった。
笠原氏は新経営体制について、「朝倉新社長は前年度から、『ユーザーファースト』の提唱やユニット制の導入など社内改革を主導してきている。体制変更は、経営陣の中でそれぞれがより得意な分野に注力しパフォーマンスを最大化するための施策だ」と説明する。笠原氏は今後、新規事業立ち上げに専念し、取締役会長として新体制をサポートしていく。
屋台骨となるSNS「mixi」は、昨年度掲げた「ユーザーファースト」を今後も継続。利用率でアプリはWebブラウザの1.6倍に上っており、これを踏まえてスマートフォン向けネイティブアプリの開発に注力。写真や日記、ゲームなど個別の機能ごとにアプリを提供し、全体のトラフィックとユーザー課金の拡大を目指す。
現在mixiが展開しているネイティブアプリは「mixi」本体と「コミュニティ」に特化した「mixiコミュニティ」の2本で、3月時点のダウンロード数は累計1000万件を突破している。今後アプリ数を50本に増やすことを目標に掲げ、アプリエンジニアを4倍に増加させるほか、Webエンジニアがスムーズにスマホアプリを開発できる環境構築にも重点的に取り組む。
●「変革」へmixi収益拡大やVCも
朝倉氏は、“新生ミクシィ”が全社を挙げて取り組む「変革」として「mixi内外での収益拡大」を挙げる。広告収入が振るわなくなる中、mixi内ではネイティブアプリへのシフトによるサービス向上と課金機会の拡大で深耕し、さらに日本最大級のコミュニティーサービスを9年にわたって運営してきた技術力やノウハウが生きる外部向け事業も展開していく。
「外」向け事業は順次設立する戦略子会社が担う。第1弾として7月に設立する「ミクシィマーケティング」は、過去展開したユーザー参加型プロモーション事例などをもとにマーケティングソリューションを開発。スマホ向けDSP事業「Vantage」やネットポイントサービス「モラッポ」も担当する。
自社にない技術やサービスを取り込み「今までの延長線上ではない非連続的な成長を促す」(朝倉新社長)ため、外部事業への投資も積極化。7月1日付けで投資子会社「アイ・マーキュリーキャピタル」を設立し、50億円規模のベンチャーキャピタルに乗り出す。企業売買による利益創出ではなく、目標はあくまでも事業拡大。「今あるキャッシュを生かし、自社の成長につなげるための投資をオフライン事業も含め積極的に実施していきたい」(朝倉新社長)という。
●「ギラついたミクシィを取り戻す」
「長期的に見ると最も重要で本質的」としたのは、人材の育成と輩出。開発体制を変更し、少人数のチームに裁量と収益責任を持たせるユニット制を敷いたことで、年齢や実績に関わらず優秀な人材に“真剣勝負の場”を提供することができたと言う。
「自身の大学の先輩でもある笠原さんが、学生の頃に立ち上げたベンチャー企業をここまで大きくしたことを僕自身心から尊敬している。アントレプレナーシップマインドを継承し、スピード感と緊張感がある環境で、創業当時のようなギラついたミクシィを取り戻したい。競馬で例えるなら、G1レベルの人材をそろえてダービーに勝ちに行くつもり」(朝倉新社長)
「まだまだミクシィは終わらない、第2の黄金期を作るつもりで取り組む」──ミクシィの社長に就任する同社の朝倉祐介執行役員は5月15日の会見で抱負を語った。創業者で「mixi」を育てた笠原健治社長は代表権のない会長に就き、新事業に専念。若返った新経営体制は「ユーザーファースト」を引き継ぎつつ、スマートフォンネイティブアプリへのシフトなど「第2の黄金期」に向けた取り組みを進める。
朝倉氏は30歳。中学卒業と同時に競馬の騎手を目指してオーストラリアに渡り、帰国後は競走馬育成に従事したという経歴を持つ。東京大学法学部を卒業後、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーを経てアプリプラットフォームなどを展開するベンチャー「ネイキッドテクノロジー」の社長を務め、同社が2011年9月に買収される形でミクシィに加わった。
朝倉氏は「10年前、1ユーザーとして愛していたサービスを擁する会社を統括する立場になるのは不思議な感覚。重い責任を感じるが、これほどやりがいがある仕事もない」と意気込む。退任する笠原氏は「大手コンサルティングファームとネットベンチャー社長という2つの立場の経験を生かし、冷静でありながら情熱的に物事を判断できる」と評価する。
●mixiはネイティブアプリにシフト
新経営体制では、社長兼CEOの朝倉氏のもと、mixi事業を統括する最高事業責任者に川崎裕一氏が就任する。川崎氏ははてな副社長を経てソーシャルサービスを手がけるkamadoを創業。朝倉氏と同様、ミクシィによる買収で同社に加わった。
笠原氏は新経営体制について、「朝倉新社長は前年度から、『ユーザーファースト』の提唱やユニット制の導入など社内改革を主導してきている。体制変更は、経営陣の中でそれぞれがより得意な分野に注力しパフォーマンスを最大化するための施策だ」と説明する。笠原氏は今後、新規事業立ち上げに専念し、取締役会長として新体制をサポートしていく。
屋台骨となるSNS「mixi」は、昨年度掲げた「ユーザーファースト」を今後も継続。利用率でアプリはWebブラウザの1.6倍に上っており、これを踏まえてスマートフォン向けネイティブアプリの開発に注力。写真や日記、ゲームなど個別の機能ごとにアプリを提供し、全体のトラフィックとユーザー課金の拡大を目指す。
現在mixiが展開しているネイティブアプリは「mixi」本体と「コミュニティ」に特化した「mixiコミュニティ」の2本で、3月時点のダウンロード数は累計1000万件を突破している。今後アプリ数を50本に増やすことを目標に掲げ、アプリエンジニアを4倍に増加させるほか、Webエンジニアがスムーズにスマホアプリを開発できる環境構築にも重点的に取り組む。
●「変革」へmixi収益拡大やVCも
朝倉氏は、“新生ミクシィ”が全社を挙げて取り組む「変革」として「mixi内外での収益拡大」を挙げる。広告収入が振るわなくなる中、mixi内ではネイティブアプリへのシフトによるサービス向上と課金機会の拡大で深耕し、さらに日本最大級のコミュニティーサービスを9年にわたって運営してきた技術力やノウハウが生きる外部向け事業も展開していく。
「外」向け事業は順次設立する戦略子会社が担う。第1弾として7月に設立する「ミクシィマーケティング」は、過去展開したユーザー参加型プロモーション事例などをもとにマーケティングソリューションを開発。スマホ向けDSP事業「Vantage」やネットポイントサービス「モラッポ」も担当する。
自社にない技術やサービスを取り込み「今までの延長線上ではない非連続的な成長を促す」(朝倉新社長)ため、外部事業への投資も積極化。7月1日付けで投資子会社「アイ・マーキュリーキャピタル」を設立し、50億円規模のベンチャーキャピタルに乗り出す。企業売買による利益創出ではなく、目標はあくまでも事業拡大。「今あるキャッシュを生かし、自社の成長につなげるための投資をオフライン事業も含め積極的に実施していきたい」(朝倉新社長)という。
●「ギラついたミクシィを取り戻す」
「長期的に見ると最も重要で本質的」としたのは、人材の育成と輩出。開発体制を変更し、少人数のチームに裁量と収益責任を持たせるユニット制を敷いたことで、年齢や実績に関わらず優秀な人材に“真剣勝負の場”を提供することができたと言う。
「自身の大学の先輩でもある笠原さんが、学生の頃に立ち上げたベンチャー企業をここまで大きくしたことを僕自身心から尊敬している。アントレプレナーシップマインドを継承し、スピード感と緊張感がある環境で、創業当時のようなギラついたミクシィを取り戻したい。競馬で例えるなら、G1レベルの人材をそろえてダービーに勝ちに行くつもり」(朝倉新社長)
2013年8月23日金曜日
ホンダ 大型バイク「NC700X」 「みんなが反対することをやりたい」 フィット真っ二つエンジンで低燃費を実現 青木柾憲さん(本田技術研究所 上席研究員)
WEDGE(2013.8.15)
求めやすい価格や高い燃費性能、さらに乗りやすさなどが評価され、2012年度には排気量401cc以上の大型バイク市場で米国のライバル社を抑えてトップになった。派生モデルを含む同年度の販売台数は約5100台と、目標の3500台も大きく上回っている。
価格は64万円台からで、12年2月の発売時はホンダの400cc級の製品よりも安く、バイクファンを驚かせた。開発の指揮を執ったのはホンダの研究開発部門である本田技術研究所の二輪R&Dセンター上席研究員、青木柾憲(58歳)。入社以来、米国の研究所勤務時代も含めバイク開発一筋であり、責任者として手掛けたモデルだけでざっと20台に及ぶ。数々のヒット車を生み出したベテラン技術者だ。
青木に開発の指示があったのは08年3月。いわゆるナナハン(排気量750cc)級で既存車より30%のコスト削減を図るという内容だった。トップメーカーとして、国内バイク市場の長期低迷に何とか手を打ちたい、という狙いがあった。排気量251cc以上の中型・大型車の市場は1980年代半ばに15万台規模だったのが、08年には3分の1まで縮小していた。
需要が縮むので量産効果が薄れて価格は上昇、するとユーザー離れが加速―といった負のスパイラルを断つため、コストからアプローチしようというわけだ。しかし、これほど具体性に欠ける開発方針は、ホンダでも異例だったという。
そこは百戦錬磨の青木。「コストさえ下げれば何をやってもいいのだろう」と解釈し、プロジェクトを立ち上げた。「好きにさせてもらう、という感じですよ」と、青木は悪戯っぽく笑う。とはいえ、数十人の技術者が参画するプロジェクトだけに、「コスト低減」だけではベクトルは定まらない。自由度が高いと、逆に目指す製品像がなかなか見えて来ないのだった。青木には「好きにできるというのに、多くのメンバーが既成概念に縛られている」と映った。
前に進めるため、青木は同年7月に北海道の自社テストコースにメンバー30人余りを集めて合宿した。500~800cc級の国内外のバイク14台を用意し、各人が乗り比べたのだ。ひと晩だけは全員集合して夕食を兼ねたミーティングを開き、さまざまな意見をぶつけ合った。
これにより、トップの燃費性能をめざすこと、高速のみならず日常の走りも楽しくなるエンジン特性の確保といった大まかな方向性が固まり、開発メンバー間の意思疎通も少し深まった。それでもカチッとした製品コンセプトを固めるには至らなかった。
眠れぬほど気になった居酒屋で出た意見
ある日、青木がメンバーと居酒屋で意見を交わしていた時だった。心臓部のエンジンを担当する主任研究員の山本俊朗が「フィットの1.3リットルのエンジンをパカッと切って半分にしたら、燃費のいいのができる」と話した。最初は「酔った勢いの発言」と受け流していた青木だが、その夜、眠れないほど引っ掛かった。結局、翌日には山本に半分に切ったエンジン開発を指示した。
「NC700X」のエンジンが直列2気筒670ccとなったのは、実際に同社のベストセラー乗用車「フィット」の低燃費エンジンをモデルにしたからだ。直列4気筒を2気筒にし、シリンダ(燃焼室)径などはそのまま踏襲した。ただし、バイクのエンジンなので2つの燃焼室での爆発タイミングを故意にずらすよう味付けをした。バイク用語では「鼓動感」と呼ぶそうだが、「ドドッ、ドドッ」と独特のリズムを奏でるようにしている。
燃費は1リットルで41キロ(時速60キロ定地走行)と、400cc級にも勝るレベルを実現した。エンジンの最高回転は毎分6400回転と、このクラスでは1万回転以上が当たり前だったホンダのバイク用エンジンとは全く素性の異なるものができた。回転を抑制することで低中速域から十分なトルク(回転力)が得られるので、多くのユーザーから「乗りやすいのに加速感も十分」との評価を得ることにつながった。
もっとも大型用のエンジンとしては型破りなので、青木は社内の酷評を覚悟していた。それを克服して商品化に進むには、実際に乗ってもらうことだった。09年の夏、役員も交えた開発中のバイクの試乗検討会が北海道で行われた。ホンダの役員は全員大型バイクを操ることができるが、とくに社長の伊東孝紳はバイクが大好きで、しっかりした評価軸ももつ。数々の試乗車から伊東が最高の評価を与えたのは、青木チームのバイクであり、事実上の商品化ゴーサインとなった。
そもそもの課題であったコストは、国内で生産するだけに厳しかったものの、材料歩留まりを高める新工法など日本ならではのアプローチを進めた。
同時に、アジアを中心にホンダの海外工場に納入するサプライヤーからも部品を調達、海外部品比率を4割程度にすることで目標に到達させた。
速射砲のように繰り出される青木の話は愉快で、相手を飽きさせない。印象的だったのは、「みんなが反対するのは、既成概念をはみ出しているから。むしろそこにヒットの可能性がある。だから私はみんなが反対することをやりたい」。さらに「最大の敵は、前例のないことを否定する社内の壁」とも言い切る。ホンダには貴重な、尖った理念をもつエンジニアでもある。(敬称略)
■メイキング オブ ヒットメーカー 青木柾憲(あおき・まさのり)さん 本田技術研究所 上席研究員
1954年生まれ
長野県長野市生まれ。幼稚園の時分に音楽に目覚め、中学2年までピアノ教室に足しげく通った音楽少年であった。県立長野高校へ進学し、軽音楽部でキーボードを担当した。高校1年時に二輪免許を取得。
1974年(19歳)
電気通信大学工学部機械工学科へ進学し、吉祥寺で一人暮らしを始める。いわゆる貧乏学生で、バイクとは無縁の生活を過ごした。趣味の音楽では、作曲活動なども行い、ラジオに投稿した自作の曲が放送されることもあった。就職活動では音楽活動をウリにした。
1978年(23歳)
ホンダに入社。「クルマよりバイクのほうが技術者の裁量が大きく、全部作れそう」とバイク部門を希望。念願叶って、2年目に埼玉県朝霞市にある現在の二輪R&Dセンターに配属となった。93~96年の米国カリフォルニア州駐在を除けば、一貫して朝霞で働いた。
2003年(48歳)
03年から開発責任者を離れ、コスト企画や小型バイクなどの管理業務を担当した時期もあった。だが、「マネジメント業務は性に合わない。開発責任者への復帰を熱烈に希望した」甲斐もあり、06年に天職である開発責任者へ戻った。自宅にはグランドピアノが2台ある。「音楽もバイクも良いモノを作りたいという私の欲求を満たしてくれるという点で同じ」という。
求めやすい価格や高い燃費性能、さらに乗りやすさなどが評価され、2012年度には排気量401cc以上の大型バイク市場で米国のライバル社を抑えてトップになった。派生モデルを含む同年度の販売台数は約5100台と、目標の3500台も大きく上回っている。
価格は64万円台からで、12年2月の発売時はホンダの400cc級の製品よりも安く、バイクファンを驚かせた。開発の指揮を執ったのはホンダの研究開発部門である本田技術研究所の二輪R&Dセンター上席研究員、青木柾憲(58歳)。入社以来、米国の研究所勤務時代も含めバイク開発一筋であり、責任者として手掛けたモデルだけでざっと20台に及ぶ。数々のヒット車を生み出したベテラン技術者だ。
青木に開発の指示があったのは08年3月。いわゆるナナハン(排気量750cc)級で既存車より30%のコスト削減を図るという内容だった。トップメーカーとして、国内バイク市場の長期低迷に何とか手を打ちたい、という狙いがあった。排気量251cc以上の中型・大型車の市場は1980年代半ばに15万台規模だったのが、08年には3分の1まで縮小していた。
需要が縮むので量産効果が薄れて価格は上昇、するとユーザー離れが加速―といった負のスパイラルを断つため、コストからアプローチしようというわけだ。しかし、これほど具体性に欠ける開発方針は、ホンダでも異例だったという。
そこは百戦錬磨の青木。「コストさえ下げれば何をやってもいいのだろう」と解釈し、プロジェクトを立ち上げた。「好きにさせてもらう、という感じですよ」と、青木は悪戯っぽく笑う。とはいえ、数十人の技術者が参画するプロジェクトだけに、「コスト低減」だけではベクトルは定まらない。自由度が高いと、逆に目指す製品像がなかなか見えて来ないのだった。青木には「好きにできるというのに、多くのメンバーが既成概念に縛られている」と映った。
前に進めるため、青木は同年7月に北海道の自社テストコースにメンバー30人余りを集めて合宿した。500~800cc級の国内外のバイク14台を用意し、各人が乗り比べたのだ。ひと晩だけは全員集合して夕食を兼ねたミーティングを開き、さまざまな意見をぶつけ合った。
これにより、トップの燃費性能をめざすこと、高速のみならず日常の走りも楽しくなるエンジン特性の確保といった大まかな方向性が固まり、開発メンバー間の意思疎通も少し深まった。それでもカチッとした製品コンセプトを固めるには至らなかった。
眠れぬほど気になった居酒屋で出た意見
ある日、青木がメンバーと居酒屋で意見を交わしていた時だった。心臓部のエンジンを担当する主任研究員の山本俊朗が「フィットの1.3リットルのエンジンをパカッと切って半分にしたら、燃費のいいのができる」と話した。最初は「酔った勢いの発言」と受け流していた青木だが、その夜、眠れないほど引っ掛かった。結局、翌日には山本に半分に切ったエンジン開発を指示した。
「NC700X」のエンジンが直列2気筒670ccとなったのは、実際に同社のベストセラー乗用車「フィット」の低燃費エンジンをモデルにしたからだ。直列4気筒を2気筒にし、シリンダ(燃焼室)径などはそのまま踏襲した。ただし、バイクのエンジンなので2つの燃焼室での爆発タイミングを故意にずらすよう味付けをした。バイク用語では「鼓動感」と呼ぶそうだが、「ドドッ、ドドッ」と独特のリズムを奏でるようにしている。
燃費は1リットルで41キロ(時速60キロ定地走行)と、400cc級にも勝るレベルを実現した。エンジンの最高回転は毎分6400回転と、このクラスでは1万回転以上が当たり前だったホンダのバイク用エンジンとは全く素性の異なるものができた。回転を抑制することで低中速域から十分なトルク(回転力)が得られるので、多くのユーザーから「乗りやすいのに加速感も十分」との評価を得ることにつながった。
もっとも大型用のエンジンとしては型破りなので、青木は社内の酷評を覚悟していた。それを克服して商品化に進むには、実際に乗ってもらうことだった。09年の夏、役員も交えた開発中のバイクの試乗検討会が北海道で行われた。ホンダの役員は全員大型バイクを操ることができるが、とくに社長の伊東孝紳はバイクが大好きで、しっかりした評価軸ももつ。数々の試乗車から伊東が最高の評価を与えたのは、青木チームのバイクであり、事実上の商品化ゴーサインとなった。
そもそもの課題であったコストは、国内で生産するだけに厳しかったものの、材料歩留まりを高める新工法など日本ならではのアプローチを進めた。
同時に、アジアを中心にホンダの海外工場に納入するサプライヤーからも部品を調達、海外部品比率を4割程度にすることで目標に到達させた。
速射砲のように繰り出される青木の話は愉快で、相手を飽きさせない。印象的だったのは、「みんなが反対するのは、既成概念をはみ出しているから。むしろそこにヒットの可能性がある。だから私はみんなが反対することをやりたい」。さらに「最大の敵は、前例のないことを否定する社内の壁」とも言い切る。ホンダには貴重な、尖った理念をもつエンジニアでもある。(敬称略)
■メイキング オブ ヒットメーカー 青木柾憲(あおき・まさのり)さん 本田技術研究所 上席研究員
1954年生まれ
長野県長野市生まれ。幼稚園の時分に音楽に目覚め、中学2年までピアノ教室に足しげく通った音楽少年であった。県立長野高校へ進学し、軽音楽部でキーボードを担当した。高校1年時に二輪免許を取得。
1974年(19歳)
電気通信大学工学部機械工学科へ進学し、吉祥寺で一人暮らしを始める。いわゆる貧乏学生で、バイクとは無縁の生活を過ごした。趣味の音楽では、作曲活動なども行い、ラジオに投稿した自作の曲が放送されることもあった。就職活動では音楽活動をウリにした。
1978年(23歳)
ホンダに入社。「クルマよりバイクのほうが技術者の裁量が大きく、全部作れそう」とバイク部門を希望。念願叶って、2年目に埼玉県朝霞市にある現在の二輪R&Dセンターに配属となった。93~96年の米国カリフォルニア州駐在を除けば、一貫して朝霞で働いた。
2003年(48歳)
03年から開発責任者を離れ、コスト企画や小型バイクなどの管理業務を担当した時期もあった。だが、「マネジメント業務は性に合わない。開発責任者への復帰を熱烈に希望した」甲斐もあり、06年に天職である開発責任者へ戻った。自宅にはグランドピアノが2台ある。「音楽もバイクも良いモノを作りたいという私の欲求を満たしてくれるという点で同じ」という。
“LINE疲れ”に陥る学生たち 「返信は義務」80%…既読機能が苦痛
SankeiBiz(2013.8.23)
便利なコミュニケーションツールとして利用者が増え続けている「LINE」。7月には、サービス開始からわずか2年で世界の利用者が2億人を突破した。無料に加え、大勢の仲間と同時に通話やメッセージのやり取りができることから、大学生には必須アイテムだ。ところが、相手にメッセージを読んだことを伝える「既読」表示機能が、精神的なプレッシャーとなるなど、“LINE疲れ”に悩む学生が少なくないという。関西大学総合情報学部・谷本奈穂ゼミの有志学生記者たちが、キャンパスのLINE事情をリポートする。
LINEは、24時間いつでもどこでも、無料で通話やメッセージのやり取りができるコミュニケーションアプリである。世界231カ国で使われ、登録ユーザー数は現在も破竹の勢いで増え続けている。LINEには、送られてきたメッセージを開くと「既読」というマークが相手に表示される機能がある。東日本大震災などの災害を教訓に、災害時に家族や友人の安否確認をできるようにするために導入されたそうだ。
ところが、この便利な機能が想定外の問題をもたらしている。メッセージを開くと、相手に「既読」が伝わるため、そのまま何も返信しないと相手が気分を害するのではないかと、プレッシャーに感じる学生が少なくないというのだ。実際、それがきっかけで、信頼関係が失われたり、関係が悪くなったりし、いじめにまで発展したというケースもあるという。最近は、「既読」が表示されないようにするアプリまで登場しており、多くの利用者が「既読」機能に苦痛を感じているのである。
頻繁なメッセージ通知や既読への対応…。“LINE疲れ”の実態を調べるため、関西大学のキャンパスで6月に100人の学生を対象としたアンケートを行った。まず、「LINEを使用していますか」との質問に、「使用している」と答えた学生は実に98%を占めた。「使用している」と答えた学生に対して、「LINEの既読が気になりますか」と尋ねたところ、「気になる」と回答した学生が76%に上り、「気にならない」の24%の3倍という結果になった。
「既読機能があるため、相手に返信しなければならないと思いますか」との質問には、「思う」と回答した学生が80%を占めた。「既読が気になる」との回答数を上回っており、気にはならなくても、返信が「ほぼ義務」となっている実態が浮かび上がってきた。アンケートを通じて、“LINE疲れ”を感じているという学生数人にインタビューをすることができた。
LINE疲れの原因として、ある学生は、「LINEを使ってグループで何かを決める際に、全員の既読がつかない時や、既読をつけているにもかかわらず返信をしてくれない時に、非常にストレスや疲れを感じてしまいます」と答えてくれた。「通知を押してトーク画面を開くと、既読がついてしまい、その時は忙しくて返信できない状況でも、すぐに返信しなければいけないと思ってしまいます」と話す学生もいた。
さらに別の学生は「グループ間で連絡を取り合う際、既読は何人と表示されるだけなので、誰が連絡を見ていて、誰が連絡を見ていないのか、分からない。全員の既読が表示されないと、話が前に進まない時があります」と、具体的な実例を挙げてくれた。
便利なコミュニケーションツールとして利用者が増え続けている「LINE」。7月には、サービス開始からわずか2年で世界の利用者が2億人を突破した。無料に加え、大勢の仲間と同時に通話やメッセージのやり取りができることから、大学生には必須アイテムだ。ところが、相手にメッセージを読んだことを伝える「既読」表示機能が、精神的なプレッシャーとなるなど、“LINE疲れ”に悩む学生が少なくないという。関西大学総合情報学部・谷本奈穂ゼミの有志学生記者たちが、キャンパスのLINE事情をリポートする。
LINEは、24時間いつでもどこでも、無料で通話やメッセージのやり取りができるコミュニケーションアプリである。世界231カ国で使われ、登録ユーザー数は現在も破竹の勢いで増え続けている。LINEには、送られてきたメッセージを開くと「既読」というマークが相手に表示される機能がある。東日本大震災などの災害を教訓に、災害時に家族や友人の安否確認をできるようにするために導入されたそうだ。
ところが、この便利な機能が想定外の問題をもたらしている。メッセージを開くと、相手に「既読」が伝わるため、そのまま何も返信しないと相手が気分を害するのではないかと、プレッシャーに感じる学生が少なくないというのだ。実際、それがきっかけで、信頼関係が失われたり、関係が悪くなったりし、いじめにまで発展したというケースもあるという。最近は、「既読」が表示されないようにするアプリまで登場しており、多くの利用者が「既読」機能に苦痛を感じているのである。
頻繁なメッセージ通知や既読への対応…。“LINE疲れ”の実態を調べるため、関西大学のキャンパスで6月に100人の学生を対象としたアンケートを行った。まず、「LINEを使用していますか」との質問に、「使用している」と答えた学生は実に98%を占めた。「使用している」と答えた学生に対して、「LINEの既読が気になりますか」と尋ねたところ、「気になる」と回答した学生が76%に上り、「気にならない」の24%の3倍という結果になった。
「既読機能があるため、相手に返信しなければならないと思いますか」との質問には、「思う」と回答した学生が80%を占めた。「既読が気になる」との回答数を上回っており、気にはならなくても、返信が「ほぼ義務」となっている実態が浮かび上がってきた。アンケートを通じて、“LINE疲れ”を感じているという学生数人にインタビューをすることができた。
LINE疲れの原因として、ある学生は、「LINEを使ってグループで何かを決める際に、全員の既読がつかない時や、既読をつけているにもかかわらず返信をしてくれない時に、非常にストレスや疲れを感じてしまいます」と答えてくれた。「通知を押してトーク画面を開くと、既読がついてしまい、その時は忙しくて返信できない状況でも、すぐに返信しなければいけないと思ってしまいます」と話す学生もいた。
さらに別の学生は「グループ間で連絡を取り合う際、既読は何人と表示されるだけなので、誰が連絡を見ていて、誰が連絡を見ていないのか、分からない。全員の既読が表示されないと、話が前に進まない時があります」と、具体的な実例を挙げてくれた。
2013年8月20日火曜日
経営悪化のグリー、任天堂のパクリゲーを次々と配信中止に
きま速(2013.8.20)
今回グリーは、巨額の特別損失を計上し、ソフトの開発中止やサービス中止しました。それらの中止ソフトから、これまでのグリーの必勝パターンが崩れていることが見えてきます。かつて、グリーの田中社長は、「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」と言ってのけました。
「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」
http://news.livedoor.com/article/detail/5864856/
このパクリ上等発言は、かなり物議をかもしまして、実際にパクリゲームを連発するグリーに、憤る声も多かったのです。
「GREEのゲームはパクリだらけ? そんな疑惑ゲーム一覧」
http://getnews.jp/archives/115930
しかし、やはりそんなパクリゲームは長続きしませんでした。上記の記事に取り上げられた、『ラブプラス』のパクリである「ヒメこい」、『けいおん』のパクリである「いもこい」、『魔法少女まどか☆マギカ』のパクリである「契約魔法少女」は、いずれも1年経たずサービスを停止しました。
そして今期、特別損失として計上されたソフト郡を見ると、数々のパクリシリーズが相次いでサービス中止になったのです。
●『マリオカート』をパクッたように見える「Wacky Motors」
http://jp.product.gree.net/wacky/motors/ 8月28日サービス終了
●『nintendogs』をパクッたようにしか見えない「ともだち☆ドッグス」
http://jp.product.gree.net/dogs/ 8月12日サービス終了
●『ポケットモンスター』をパクッたとしか思えない「MONPLA SMASH」
http://jp.product.gree.net/monpla/smash/ 8月28日サービス終了
任天堂関係では、「おいでよ、どうぶつの森」をパクッた感じの「どうぶつフレンズ」が、まだ生き残っています。これまでの成功パターンが崩れたグリー。これからの展開はどうなるのでしょうか?事業計画が公開されてないため、どうなるか予断を許しません。もし、懲りずに『パズル&ドラゴンズ』のパクリソフトが出たら、また取り上げたいと思います。
今回グリーは、巨額の特別損失を計上し、ソフトの開発中止やサービス中止しました。それらの中止ソフトから、これまでのグリーの必勝パターンが崩れていることが見えてきます。かつて、グリーの田中社長は、「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」と言ってのけました。
「あるゲームが流行ったら、同じようなものを作りまくるべき」
http://news.livedoor.com/article/detail/5864856/
このパクリ上等発言は、かなり物議をかもしまして、実際にパクリゲームを連発するグリーに、憤る声も多かったのです。
「GREEのゲームはパクリだらけ? そんな疑惑ゲーム一覧」
http://getnews.jp/archives/115930
しかし、やはりそんなパクリゲームは長続きしませんでした。上記の記事に取り上げられた、『ラブプラス』のパクリである「ヒメこい」、『けいおん』のパクリである「いもこい」、『魔法少女まどか☆マギカ』のパクリである「契約魔法少女」は、いずれも1年経たずサービスを停止しました。
そして今期、特別損失として計上されたソフト郡を見ると、数々のパクリシリーズが相次いでサービス中止になったのです。
●『マリオカート』をパクッたように見える「Wacky Motors」
http://jp.product.gree.net/wacky/motors/ 8月28日サービス終了
●『nintendogs』をパクッたようにしか見えない「ともだち☆ドッグス」
http://jp.product.gree.net/dogs/ 8月12日サービス終了
●『ポケットモンスター』をパクッたとしか思えない「MONPLA SMASH」
http://jp.product.gree.net/monpla/smash/ 8月28日サービス終了
任天堂関係では、「おいでよ、どうぶつの森」をパクッた感じの「どうぶつフレンズ」が、まだ生き残っています。これまでの成功パターンが崩れたグリー。これからの展開はどうなるのでしょうか?事業計画が公開されてないため、どうなるか予断を許しません。もし、懲りずに『パズル&ドラゴンズ』のパクリソフトが出たら、また取り上げたいと思います。
「稼ぐアイデア増産」の集中テクニック
PRESIDENT(2013.8.19)
日本を代表するクリエーター「佐藤可士和」の名前は知らなくても、彼のデザインした広告や企業のロゴを目にしたことのない人はいないだろう。クライアントと目指す方向を探り、「これしかない」というデザインに落とし込む。その手腕は、ファーストリテイリングの柳井正氏、セブン&アイの鈴木敏文氏、楽天の三木谷浩史氏など、多くの著名経営者から厚い信頼を得ている。ユニクロのロゴ制作から幼稚園・病院のプロデュースまで、仕事の幅は広い。
多忙を極める佐藤氏だが、スケジュール管理は主に、妻でマネジャーの佐藤悦子氏が行い、可士和氏自身は手帳を持たない。
「基本的にいつも手ぶらです。持ち歩くのは携帯電話とカギと小銭、カードケースくらい。最近はこれにiPadが加わりました」
スケジュールはウェブ上のカレンダーでスタッフと共有し、常に数カ月先まで確認。大小あわせて約30本のプロジェクトを抱える状態だ。スケジュールは変更になることも多いため、ウェブで常にチェックしている。時間の使い方についてどのように考えているのだろうか。
「複数のプロジェクトを同時並行していると、やることが多くて焦ってくる。でもそこでちょこまかと手をつけても、効率は上がらない」(可士和氏)
それなら「目の前のことに集中する」と決めたほうがいい。
「クリエーションに関しては、大事なのはかけた時間の長さではなく、どれだけ深く集中できるかが勝負。毎日1時間×3日よりも、3時間まとめてバシッとやったほうがよかったりする。僕の場合、時間管理は集中するためのメンタルのコントロールに直結しています」(可士和氏)
もともと集中するために頭のスイッチを切り替えるのは得意という可士和氏だが、妻の悦子氏によるスケジュールの組み方に助けられている部分も大きい。
「佐藤はすごく集中力がある。本人曰く『狂った集中力』(笑)。だからといって大きなプロジェクトの大詰めで、急に1時間空いたから、全く別の新しいことを考えるのは無理。だから佐藤の頭の空き具合を計算する。いま彼が何に気持ちを奪われているのか、『脳内視野』がどうなっているかを考えてスケジュールを組んでいます」(悦子氏)
可士和氏のアートディレクションは、企業や組織のトップと1対1で会話を重ね、問題点や狙いを整理することから始まる。
「セブン&アイの場合は、広告のこともお店のこともあるけれど、まずはプライベートブランドから着手しようということになり、新しいロゴマークを作りました。最初から鈴木会長に『ロゴをつくってほしい』という言い方をされたわけではありません。頼まれたのは『セブン-イレブンをよくしてほしい』ということだけ」(可士和氏)
抽象的で漠然としたリクエスト。しかしこのような頼み方はユニクロの場合も同様で、柳井会長からの依頼は「世界戦略をやってくれ」の一言だった。
可士和氏はそんなとき「何をすればいいですか」とは聞かない。それを考えることが仕事だからだ。大きなプロジェクトではデザインに着手するのは最後の最後。経営戦略を考えるコンサルタントのように、何をすべきか考えるところから仕事が始まる。そのために必要なのが徹底的な対話だ。セブン-イレブンのときは上層部とだけでも30回以上ミーティングを重ねた。
「ミーティングというより僕がインタビューをする感じです。日本経済についてなど、大きな視野の話もする。鈴木会長に『コンビニは将来の社会にとって、どういうものになるんですか』という質問を投げかけたりもします」(可士和氏)
このような視野の大きな話から入るのは遠回りのような気もするが、可士和氏はそれを真っ向から否定する。
「それが1番の近道。人間は話すことで思考や情報が整理されます。鈴木会長も僕との対話の中でセブン-イレブンの40年の歴史を振り返ったりしているはず。対話を重ねると何をすべきかというゴールが見えてくる。ゴールの設定をすることは非常に重要。どこに行くべきかを共有することこそ、本当の意味でのクリエーティブな作業です。仕事がなかなかうまくいかない人は、ゴールが見えないまま走り始めてしまっているのかもしれませんね」
「経営者と話すことが1番大事」と断言する可士和氏。しかし大企業トップと引く手あまたのクリエーター同士では、頻繁にミーティングの時間を持つのは難しい。そこで悦子氏が考案したのが、「時間割方式」とでもいうべき方法だ。
「長期にわたってお仕事をさせていただく企業トップとのミーティングは、週1回とか月2回とか、ミーティングの曜日と時間を決めて定例にしています。テレビ番組表のように。そのほうがかえって時間をとりやすい。何曜日の何時と1度決めたら、急ぎの確認事項がなくても、その時間は必ずお会いするようにしています。雑談をするだけでも、そこからアイデアが生まれることもあります」(悦子氏)
人と会う予定は火・水・木・金に入れ、月曜日は「デザインデー」として空けておく。可士和氏がクリエーティブな作業に集中するためだ。悦子氏は言う。
「放っておくとどんどん埋まってしまうのですが、クオリティを維持するためには佐藤が集中できる時間を死守するしかない」
また、打ち合わせと打ち合わせの間は最低でも30分あけるという。もし打ち合わせが延びても次に約束した人を待たせることがないし、その間に頭を切り替えることができるからだ。悦子氏は時間の余白を重視する。
「スケジュールに余裕を持たせておけば、何かあってもバタバタしない。それにインターバルや休みをとってリフレッシュすることも絶対に必要です」
博報堂勤務時代に知り合った2人だが、当初は、可士和氏と悦子氏とでは、仕事に関するとらえ方も違った。
「広告業界のクリエーターは徹夜や残業をするのが当たり前で、忙しい=売れっ子、という風潮もありました。佐藤も完全に夜型だったようです。私は博報堂を辞めたあと、外資系企業や化粧品会社に勤めて違う世界を経験しました。それで広告業界の時間の使い方に違和感を覚えたのかもしれません」(悦子氏)
子供が生まれる前、2人で予定していたハワイ旅行を、可士和氏が「撮影が入ったから」とキャンセルしようとしたことがあったと悦子氏は述懐する。
「それに私は大反対。『ちゃんと仕事をするためにも休むことは絶対に必要』と言い続けていたら、わかってくれるようになりました。私が佐藤からもらったものはたくさんあるんですが、もし私が佐藤に影響を与えたことがあるとすれば、それは休むことの大切さかもしれません。若いうちは徹夜が続いても平気ですが、そんな生活を続けていたらいずれ体調を崩すし、クリエーターとしても涸渇してしまう。そうなったらかえって仕事先に迷惑をかけてしまいます」
可士和氏が独立して個人事務所「サムライ」を設立したことも、働き方が変わるきっかけだった。広告代理店の仕事はスパンが短く不測の事態にその都度対応する必要もあるため、自分のペースを保つことはなかなか難しかったが、独立後に手がけるようになった長期的な企業のブランディングは、比較的、自分のペースで仕事が進めやすい。
加えて、悦子氏がマネジャーとしてサムライに参加し、お互いの役割分担が明確になったことも大きなプラスとなった。
「博報堂ではお金やスケジュールの管理も僕の仕事でした。いまは、それを事務処理能力の高い悦子が一手に引き受けてくれるので、僕はクリエーティブということに集中できる」(可士和氏)
「夫婦で同じ職場で働くのは大変でしょう、とよく言われるんですが、一緒にいる時間はそれほど長くない。今日なんか15分くらい(笑)。会社で仕事の話ができない日は、家で話すこともよくあります」(悦子氏)
長男が誕生したことも、2人の時間の使い方に変化を与えた。
「子供が生まれる前は、何かあっても夜中まで働けばカバーできた。でもそれはもう無理なので、『午後9時だけど今日は早く寝て、明日の朝3時に起きてからやろう』と、工夫するようになりました」(悦子氏)
普段の悦子氏は毎朝4時起き。子供の世話と、責任ある仕事の両立は考えただけでも大変そうだ。そう言うと、悦子氏は笑ってこう答えた。
「『忙しそうですね』と言われると、私もまだまだだな、と思います。忙しそうに見えるのは、他人を受け入れる余裕がないということでもありますから」
悦子氏が化粧品会社に勤務しているとき、忙しいはずの女性トップがまったくバタバタしていなかった。以来、「ゆっくりしているほうがきれい」と確信。仕事のやり方を工夫し、万一に備え余白を設けるようになった。
悦子氏のスケジュール管理法は、デジタルと紙の2本立て。長期の予定は見開き2週間の手帳に書き込む。変更が多い短期の予定はネットで管理する。その日にすべきことは、「メール」「電話」「請求書」「契約書」など項目ごとにA4の裏紙を使ってすべて書き出していく。
「忘れてはいけないことは紙に書くのが1番。こうすると作業の量が目で見てすぐわかります」(悦子氏)
1件片付けるたびに赤線を引いて消し、1日の終わりに、その紙を破いて捨てる。
「紙を破いて捨てることで、すごくスッキリする」(悦子氏)
実は悦子氏は「メモ魔」でもある。誰にどんな手土産を渡したか、誰とどこで会食をしたかなど、すべて手帳の備忘録に記録する。2回目以降にダブらないようにするためだ。
効率的に時間を管理すれば、空き時間でジムに行ったり、近所の公園で早朝ウオーキングをすることもできる。可士和氏は「サムライは小さな会社です。僕や悦子が倒れるわけにいかない。ですから、運動をして、体を鍛えるのも仕事のうち。それに、メンタルにもとてもいいリフレッシュになります」と言う。
「昔は僕もジム通いが続かなかった。続けるコツは、パーソナルトレーナーを予約すること。そうなるとその人と会う約束を守るために、行かざるをえない」
週末は同じく子供を持つ家族と、釣りや農園に出かけることも多い。
「息子が1歳のとき、食育になるかなと、ファームのメンバーになったのですが、親のほうも自然のなかで汗をかくことが楽しみになってきた」(悦子氏)
佐藤夫妻が農業を始めてまもなく、ファームに若い家族世代のメンバーが急増した。
「自分で種をまいたものを食べることで、生活を自分でつくるリアリティが感じられる。皆がそれを求めている時代なんだ、と佐藤はわかったようです。それは仕事にも活きます。時代の感覚を掴む必要がある佐藤の仕事では、オフの時間を充実させることも大切なことだと思います」(悦子氏)
「子供はパワフルです。うちの子は一緒に遊んでいても、僕が集中していないと怒る(笑)。そうすると遊びに集中せざるをえないから、いいリフレッシュになるんです」(可士和氏)
忙しさを理由に土日も仕事をし、結果的に効率を落としている人は多いのではないか。佐藤夫妻からは、仕事と時間のやり繰りについて学ぶ点は多い。
日本を代表するクリエーター「佐藤可士和」の名前は知らなくても、彼のデザインした広告や企業のロゴを目にしたことのない人はいないだろう。クライアントと目指す方向を探り、「これしかない」というデザインに落とし込む。その手腕は、ファーストリテイリングの柳井正氏、セブン&アイの鈴木敏文氏、楽天の三木谷浩史氏など、多くの著名経営者から厚い信頼を得ている。ユニクロのロゴ制作から幼稚園・病院のプロデュースまで、仕事の幅は広い。
多忙を極める佐藤氏だが、スケジュール管理は主に、妻でマネジャーの佐藤悦子氏が行い、可士和氏自身は手帳を持たない。
「基本的にいつも手ぶらです。持ち歩くのは携帯電話とカギと小銭、カードケースくらい。最近はこれにiPadが加わりました」
スケジュールはウェブ上のカレンダーでスタッフと共有し、常に数カ月先まで確認。大小あわせて約30本のプロジェクトを抱える状態だ。スケジュールは変更になることも多いため、ウェブで常にチェックしている。時間の使い方についてどのように考えているのだろうか。
「複数のプロジェクトを同時並行していると、やることが多くて焦ってくる。でもそこでちょこまかと手をつけても、効率は上がらない」(可士和氏)
それなら「目の前のことに集中する」と決めたほうがいい。
「クリエーションに関しては、大事なのはかけた時間の長さではなく、どれだけ深く集中できるかが勝負。毎日1時間×3日よりも、3時間まとめてバシッとやったほうがよかったりする。僕の場合、時間管理は集中するためのメンタルのコントロールに直結しています」(可士和氏)
もともと集中するために頭のスイッチを切り替えるのは得意という可士和氏だが、妻の悦子氏によるスケジュールの組み方に助けられている部分も大きい。
「佐藤はすごく集中力がある。本人曰く『狂った集中力』(笑)。だからといって大きなプロジェクトの大詰めで、急に1時間空いたから、全く別の新しいことを考えるのは無理。だから佐藤の頭の空き具合を計算する。いま彼が何に気持ちを奪われているのか、『脳内視野』がどうなっているかを考えてスケジュールを組んでいます」(悦子氏)
可士和氏のアートディレクションは、企業や組織のトップと1対1で会話を重ね、問題点や狙いを整理することから始まる。
「セブン&アイの場合は、広告のこともお店のこともあるけれど、まずはプライベートブランドから着手しようということになり、新しいロゴマークを作りました。最初から鈴木会長に『ロゴをつくってほしい』という言い方をされたわけではありません。頼まれたのは『セブン-イレブンをよくしてほしい』ということだけ」(可士和氏)
抽象的で漠然としたリクエスト。しかしこのような頼み方はユニクロの場合も同様で、柳井会長からの依頼は「世界戦略をやってくれ」の一言だった。
可士和氏はそんなとき「何をすればいいですか」とは聞かない。それを考えることが仕事だからだ。大きなプロジェクトではデザインに着手するのは最後の最後。経営戦略を考えるコンサルタントのように、何をすべきか考えるところから仕事が始まる。そのために必要なのが徹底的な対話だ。セブン-イレブンのときは上層部とだけでも30回以上ミーティングを重ねた。
「ミーティングというより僕がインタビューをする感じです。日本経済についてなど、大きな視野の話もする。鈴木会長に『コンビニは将来の社会にとって、どういうものになるんですか』という質問を投げかけたりもします」(可士和氏)
このような視野の大きな話から入るのは遠回りのような気もするが、可士和氏はそれを真っ向から否定する。
「それが1番の近道。人間は話すことで思考や情報が整理されます。鈴木会長も僕との対話の中でセブン-イレブンの40年の歴史を振り返ったりしているはず。対話を重ねると何をすべきかというゴールが見えてくる。ゴールの設定をすることは非常に重要。どこに行くべきかを共有することこそ、本当の意味でのクリエーティブな作業です。仕事がなかなかうまくいかない人は、ゴールが見えないまま走り始めてしまっているのかもしれませんね」
「経営者と話すことが1番大事」と断言する可士和氏。しかし大企業トップと引く手あまたのクリエーター同士では、頻繁にミーティングの時間を持つのは難しい。そこで悦子氏が考案したのが、「時間割方式」とでもいうべき方法だ。
「長期にわたってお仕事をさせていただく企業トップとのミーティングは、週1回とか月2回とか、ミーティングの曜日と時間を決めて定例にしています。テレビ番組表のように。そのほうがかえって時間をとりやすい。何曜日の何時と1度決めたら、急ぎの確認事項がなくても、その時間は必ずお会いするようにしています。雑談をするだけでも、そこからアイデアが生まれることもあります」(悦子氏)
人と会う予定は火・水・木・金に入れ、月曜日は「デザインデー」として空けておく。可士和氏がクリエーティブな作業に集中するためだ。悦子氏は言う。
「放っておくとどんどん埋まってしまうのですが、クオリティを維持するためには佐藤が集中できる時間を死守するしかない」
また、打ち合わせと打ち合わせの間は最低でも30分あけるという。もし打ち合わせが延びても次に約束した人を待たせることがないし、その間に頭を切り替えることができるからだ。悦子氏は時間の余白を重視する。
「スケジュールに余裕を持たせておけば、何かあってもバタバタしない。それにインターバルや休みをとってリフレッシュすることも絶対に必要です」
博報堂勤務時代に知り合った2人だが、当初は、可士和氏と悦子氏とでは、仕事に関するとらえ方も違った。
「広告業界のクリエーターは徹夜や残業をするのが当たり前で、忙しい=売れっ子、という風潮もありました。佐藤も完全に夜型だったようです。私は博報堂を辞めたあと、外資系企業や化粧品会社に勤めて違う世界を経験しました。それで広告業界の時間の使い方に違和感を覚えたのかもしれません」(悦子氏)
子供が生まれる前、2人で予定していたハワイ旅行を、可士和氏が「撮影が入ったから」とキャンセルしようとしたことがあったと悦子氏は述懐する。
「それに私は大反対。『ちゃんと仕事をするためにも休むことは絶対に必要』と言い続けていたら、わかってくれるようになりました。私が佐藤からもらったものはたくさんあるんですが、もし私が佐藤に影響を与えたことがあるとすれば、それは休むことの大切さかもしれません。若いうちは徹夜が続いても平気ですが、そんな生活を続けていたらいずれ体調を崩すし、クリエーターとしても涸渇してしまう。そうなったらかえって仕事先に迷惑をかけてしまいます」
可士和氏が独立して個人事務所「サムライ」を設立したことも、働き方が変わるきっかけだった。広告代理店の仕事はスパンが短く不測の事態にその都度対応する必要もあるため、自分のペースを保つことはなかなか難しかったが、独立後に手がけるようになった長期的な企業のブランディングは、比較的、自分のペースで仕事が進めやすい。
加えて、悦子氏がマネジャーとしてサムライに参加し、お互いの役割分担が明確になったことも大きなプラスとなった。
「博報堂ではお金やスケジュールの管理も僕の仕事でした。いまは、それを事務処理能力の高い悦子が一手に引き受けてくれるので、僕はクリエーティブということに集中できる」(可士和氏)
「夫婦で同じ職場で働くのは大変でしょう、とよく言われるんですが、一緒にいる時間はそれほど長くない。今日なんか15分くらい(笑)。会社で仕事の話ができない日は、家で話すこともよくあります」(悦子氏)
長男が誕生したことも、2人の時間の使い方に変化を与えた。
「子供が生まれる前は、何かあっても夜中まで働けばカバーできた。でもそれはもう無理なので、『午後9時だけど今日は早く寝て、明日の朝3時に起きてからやろう』と、工夫するようになりました」(悦子氏)
普段の悦子氏は毎朝4時起き。子供の世話と、責任ある仕事の両立は考えただけでも大変そうだ。そう言うと、悦子氏は笑ってこう答えた。
「『忙しそうですね』と言われると、私もまだまだだな、と思います。忙しそうに見えるのは、他人を受け入れる余裕がないということでもありますから」
悦子氏が化粧品会社に勤務しているとき、忙しいはずの女性トップがまったくバタバタしていなかった。以来、「ゆっくりしているほうがきれい」と確信。仕事のやり方を工夫し、万一に備え余白を設けるようになった。
悦子氏のスケジュール管理法は、デジタルと紙の2本立て。長期の予定は見開き2週間の手帳に書き込む。変更が多い短期の予定はネットで管理する。その日にすべきことは、「メール」「電話」「請求書」「契約書」など項目ごとにA4の裏紙を使ってすべて書き出していく。
「忘れてはいけないことは紙に書くのが1番。こうすると作業の量が目で見てすぐわかります」(悦子氏)
1件片付けるたびに赤線を引いて消し、1日の終わりに、その紙を破いて捨てる。
「紙を破いて捨てることで、すごくスッキリする」(悦子氏)
実は悦子氏は「メモ魔」でもある。誰にどんな手土産を渡したか、誰とどこで会食をしたかなど、すべて手帳の備忘録に記録する。2回目以降にダブらないようにするためだ。
効率的に時間を管理すれば、空き時間でジムに行ったり、近所の公園で早朝ウオーキングをすることもできる。可士和氏は「サムライは小さな会社です。僕や悦子が倒れるわけにいかない。ですから、運動をして、体を鍛えるのも仕事のうち。それに、メンタルにもとてもいいリフレッシュになります」と言う。
「昔は僕もジム通いが続かなかった。続けるコツは、パーソナルトレーナーを予約すること。そうなるとその人と会う約束を守るために、行かざるをえない」
週末は同じく子供を持つ家族と、釣りや農園に出かけることも多い。
「息子が1歳のとき、食育になるかなと、ファームのメンバーになったのですが、親のほうも自然のなかで汗をかくことが楽しみになってきた」(悦子氏)
佐藤夫妻が農業を始めてまもなく、ファームに若い家族世代のメンバーが急増した。
「自分で種をまいたものを食べることで、生活を自分でつくるリアリティが感じられる。皆がそれを求めている時代なんだ、と佐藤はわかったようです。それは仕事にも活きます。時代の感覚を掴む必要がある佐藤の仕事では、オフの時間を充実させることも大切なことだと思います」(悦子氏)
「子供はパワフルです。うちの子は一緒に遊んでいても、僕が集中していないと怒る(笑)。そうすると遊びに集中せざるをえないから、いいリフレッシュになるんです」(可士和氏)
忙しさを理由に土日も仕事をし、結果的に効率を落としている人は多いのではないか。佐藤夫妻からは、仕事と時間のやり繰りについて学ぶ点は多い。
2013年8月7日水曜日
Facebookの「いいね!」大量生産するダッカのクリック工場
Yahoo! Japan(2013.8.6)
ソーシャルメディアのFacebook、Twitterや大手動画投稿サイトのYouTubeは新作音楽や映画、新商品のプロモーションに欠かせないツールだ。8月5日夜に放映された英民放チャンネル4の調査報道番組『Dispatches』は、Facebookの「いいね!」、Twitterのフォロワー、YouTubeのビューを大量生産する「ヤミ工場」に切り込んだ。
中国を拠点に「いいね!」やフォロワーを増やすサクラ集団の存在が日本でもクローズアップされているが、今回、調査報道の対象になったのは、縫製工場の崩壊事故で1千人以上が犠牲になったバングラデシュのダッカにあるクリック工場。オーナーは「Facebookの王様」と呼ばれていた。
ビルの一室で10数人の若者がパソコンの画面を見ながら、アカウントを使い分け、ひたすらクリックを続ける。ある若者は1千のアカウントを持っていると打ち明けた。この工場ではFacebookのいいね!は1千人分で15ドル、YouTubeは1千ビューで3ドルだ。3~4時間もすれば、いいね!が1千人分増えている。
バングラデシュの若者は1日3交代で24時間、Facebookのいいね!やTwitterのフォロワーを増殖させている。国民1人当たりの月収は約60ドル。クリック工場はバングラデシュでは割のいいビジネスなのだ。
昨年の米大統領選。共和党の大統領候補ミット・ロムニー氏が1日でTwitterのフォロワーを11万6千人も増やしたことから、フォロワーの15%が買われていた疑いがあると報じられた。
YouTubeからスターダムにのし上がったカナダの人気歌手ジャスティン・ビーバー。Twitterのフォロワーは米国のミュージシャン、レディー・ガガを追い越し、現在4200万人。しかし、その約半数はニセ・アカウントだという疑惑がささやかれている。
こうした疑惑は大手飲料メーカー、ペプシやドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツ、高級ブランドのルイ・ヴィトン、政治家ではロムニー氏のほか、ロシアのメドベージェフ前大統領にも向けられている。
また、英国では業者が間に入ってTwitterでセレブ(芸能人や有名スポーツ選手)たちに新商品についてつぶやかせるビシネスまで登場。広告まがいのつぶやき防止策として、Twitterは「♯ad」のハッシュタグを入れるよう利用者に呼びかけている。
Facebookのいいね!は1日45億回(昨年より67%増)のペースで増えている。このうち何%がバングラデシュや中国のクリック工場で生み出されているのかは、誰にもわからない。
ソーシャルメディアのFacebook、Twitterや大手動画投稿サイトのYouTubeは新作音楽や映画、新商品のプロモーションに欠かせないツールだ。8月5日夜に放映された英民放チャンネル4の調査報道番組『Dispatches』は、Facebookの「いいね!」、Twitterのフォロワー、YouTubeのビューを大量生産する「ヤミ工場」に切り込んだ。
中国を拠点に「いいね!」やフォロワーを増やすサクラ集団の存在が日本でもクローズアップされているが、今回、調査報道の対象になったのは、縫製工場の崩壊事故で1千人以上が犠牲になったバングラデシュのダッカにあるクリック工場。オーナーは「Facebookの王様」と呼ばれていた。
ビルの一室で10数人の若者がパソコンの画面を見ながら、アカウントを使い分け、ひたすらクリックを続ける。ある若者は1千のアカウントを持っていると打ち明けた。この工場ではFacebookのいいね!は1千人分で15ドル、YouTubeは1千ビューで3ドルだ。3~4時間もすれば、いいね!が1千人分増えている。
バングラデシュの若者は1日3交代で24時間、Facebookのいいね!やTwitterのフォロワーを増殖させている。国民1人当たりの月収は約60ドル。クリック工場はバングラデシュでは割のいいビジネスなのだ。
昨年の米大統領選。共和党の大統領候補ミット・ロムニー氏が1日でTwitterのフォロワーを11万6千人も増やしたことから、フォロワーの15%が買われていた疑いがあると報じられた。
YouTubeからスターダムにのし上がったカナダの人気歌手ジャスティン・ビーバー。Twitterのフォロワーは米国のミュージシャン、レディー・ガガを追い越し、現在4200万人。しかし、その約半数はニセ・アカウントだという疑惑がささやかれている。
こうした疑惑は大手飲料メーカー、ペプシやドイツの自動車メーカー、メルセデス・ベンツ、高級ブランドのルイ・ヴィトン、政治家ではロムニー氏のほか、ロシアのメドベージェフ前大統領にも向けられている。
また、英国では業者が間に入ってTwitterでセレブ(芸能人や有名スポーツ選手)たちに新商品についてつぶやかせるビシネスまで登場。広告まがいのつぶやき防止策として、Twitterは「♯ad」のハッシュタグを入れるよう利用者に呼びかけている。
Facebookのいいね!は1日45億回(昨年より67%増)のペースで増えている。このうち何%がバングラデシュや中国のクリック工場で生み出されているのかは、誰にもわからない。
2013年6月21日金曜日
レビュースコアの補正にみられる、ある傾向
Take IT Easy(2012.11.27)
「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに…」 このフレーズを憶えている人は本コラムの読者にどれだけいるだろうか。 いまから30年ほど昔に流れていた、フィルムのTVコマーシャルでのやりとりである。 このコマーシャル自体は本コラムの内容と全く関係ないが、テーマとして挙げた「ある傾向」をどう表現しようかと考えていたら、頭にピンと浮かんだのがこのフレーズ。 なるほどコピーライターは昔からうまいことを考えるものだと、妙に納得した。
このフレーズがどう関係するのか、それが気になる方はぜひともこのまま最後まで読み進めていただきたい。
■ レビュースコアの取扱い
さて、一般の消費者がネットに書き込むことによってコンテンツが作成されるメディア、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)の代表例として「レビュー」がある。 CGMについては本コラムでも以前から何度か取り上げており、レビューの危うさについては「CGMコンテンツの分析は集合痴に要注意」という記事で私も指摘した。 しかし、他人の評判は気になるものだし、一般的には、オンラインショッピングのサイトでそれなりに参考にされている有効なコンテンツといえよう。
多くのレビューでは、「☆1つ」から「☆5つ」というように、対象の良し悪しをスコアで点数化し、数値として評価できるようになっている。 このような指標は感覚的なものなので、本来は順序尺度として扱うべきだ。 ただし多くのシステムでスコアには「各スコア間の距離は等間隔で評価されている」という暗黙の仮定が持ち込まれており、その点数は間隔尺度として扱われている。 間隔尺度として扱うことで各レビューのスコアに関する平均値を計算でき、その値をレビュー対象の良し悪しを測る総合的な評価指標として提示できることになる。
そうはいってもレビューそれ自身が主観的なものだし、ステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」や、「やらせ問題」のように、恣意的なレビューが紛れ込む隙が残されている。 そこで、以前の記事で紹介したように、少しでもより客観的な評価とするためにレビューそのものに対する更なる評価を備えているシステムも多い。
■ レビューそのものの評価を加味した補正の計算
さてここで、レビューコメントの有用度を用いてレビューの平均値を補正するということを考えてみよう。 レビューの有用度とは、前の記事で紹介したように、そのレビューが「参考になった」かどうかの投票を用いて決められる0.0から1.0までの値である。 有用度は、全投票数分の「参考になった」への投票数として定義される。
この有用度を用いて、レビューの平均値を「より客観的になるように」補正することを考える。 そのために、単なる平均の代わりに、有用度を重みに用いた加重平均を採用してみよう。
この加重平均では、参考になったレビューのスコアは重要視され、あまり参考にならなかったレビューのスコアは軽視される。 多くの一般消費者にとって、☆の評価、スコアを付けるだけならいざしらず、わざわざレビューのコメントを投稿する作業は、いささか敷居が高いと感じるひとは多いことだろう。 しかし、レビューを読んで参考になったかどうかをクリックするだけであれば簡単だ。 単純平均の代わりにこの加重平均を使うというアイデアによって、より広い消費者の意見を反映することができるといえないだろうか。
■ みんなの意見を反映すると…
このように加重平均を用いて補正してみたところ、面白い傾向が浮かんできた。 以下に示す図は、某オンライン書店でのベストセラーを対象として、補正の効果がどのくらい現れているかをプロットしたものだ。 なお対象とした書籍は、これまでのベストセラーとしてリストアップされていたものから100以上のレビューコメントが寄せられていた200冊強を選んだ。
縦軸は、単純平均から加重平均を引いた差分の値、そして横軸はレビュースコアに関する加重平均の値である。 簡単にいうと、縦軸に関して中央より上にプロットされたものは、「補正したらレビュースコアは全体としてより高くなった」ものであり、中央より下はその逆、 つまり「補正によってレビュースコアはさらに悪くなった」ものだ。 恣意的なレビューが混ざっていると、そのようなレビューは排斥されるのでレビューの評価は大きく変動する傾向にある。 この補正の根底には、「みんなの意見はだいたい正しい」という集合知の考え方がある。
■ 高い評価はより高く、それなりの評価はそれなりに
ところで、横軸がレビュースコアの平均値である点に注目してほしい。 グラフの上で回帰直線を引いてみると、ちょうど「☆4つ」あたりのところで差分値の正負が逆転する。 すなわち、このグラフから、ユーザによるレビューの補正が行われると、低い評価はより低く、高い評価はより高くなるという傾向も確認することができるだろう(※ 蛇足ながら、冒頭で引用したフレーズはこの結果に対応したものですよ!)。
先に述べたように、加重平均による補正は、レビューの評価にサイレント・マジョリティの意見が反映されたものと考えられる。 これは、より客観的に評価したと考えることもできるが、見方によっては「多くの一般消費者は付和雷同する」ととらえることができなくもなかろう。 ここで新たに気になるのは、「これは日本人特有の気質によるものなのだろうか、それとも海外でも共通に現れる傾向なのだろうか」という疑問である。
今回対象としたのは日本の書籍に対する日本語のレビューだが、海外でも同じシステムが存在する。 海外のデータを使って調べたらどうなるか、誰か挑戦してみませんか?
「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに…」 このフレーズを憶えている人は本コラムの読者にどれだけいるだろうか。 いまから30年ほど昔に流れていた、フィルムのTVコマーシャルでのやりとりである。 このコマーシャル自体は本コラムの内容と全く関係ないが、テーマとして挙げた「ある傾向」をどう表現しようかと考えていたら、頭にピンと浮かんだのがこのフレーズ。 なるほどコピーライターは昔からうまいことを考えるものだと、妙に納得した。
このフレーズがどう関係するのか、それが気になる方はぜひともこのまま最後まで読み進めていただきたい。
■ レビュースコアの取扱い
さて、一般の消費者がネットに書き込むことによってコンテンツが作成されるメディア、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)の代表例として「レビュー」がある。 CGMについては本コラムでも以前から何度か取り上げており、レビューの危うさについては「CGMコンテンツの分析は集合痴に要注意」という記事で私も指摘した。 しかし、他人の評判は気になるものだし、一般的には、オンラインショッピングのサイトでそれなりに参考にされている有効なコンテンツといえよう。
多くのレビューでは、「☆1つ」から「☆5つ」というように、対象の良し悪しをスコアで点数化し、数値として評価できるようになっている。 このような指標は感覚的なものなので、本来は順序尺度として扱うべきだ。 ただし多くのシステムでスコアには「各スコア間の距離は等間隔で評価されている」という暗黙の仮定が持ち込まれており、その点数は間隔尺度として扱われている。 間隔尺度として扱うことで各レビューのスコアに関する平均値を計算でき、その値をレビュー対象の良し悪しを測る総合的な評価指標として提示できることになる。
そうはいってもレビューそれ自身が主観的なものだし、ステルスマーケティング、いわゆる「ステマ」や、「やらせ問題」のように、恣意的なレビューが紛れ込む隙が残されている。 そこで、以前の記事で紹介したように、少しでもより客観的な評価とするためにレビューそのものに対する更なる評価を備えているシステムも多い。
■ レビューそのものの評価を加味した補正の計算
さてここで、レビューコメントの有用度を用いてレビューの平均値を補正するということを考えてみよう。 レビューの有用度とは、前の記事で紹介したように、そのレビューが「参考になった」かどうかの投票を用いて決められる0.0から1.0までの値である。 有用度は、全投票数分の「参考になった」への投票数として定義される。
この有用度を用いて、レビューの平均値を「より客観的になるように」補正することを考える。 そのために、単なる平均の代わりに、有用度を重みに用いた加重平均を採用してみよう。
この加重平均では、参考になったレビューのスコアは重要視され、あまり参考にならなかったレビューのスコアは軽視される。 多くの一般消費者にとって、☆の評価、スコアを付けるだけならいざしらず、わざわざレビューのコメントを投稿する作業は、いささか敷居が高いと感じるひとは多いことだろう。 しかし、レビューを読んで参考になったかどうかをクリックするだけであれば簡単だ。 単純平均の代わりにこの加重平均を使うというアイデアによって、より広い消費者の意見を反映することができるといえないだろうか。
■ みんなの意見を反映すると…
このように加重平均を用いて補正してみたところ、面白い傾向が浮かんできた。 以下に示す図は、某オンライン書店でのベストセラーを対象として、補正の効果がどのくらい現れているかをプロットしたものだ。 なお対象とした書籍は、これまでのベストセラーとしてリストアップされていたものから100以上のレビューコメントが寄せられていた200冊強を選んだ。
縦軸は、単純平均から加重平均を引いた差分の値、そして横軸はレビュースコアに関する加重平均の値である。 簡単にいうと、縦軸に関して中央より上にプロットされたものは、「補正したらレビュースコアは全体としてより高くなった」ものであり、中央より下はその逆、 つまり「補正によってレビュースコアはさらに悪くなった」ものだ。 恣意的なレビューが混ざっていると、そのようなレビューは排斥されるのでレビューの評価は大きく変動する傾向にある。 この補正の根底には、「みんなの意見はだいたい正しい」という集合知の考え方がある。
■ 高い評価はより高く、それなりの評価はそれなりに
ところで、横軸がレビュースコアの平均値である点に注目してほしい。 グラフの上で回帰直線を引いてみると、ちょうど「☆4つ」あたりのところで差分値の正負が逆転する。 すなわち、このグラフから、ユーザによるレビューの補正が行われると、低い評価はより低く、高い評価はより高くなるという傾向も確認することができるだろう(※ 蛇足ながら、冒頭で引用したフレーズはこの結果に対応したものですよ!)。
先に述べたように、加重平均による補正は、レビューの評価にサイレント・マジョリティの意見が反映されたものと考えられる。 これは、より客観的に評価したと考えることもできるが、見方によっては「多くの一般消費者は付和雷同する」ととらえることができなくもなかろう。 ここで新たに気になるのは、「これは日本人特有の気質によるものなのだろうか、それとも海外でも共通に現れる傾向なのだろうか」という疑問である。
今回対象としたのは日本の書籍に対する日本語のレビューだが、海外でも同じシステムが存在する。 海外のデータを使って調べたらどうなるか、誰か挑戦してみませんか?
CGMコンテンツの分析は集合痴に要注意
Take IT Easy(2011.2.1)
集合知やCGM(Consumer Generated Media)は、ITの活用領域としてまだまだ発展する余地が大きい分野である。 今後も様々なサービスが開発されていくだろう。 本コラムでも、これまで何度か集合知やCGMに関するテーマを取り上げている。 集合知やCGMという話題、いまだホットな領域であり、目を離せない分野である。
しかし一方で、集合知やCGMのプラットフォームたり得る掲示板やコメント欄、twitterなどのオンライン・コミュニケーションツールは、炎上したり、田代砲のような悪戯が蔓延したりといった危険も孕んでいる。 そのような状況はもはや「集合知」ではなく「集合痴」という名がふさわしい。 集合知は新しい知識発見の方法として非常に魅力的だが、そこに集合痴が混じると道を誤るリスクがある。
集合痴になってしまったケースか否かの見極めは、生のデータを人間が少しでも読めば、それほど難しくないだろう。 しかし機械的な判断は、さほど簡単な話でもない。 大量のCGMコンテンツをデータマイニングやテキストマイニングのツールで機械的に処理しようとする場合には、集合痴になってしまったケースを自動で排除する仕掛けを用意しておかなければ、誤った結論を導いてしまいかねない。 そのためには、集合痴状態か否かを自動で判断する基準として使うための、何らかの指標を用意しておく必要があろう。
■ 集合知から集合痴に至る道
具体的な例を示そう。 本稿では、書評の分析を題材にして、集合知と集合痴の区別を考えてみたい。
本稿で以下に示すグラフは、大手オンライン書店サイトに寄せられたユーザレビュー、つまりユーザによる書評を分析したものである。 およそ500件以上のレビューが寄せられている書籍をいくつかピックアップし、その傾向を調べてみた。 以下に示すグラフの縦軸は各レビューの文字数、横軸は、そのコメントの有用度である。 なお縦軸は対数目盛りで刻まれている点に注意されたい。 このグラフに、書評と共に示されている星の数による評価で分類した各レビューを、プロットした。
なお有用度は「そのコメントが参考になったか否か」の投票で定められる。 ユーザはレビューコメントを読んで、「参考になった」もしくは「参考にならなかった」との意見を投稿できる。 そこで、「参考になった」という投票を投票の総数で割った値として、有用度を定義する。 有用度は0.0から1.0の値をとる。 その値が高いほど、そのレビューの価値が高い、そのレビューに共感したユーザが多い、あるいは、そのレビューに対する支持者が多い、ということを意味する。 有用度を、そのレビューに対する支持率と読み替えても構わないだろう。
では6作品の分析結果を順にみていこう。 順番は、投稿されているレビュー数の少ないほうから並べている。
■ まともな集合知のケース
ケース1: 最初に示すグラフは、いま非常に人気の高いミステリー作家の手による直木賞受賞作に寄せられたレビューの分布である。
この作家の作品に対する書評は星5つと高い評価が多く、星4つ、星3つが徐々に減っていく逆三角形の分布をみせているという特徴を持つ。 星2つや星1つという評価は少ない。 映像化された作品も多く、高い人気を誇るベストセラー作家だけに、愛読者による真面目なレビューが多く投稿されていることの証であろう。
それだけにレビューコメント自体にも真面目な評価が加えられている。 グラフをみると、星の多寡に関わらず、コメントの評価が一様に分散している傾向が分かる。
ケース2およびケース3: 次は、グラフを2つ示そう。 1つは昨年ベストセラーとなったビジネス書ふうの小説、もう1つは昨年夏に映画が公開され、驚きのラストシーンが待っていたミステリ小説だ。
両者に共通して、先のグラフよりは全般的に有用度が下がっている。 また星の数が低いコメントのほうが支持されており、星の数が高いものは共感を得にくいという傾向があるのではないか、ということにも気付く。 実際、これらのケースについて星5つのコメントと星1つのコメントに関する有用度の平均を検定すると、有意差があることが示される。
この2作、いずれも内容とは違った文脈で話題が広がった作品であり、先の書評とはやや質が違っている。 コアなファンによる書評以上にライトユーザによる書評が多く含まれると、全体としてはこのような傾向を見せるようである。
■ どうも集合痴となってしまったケース
ケース4: 次のグラフは、ある文学賞の大賞受賞者がイケメン俳優だったというレアなケース。 完全に話題先行型で、この受賞作が出版されたときには、その内容に関してかなりの物議を醸した。
これまでに示したグラフと極端に異なることは一目瞭然である。 星1つや星2つといった低評価の支持率が極めて高く、逆に星4つ、星5つといった高評価は軒並み反感を買っている。 全体の評価結果に対する単純平均も低いが、有用度で重みを付けて評価の平均をとると、悲惨な結果になってしまうだろう。
ケース5: 次は、不思議なベストセラーのケース。
この作品も、先のグラフと比較的近いパターンとなっている。 本作は、初版は自費出版として製作され、その文章も日本語としていろいろ問題があるという欠陥を抱えていたにも関わらず、ベストセラーとなり映画化までされたという作品である。
グラフ全体の傾向はケース4と似ているが、明らかに違う点は、星5つで有用度がわりと高いものが散見される点である。 ところがこれらの星5つで有用度が比較的高いというレビューのほとんどが、書籍の内容に対するレビューではなく、レビューに関するメタレビュー、あるいは「本書はトイレットペーパーとして最適でした」というようなウケを狙ったレビューである。 その点には、十分に注意する必要があるだろう。
次のケース6では、それがさらにエスカレートしている。
ケース6: 本作は、1500を越えるレビューがありながら、その評価は星1つまたは星5つに集中しているという極端な作品である。
1000以上の評価が星1つとはいえ、ケース4、ケース5と異なり、星5つの評価も多くのユーザによる支持を得ている特徴を持つ。 しかしこの事実から、「内容がエキセントリックなので両極端に意見が割れているのかな」と安易に判断してはいけない。 このグラフは、ケース5で指摘したようなメタレビューが集中した結果である。 このケースでは、完全にネットワーカーの遊び場となってしまっており、いわゆる「縦読み」という悪ふざけが蔓延した状態になっている。
■ 集合痴には気を付けよう
本稿は、集合痴状態を否定するものではない。 原因もなく掲示板が炎上したり、本稿でいう集合痴の状態になったりということはあり得ず、集合痴状態になるからには何がしかの要因が存在する。 これまでの事例を振り返っても、炎上するケースというのは本人にも何らかの責任がある場合が多い。
本稿で指摘したいポイントは、CGMコンテンツを機械的に分析する際には気をつけましょうということである。 集合痴状態なった書評を分析しても、その書籍が述べたい内容に関する有用な知見は得られないだろう(逆に、炎上した原因を含め、その書籍をとりまく文化的事例に対する分析はできるかもしれない)。 CGMを頼る際には、集合知か集合痴かを見極める能力を鍛え、落とし穴に落ちないように気を付けたい。
集合知やCGM(Consumer Generated Media)は、ITの活用領域としてまだまだ発展する余地が大きい分野である。 今後も様々なサービスが開発されていくだろう。 本コラムでも、これまで何度か集合知やCGMに関するテーマを取り上げている。 集合知やCGMという話題、いまだホットな領域であり、目を離せない分野である。
しかし一方で、集合知やCGMのプラットフォームたり得る掲示板やコメント欄、twitterなどのオンライン・コミュニケーションツールは、炎上したり、田代砲のような悪戯が蔓延したりといった危険も孕んでいる。 そのような状況はもはや「集合知」ではなく「集合痴」という名がふさわしい。 集合知は新しい知識発見の方法として非常に魅力的だが、そこに集合痴が混じると道を誤るリスクがある。
集合痴になってしまったケースか否かの見極めは、生のデータを人間が少しでも読めば、それほど難しくないだろう。 しかし機械的な判断は、さほど簡単な話でもない。 大量のCGMコンテンツをデータマイニングやテキストマイニングのツールで機械的に処理しようとする場合には、集合痴になってしまったケースを自動で排除する仕掛けを用意しておかなければ、誤った結論を導いてしまいかねない。 そのためには、集合痴状態か否かを自動で判断する基準として使うための、何らかの指標を用意しておく必要があろう。
■ 集合知から集合痴に至る道
具体的な例を示そう。 本稿では、書評の分析を題材にして、集合知と集合痴の区別を考えてみたい。
本稿で以下に示すグラフは、大手オンライン書店サイトに寄せられたユーザレビュー、つまりユーザによる書評を分析したものである。 およそ500件以上のレビューが寄せられている書籍をいくつかピックアップし、その傾向を調べてみた。 以下に示すグラフの縦軸は各レビューの文字数、横軸は、そのコメントの有用度である。 なお縦軸は対数目盛りで刻まれている点に注意されたい。 このグラフに、書評と共に示されている星の数による評価で分類した各レビューを、プロットした。
なお有用度は「そのコメントが参考になったか否か」の投票で定められる。 ユーザはレビューコメントを読んで、「参考になった」もしくは「参考にならなかった」との意見を投稿できる。 そこで、「参考になった」という投票を投票の総数で割った値として、有用度を定義する。 有用度は0.0から1.0の値をとる。 その値が高いほど、そのレビューの価値が高い、そのレビューに共感したユーザが多い、あるいは、そのレビューに対する支持者が多い、ということを意味する。 有用度を、そのレビューに対する支持率と読み替えても構わないだろう。
では6作品の分析結果を順にみていこう。 順番は、投稿されているレビュー数の少ないほうから並べている。
■ まともな集合知のケース
ケース1: 最初に示すグラフは、いま非常に人気の高いミステリー作家の手による直木賞受賞作に寄せられたレビューの分布である。
この作家の作品に対する書評は星5つと高い評価が多く、星4つ、星3つが徐々に減っていく逆三角形の分布をみせているという特徴を持つ。 星2つや星1つという評価は少ない。 映像化された作品も多く、高い人気を誇るベストセラー作家だけに、愛読者による真面目なレビューが多く投稿されていることの証であろう。
それだけにレビューコメント自体にも真面目な評価が加えられている。 グラフをみると、星の多寡に関わらず、コメントの評価が一様に分散している傾向が分かる。
ケース2およびケース3: 次は、グラフを2つ示そう。 1つは昨年ベストセラーとなったビジネス書ふうの小説、もう1つは昨年夏に映画が公開され、驚きのラストシーンが待っていたミステリ小説だ。
両者に共通して、先のグラフよりは全般的に有用度が下がっている。 また星の数が低いコメントのほうが支持されており、星の数が高いものは共感を得にくいという傾向があるのではないか、ということにも気付く。 実際、これらのケースについて星5つのコメントと星1つのコメントに関する有用度の平均を検定すると、有意差があることが示される。
この2作、いずれも内容とは違った文脈で話題が広がった作品であり、先の書評とはやや質が違っている。 コアなファンによる書評以上にライトユーザによる書評が多く含まれると、全体としてはこのような傾向を見せるようである。
■ どうも集合痴となってしまったケース
ケース4: 次のグラフは、ある文学賞の大賞受賞者がイケメン俳優だったというレアなケース。 完全に話題先行型で、この受賞作が出版されたときには、その内容に関してかなりの物議を醸した。
これまでに示したグラフと極端に異なることは一目瞭然である。 星1つや星2つといった低評価の支持率が極めて高く、逆に星4つ、星5つといった高評価は軒並み反感を買っている。 全体の評価結果に対する単純平均も低いが、有用度で重みを付けて評価の平均をとると、悲惨な結果になってしまうだろう。
ケース5: 次は、不思議なベストセラーのケース。
この作品も、先のグラフと比較的近いパターンとなっている。 本作は、初版は自費出版として製作され、その文章も日本語としていろいろ問題があるという欠陥を抱えていたにも関わらず、ベストセラーとなり映画化までされたという作品である。
グラフ全体の傾向はケース4と似ているが、明らかに違う点は、星5つで有用度がわりと高いものが散見される点である。 ところがこれらの星5つで有用度が比較的高いというレビューのほとんどが、書籍の内容に対するレビューではなく、レビューに関するメタレビュー、あるいは「本書はトイレットペーパーとして最適でした」というようなウケを狙ったレビューである。 その点には、十分に注意する必要があるだろう。
次のケース6では、それがさらにエスカレートしている。
ケース6: 本作は、1500を越えるレビューがありながら、その評価は星1つまたは星5つに集中しているという極端な作品である。
1000以上の評価が星1つとはいえ、ケース4、ケース5と異なり、星5つの評価も多くのユーザによる支持を得ている特徴を持つ。 しかしこの事実から、「内容がエキセントリックなので両極端に意見が割れているのかな」と安易に判断してはいけない。 このグラフは、ケース5で指摘したようなメタレビューが集中した結果である。 このケースでは、完全にネットワーカーの遊び場となってしまっており、いわゆる「縦読み」という悪ふざけが蔓延した状態になっている。
■ 集合痴には気を付けよう
本稿は、集合痴状態を否定するものではない。 原因もなく掲示板が炎上したり、本稿でいう集合痴の状態になったりということはあり得ず、集合痴状態になるからには何がしかの要因が存在する。 これまでの事例を振り返っても、炎上するケースというのは本人にも何らかの責任がある場合が多い。
本稿で指摘したいポイントは、CGMコンテンツを機械的に分析する際には気をつけましょうということである。 集合痴状態なった書評を分析しても、その書籍が述べたい内容に関する有用な知見は得られないだろう(逆に、炎上した原因を含め、その書籍をとりまく文化的事例に対する分析はできるかもしれない)。 CGMを頼る際には、集合知か集合痴かを見極める能力を鍛え、落とし穴に落ちないように気を付けたい。
amazon書評の正しい見分け方
SEM-LABO(2009.10.4)
amazonの書評はかなり胡散臭いものも多く、本を読むときに中々あてにならない場合が非常に多いです。今日はこのamazonの書評の見分け方を書き出してみます。
■ amazon書評の正しい見分け方
発売日即日、また2,3日中に投稿されているレビュー
セミナーやコンサルティングを開催している著者
過剰なうたい文句で絶賛している評価
発売日即日、また2,3日中に投稿されているレビュー
発売日即日に書評をする人なんているのか?と思われそうですが、amazonにはその類の方々が多数存在しています。それが実際に前もって献本されている場合もありますが、今回はあくまで平均値としての見分け方です。その為、意中の本の発売日と書評の日付の間隔が最低でも1週間以上経っているものに基準を置きましょう。
発売日は「登録状況」から判断可能です。
■ セミナーやコンサルティングを開催している著者
こういった仕事がらみやイベントごと行っている著者の周りには信者が存在しています。その為、本の内容には関わらずレビューを無造作に投稿されているもが多数存在しています。
しかしながらそれらもカスタマーレビューのグラフでなんとなく分かるようになっています。下記のように5つ星と1つ星などとかなり開きがある書評は操作されている場合が多いです。
しかしセミナーやコンサルティングを開催している著者は実際に良書を書いている場合が多いので、この当たりは書評の内容も重要視することで判断してください。
過剰なうたい文句で絶賛している評価
文章にリテラシーが感じられない書評、下品な書評、全てにおいて大絶賛な書評は数字の平均値を上げるだけのダミーが多いです。レビューは新しいもの順に表示されるので平均値を上げるにはもってこいなんですね。
ダミーがいるということは”そういう本”だということです。
■ amazon書評の正しい見分け方:まとめ
amazon側でも様々な対策はしているようですがこれを全てかいくぐるのは不可能でしょう。実際に僕が知っているamazon書評の操作方法もいくつかあります。例えば中小企業の代表が出された本は社員全員がアカウントを発行してamazonから購入して書評をしていたり、amazonから集中的に購入しまくり、瞬間風速的にランキングを操作する会社があったり。等など。
※amazonの書評は商品を購入したアカウントでのみ可能です。
なんだかんだでamazonはやはり便利なので、今日上げた対策3つを元に判断することで少なくとも”怪しい”本は買わずにすむことが多いです。僕も数冊”怪しい”本を購入してからこういった見分け方を学びました。
amazonの書評はかなり胡散臭いものも多く、本を読むときに中々あてにならない場合が非常に多いです。今日はこのamazonの書評の見分け方を書き出してみます。
■ amazon書評の正しい見分け方
発売日即日、また2,3日中に投稿されているレビュー
セミナーやコンサルティングを開催している著者
過剰なうたい文句で絶賛している評価
発売日即日、また2,3日中に投稿されているレビュー
発売日即日に書評をする人なんているのか?と思われそうですが、amazonにはその類の方々が多数存在しています。それが実際に前もって献本されている場合もありますが、今回はあくまで平均値としての見分け方です。その為、意中の本の発売日と書評の日付の間隔が最低でも1週間以上経っているものに基準を置きましょう。
発売日は「登録状況」から判断可能です。
■ セミナーやコンサルティングを開催している著者
こういった仕事がらみやイベントごと行っている著者の周りには信者が存在しています。その為、本の内容には関わらずレビューを無造作に投稿されているもが多数存在しています。
しかしながらそれらもカスタマーレビューのグラフでなんとなく分かるようになっています。下記のように5つ星と1つ星などとかなり開きがある書評は操作されている場合が多いです。
しかしセミナーやコンサルティングを開催している著者は実際に良書を書いている場合が多いので、この当たりは書評の内容も重要視することで判断してください。
過剰なうたい文句で絶賛している評価
文章にリテラシーが感じられない書評、下品な書評、全てにおいて大絶賛な書評は数字の平均値を上げるだけのダミーが多いです。レビューは新しいもの順に表示されるので平均値を上げるにはもってこいなんですね。
ダミーがいるということは”そういう本”だということです。
■ amazon書評の正しい見分け方:まとめ
amazon側でも様々な対策はしているようですがこれを全てかいくぐるのは不可能でしょう。実際に僕が知っているamazon書評の操作方法もいくつかあります。例えば中小企業の代表が出された本は社員全員がアカウントを発行してamazonから購入して書評をしていたり、amazonから集中的に購入しまくり、瞬間風速的にランキングを操作する会社があったり。等など。
※amazonの書評は商品を購入したアカウントでのみ可能です。
なんだかんだでamazonはやはり便利なので、今日上げた対策3つを元に判断することで少なくとも”怪しい”本は買わずにすむことが多いです。僕も数冊”怪しい”本を購入してからこういった見分け方を学びました。
2013年6月20日木曜日
なぜ「よくないね!」ボタンは必要ないのか
DNA(2013.6.19)
Facebookの「いいね!」ボタンやGoogleの「+1」ボタンなど、気軽に賛同を示せるものはたくさんありますが「よくないね!」的なボタンはあまり見かけません。これはいったいなぜなのでしょうか。実は「評価」というものができあがる仕組みに秘密があるのです。
まずはこちらのグラフを見てみましょう。これはYelp(グルメレビュー)、Amazon、Netflix(ストリーミング映画配信)、Reddit(掲示板)でのすべての評価を集めたもの。
ピンク色の部分が「否定的」ですが、いずれのサイトにおいても「ダメ(星1~2個)」と評価されているものが2割に達していません。(Amazonの「3」は肯定・否定があいまいなので集計なし、Redditは良否の2段階なので緑の中間値がありません)
このうち「星1個」はYelpで4%、Amazonで6.9%、Netflixで4.8%でした。
なぜ「ダメ」はこんなにも少ないのでしょうか。これは「ダメなものに注意を払っているヒマはない」からです。一般的には、価値のないもののためにわざわざ「よくないね!」とクリックしたりレビューを書いているヒマはなく、したがって「星1個」や「低評価のレビュー」というのは少なくなるのです。
また調査されたサンプルは食べ物屋さんや本、映画など、ある程度中身が予測できるものです。明らかに「ダメ」なものはみんな最初から避けて通るので、レビューの総数が少なくなり、当然「ダメ」という評価の数も減ります。
では逆にレビューが多い「ダメ」なもの、というのは存在するのでしょうか。こちらは縦軸にレビュー数、横軸に評価をとったグラフです。
これを見るとレビューの数が多いほど評価が3.5に近づいています。たくさんレビューされるものは、実際の中身はともかくとして極端な低評価にはならないのです。これはひろく普及するものにはそれなりに価値があるからで、そうでなければ評価がつくまえに消えてしまうのです。
また、グラフの形が中央からやや右寄りになっています。これもネットのレビューでは「肯定的」なものが多くなるのを示しています。
「いやそれはおかしい。現にTwitterやネットの掲示板では毎日のように『ユーザーの怒りの声』を見るぞ」と、実感とのズレを感じている人もいるかもしれません。しかしインターネット上にはTwitterやネットの掲示板を使っていない人のほうがはるかに多いので、全体を見るとこうなってしまうのです。
なぜ「よくないね!」ボタンがないのか、はこれらの結果から見えてきます。
そもそも低質なコンテンツには、低い評価をつけるよりも無視する人が多いこと。また、たくさん人目に触れるほど低い評価は目立たなくなること。この2点からわざわざサイト上のスペースを割いて「よくないね!」ボタンをつける意味がないから、というのが理由なのですね。
逆に「ネットではプラスの評価に偏る」「ダメなものは評価がつかない」「いいものは評価そのものの数が多い」ということを頭に入れておくと、様々なレビューを読むときに役に立ちます。
特に悪評の読み方は変わってきます。無視するのが普通なのに、わざわざ低い評価をつける。よっぽど強い意志があるか、あるいはムリがあるのかのどちらかです。
実際悪いレビューのほとんどは「自分には合っていない」という非常に主観的なものか、さもなければ詭弁や「いちゃもん」、あるいは故意に貶めようとするイタズラ目的のもので、価値のあるもの・客観的なものはあまり多くありません。
ズバッと斬り捨てる「カラクチ」なレビューは、ネットでは盛り上がるウケのいいコンテンツです。しかし自分の力量や見識がバレてしまう諸刃の剣でもあります。評価しているつもりで評価されていることをいつも忘れたくないものですね。
ソース:Why you can’t dislike something on Facebook
Facebookの「いいね!」ボタンやGoogleの「+1」ボタンなど、気軽に賛同を示せるものはたくさんありますが「よくないね!」的なボタンはあまり見かけません。これはいったいなぜなのでしょうか。実は「評価」というものができあがる仕組みに秘密があるのです。
まずはこちらのグラフを見てみましょう。これはYelp(グルメレビュー)、Amazon、Netflix(ストリーミング映画配信)、Reddit(掲示板)でのすべての評価を集めたもの。
ピンク色の部分が「否定的」ですが、いずれのサイトにおいても「ダメ(星1~2個)」と評価されているものが2割に達していません。(Amazonの「3」は肯定・否定があいまいなので集計なし、Redditは良否の2段階なので緑の中間値がありません)
このうち「星1個」はYelpで4%、Amazonで6.9%、Netflixで4.8%でした。
なぜ「ダメ」はこんなにも少ないのでしょうか。これは「ダメなものに注意を払っているヒマはない」からです。一般的には、価値のないもののためにわざわざ「よくないね!」とクリックしたりレビューを書いているヒマはなく、したがって「星1個」や「低評価のレビュー」というのは少なくなるのです。
また調査されたサンプルは食べ物屋さんや本、映画など、ある程度中身が予測できるものです。明らかに「ダメ」なものはみんな最初から避けて通るので、レビューの総数が少なくなり、当然「ダメ」という評価の数も減ります。
では逆にレビューが多い「ダメ」なもの、というのは存在するのでしょうか。こちらは縦軸にレビュー数、横軸に評価をとったグラフです。
これを見るとレビューの数が多いほど評価が3.5に近づいています。たくさんレビューされるものは、実際の中身はともかくとして極端な低評価にはならないのです。これはひろく普及するものにはそれなりに価値があるからで、そうでなければ評価がつくまえに消えてしまうのです。
また、グラフの形が中央からやや右寄りになっています。これもネットのレビューでは「肯定的」なものが多くなるのを示しています。
「いやそれはおかしい。現にTwitterやネットの掲示板では毎日のように『ユーザーの怒りの声』を見るぞ」と、実感とのズレを感じている人もいるかもしれません。しかしインターネット上にはTwitterやネットの掲示板を使っていない人のほうがはるかに多いので、全体を見るとこうなってしまうのです。
なぜ「よくないね!」ボタンがないのか、はこれらの結果から見えてきます。
そもそも低質なコンテンツには、低い評価をつけるよりも無視する人が多いこと。また、たくさん人目に触れるほど低い評価は目立たなくなること。この2点からわざわざサイト上のスペースを割いて「よくないね!」ボタンをつける意味がないから、というのが理由なのですね。
逆に「ネットではプラスの評価に偏る」「ダメなものは評価がつかない」「いいものは評価そのものの数が多い」ということを頭に入れておくと、様々なレビューを読むときに役に立ちます。
特に悪評の読み方は変わってきます。無視するのが普通なのに、わざわざ低い評価をつける。よっぽど強い意志があるか、あるいはムリがあるのかのどちらかです。
実際悪いレビューのほとんどは「自分には合っていない」という非常に主観的なものか、さもなければ詭弁や「いちゃもん」、あるいは故意に貶めようとするイタズラ目的のもので、価値のあるもの・客観的なものはあまり多くありません。
ズバッと斬り捨てる「カラクチ」なレビューは、ネットでは盛り上がるウケのいいコンテンツです。しかし自分の力量や見識がバレてしまう諸刃の剣でもあります。評価しているつもりで評価されていることをいつも忘れたくないものですね。
ソース:Why you can’t dislike something on Facebook
2013年5月21日火曜日
米Yahoo!のメイヤーCEO、3月に買収したSummly採用の新iOSアプリを発表
ITmedia(2013.4.23)
米Yahoo!のマリッサ・メイヤーCEOは4月22日(現地時間)、iOS版公式アプリ「Yahoo!」のバージョン3.0をリリースしたと発表した。3月に買収したニュース要約アプリSummlyの技術を採用した新しいアプリとしている。
Summlyは英国在住の17歳の起業家、ニック・ダロイシオ氏が開発した独自要約アルゴリズムによるニュース要約ツール。2012年11月にiOS版がリリースされた。
メイヤー氏は「Summlyを買収してからまだ1カ月もたっていないが、この革新的な技術をアプリで紹介できてわくわくする」と語った。
米Yahoo!は昨年7月に社長件CEOに就任したメイヤー氏の下、モバイルアプリの提供やトップページの刷新などでサービスの改善を進めている。16日の業績発表でメイヤー氏は「われわれはユーザーに美しいデザインの、直感的な体験を提供しはじめている。こうした製品の改善が、Yahoo!の長期的な成長を促進すると確信している」と語った。
米Yahoo!のマリッサ・メイヤーCEOは4月22日(現地時間)、iOS版公式アプリ「Yahoo!」のバージョン3.0をリリースしたと発表した。3月に買収したニュース要約アプリSummlyの技術を採用した新しいアプリとしている。
Summlyは英国在住の17歳の起業家、ニック・ダロイシオ氏が開発した独自要約アルゴリズムによるニュース要約ツール。2012年11月にiOS版がリリースされた。
メイヤー氏は「Summlyを買収してからまだ1カ月もたっていないが、この革新的な技術をアプリで紹介できてわくわくする」と語った。
米Yahoo!は昨年7月に社長件CEOに就任したメイヤー氏の下、モバイルアプリの提供やトップページの刷新などでサービスの改善を進めている。16日の業績発表でメイヤー氏は「われわれはユーザーに美しいデザインの、直感的な体験を提供しはじめている。こうした製品の改善が、Yahoo!の長期的な成長を促進すると確信している」と語った。
「食べログ削除して」札幌の飲食店経営者が提訴
Sankei(2013.5.8)
飲食店の利用者が感想を投稿するサイト「食べログ」に事実と違う内容を投稿されたとして、札幌市の飲食店経営の男性が8日、運営会社のカカクコム(東京)に店舗情報の削除と220万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
訴状によると、男性は北海道北広島市に店舗を持ち、取引業者の勧めで昨年2月ごろ、食べログに情報を掲載。昨年8月と今年3月に「料理が出てくるのが遅い」「おいしくない」などと投稿され、直後に客が激減したとしている。
原告側弁護士は「投稿の削除を求めたが、応じてもらえなかった。真偽を問わず投稿させるのは営業権の侵害だ」と話している。
カカクコムは「事実を確認していない。訴状を見て弁護士と協議し、適切に対応する」としている。
飲食店の利用者が感想を投稿するサイト「食べログ」に事実と違う内容を投稿されたとして、札幌市の飲食店経営の男性が8日、運営会社のカカクコム(東京)に店舗情報の削除と220万円の損害賠償を求め、札幌地裁に提訴した。
訴状によると、男性は北海道北広島市に店舗を持ち、取引業者の勧めで昨年2月ごろ、食べログに情報を掲載。昨年8月と今年3月に「料理が出てくるのが遅い」「おいしくない」などと投稿され、直後に客が激減したとしている。
原告側弁護士は「投稿の削除を求めたが、応じてもらえなかった。真偽を問わず投稿させるのは営業権の侵害だ」と話している。
カカクコムは「事実を確認していない。訴状を見て弁護士と協議し、適切に対応する」としている。
2013年4月9日火曜日
ソフトウェアにおける作るモノの世界と使うコトの世界
(株)SRA先端技術研究所 所長の中小路さんのソフトウェア品質シンポジウム2011での講演をアギレルゴコンサルティング株式会社の森崎さんがtweetしたモノ
http://togetter.com/li/185301
2013年2月27日水曜日
時速80キロ・車間4m…トラック隊列自動走行
YOMIURI ONLINE(2013.2.25)
運転手が操作しなくてもトラックを自動で運転する技術を日本自動車研究所(茨城県つくば市)などが開発し、25日に走行実験が報道陣に公開された。
大型トラックが縦一列になって、同市内のテストコース(1周約3・2キロ・メートル)を自動走行した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるプロジェクトで、大学と自動車メーカー、研究機関が参加。トラックはレーザー光を用いたセンサーとカメラで、車線や前方の車、障害物を捉えることなどが可能で、これらの情報を基にコンピューターがハンドル操作や加減速を行う。後続車は先頭車から、ブレーキをかけた情報などを受信することで衝突回避できる。
実験では、人間による操作では不可能な時速80キロ・メートル、車間距離4メートルを維持した状態でトラック4台を自動走行させた。監視役の人が乗ったが、操作はしなかった。この状態で走ると、前のトラックが風よけになって空気抵抗が減り、燃費節約にも役立つという。
運転手が操作しなくてもトラックを自動で運転する技術を日本自動車研究所(茨城県つくば市)などが開発し、25日に走行実験が報道陣に公開された。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるプロジェクトで、大学と自動車メーカー、研究機関が参加。トラックはレーザー光を用いたセンサーとカメラで、車線や前方の車、障害物を捉えることなどが可能で、これらの情報を基にコンピューターがハンドル操作や加減速を行う。後続車は先頭車から、ブレーキをかけた情報などを受信することで衝突回避できる。
実験では、人間による操作では不可能な時速80キロ・メートル、車間距離4メートルを維持した状態でトラック4台を自動走行させた。監視役の人が乗ったが、操作はしなかった。この状態で走ると、前のトラックが風よけになって空気抵抗が減り、燃費節約にも役立つという。
2013年2月26日火曜日
「自分は優秀」錯覚の仕組み解明=抑うつ症状の診断に期待-放医研など
時事ドットコム(2013.2.26)
心理学では、人には「自分は平均より優れている」という思い込み(優越の錯覚)があることが知られているが、この錯覚が脳内の異なる部位の連携の強弱や、神経伝達物質に影響されることが25日までに、放射線医学総合研究所などの研究で分かった。抑うつ状態ではこの錯覚が弱いことも知られており、成果は抑うつ症状の診断などへの応用が期待できるという。論文は近く、米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
放医研分子イメージング研究センターの山田真希子主任研究員らは、男性被験者24人に対し、「正直」「怒りっぽい」「温厚」などの単語を示し、自分が平均と比べてどうかを評価させる実験を実施。多くの人が平均より2割程度「優れている」と自己評価していた。
その上で、機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)と陽電子放射断層撮影(PET)を使い、脳内の局部的な働きと神経伝達物質が「錯覚」に与える影響を調べた。
その結果、脳の深部(大脳基底核)にある線条体という部位で、神経伝達物質のドーパミンが多いと、線条体と、認知をつかさどる前頭葉の「前部帯状回」と呼ばれる部位の連携が低下。両部位の連携が弱いほど、「錯覚」の程度が強いことが分かった。
2013年2月20日水曜日
プロキシ環境下でNTPで時刻合わせ
プロキシ環境下ではNTPで時刻合わせができない.
そのため,NTPが使えない環境で、時刻合わせをしたいを参考に時刻を合わせる.
1.wget で htp-0.9.3.tar.gz をダウンロード
export http_proxy="http://プロキシのホスト:ポート番号/"
wget http://www.clevervest.com/htp/archive/perl/htp-0.9.3.tar.gz
2.htpdate-light コマンドを以下のように実行して強制的に時刻合わせ
htpdate-light -d -s プロキシのホスト -p ポート番号 nict.go.jp
# しかし,私の環境では,61行目に不明な値があるとエラーがでるため
htpdate-light の61行目をコメントアウト
3.date コマンドで時刻を表示し,合っているか確認
そのため,NTPが使えない環境で、時刻合わせをしたいを参考に時刻を合わせる.
1.wget で htp-0.9.3.tar.gz をダウンロード
export http_proxy="http://プロキシのホスト:ポート番号/"
wget http://www.clevervest.com/htp/archive/perl/htp-0.9.3.tar.gz
2.htpdate-light コマンドを以下のように実行して強制的に時刻合わせ
htpdate-light -d -s プロキシのホスト -p ポート番号 nict.go.jp
# しかし,私の環境では,61行目に不明な値があるとエラーがでるため
htpdate-light の61行目をコメントアウト
3.date コマンドで時刻を表示し,合っているか確認
2013年2月19日火曜日
OS X Lionでdvipdfmxを使うための設定
OS X Lionにアップデートして dvipdfmx を実行すると以下のエラーが出ます.
Snow LeopardでのMacPortsによると,”MacPortsでインストールされるバイナリのいくつかはユニバーサルバイナリで、それらのコマンドが別のライブラリを使用する際に、そのライブラリもユニバーサルライブラリである必要があるらしい。”というのが原因のようです.
そのため,上記ブログを参考にMacPortsでユニバーサルライブラリを以下のようにインストールします.
dyld: Library not loaded: /opt/local/lib/libjpeg.62.dylib Referenced from: /usr/local/bin/pdf2swf Reason: no suitable image found. Did find: /opt/local/lib/libjpeg.62.dylib: mach-o, but wrong architecture Trace/BPT trap
Snow LeopardでのMacPortsによると,”MacPortsでインストールされるバイナリのいくつかはユニバーサルバイナリで、それらのコマンドが別のライブラリを使用する際に、そのライブラリもユニバーサルライブラリである必要があるらしい。”というのが原因のようです.
そのため,上記ブログを参考にMacPortsでユニバーサルライブラリを以下のようにインストールします.
sudo port install freetype +universal念のため以下のコマンドも実行
sudo port install jpeg +universal
プロキシ環境下でのMacPortsを使うための設定
プロキシ環境下でのMacPortsを使うためには以下のように設定する必要があります.
1.sudo vi /opt/local/etc/macports/sources.conf
・rsync://で始まる行を#でコメントアウト
・その下の行に以下の行を追加
file:///opt/local/var/macports/sources/dports/ [default]
2.sudo vi /opt/local/etc/macports/macports.conf
・binpathで始まる行にsvnのディレクトリが含まれていることを確認
※コマンドラインから which svn を実行するとパスを見ることができます
・#(コメント)を外す
3.svnがプロキシを超えられるように設定
・一般にはホームディレクトリの .profile に
export http_proxy=http://proxy server address:port number
と記述するようですが,私の環境では上手く行かなかったので
~/.subversion/servers のglobalセッションを以下のように記述
[global]
http-proxy-host = porxyホスト名
http-proxy-port = proxyポート番号
http-proxy-port = proxyポート番号
4.svnでdportsを取得
cd /opt/local/var/macports/sources
sudo svn co http://svn.macports.org/repository/macports/trunk/dports
5.MacPortsの更新
cd /opt/local/var/macports/sources/dports
sudo portindex
sudo port -f install macports
5.MacPortsの更新
cd /opt/local/var/macports/sources/dports
sudo portindex
sudo port -f install macports
6.Port Treeの更新
cd /opt/local/var/macports/sources/dports
cd /opt/local/var/macports/sources/dports
sudo svn update
sudo portindex
インストール済みのパッケージを更新する場合
sudo port upgrade installed
7.パッケージの検索とインストール
sudo port search gnuplot
sudo port install gnuplot
sudo portindex
インストール済みのパッケージを更新する場合
sudo port upgrade installed
7.パッケージの検索とインストール
sudo port search gnuplot
sudo port install gnuplot
8.fetchがプロキシを超えられるように設定
sudo vi /opt/local/etc/macports/macports.conf で移動し,以下のように記述
proxy_http proxy server address:port number
proxy_https proxy server address:port number
proxy_ftp proxy server address:port number
proxy_rsync proxy server address:port number
■ 参考サイト
・rsyncが使えない環境でのMacPortsの設定
・rsyncが使えない環境でのMacPortsの設定
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